« 【芝居】「トーキョー・スラム・エンジェルス」Théâtre des Annales(テアトル・ド・アナール) | トップページ | 【芝居】「3 youths on the sand」無隣館 »

2014.11.21

【芝居】「そのときのはなし」おちないリンゴ

2014.11.16 14:00 [CoRich]

劇作家女子会の4人の作家の作品を上演。16日まで楽園。130分。

妹が連れてきた恋人に兄は妹の良くないところばかり伝えてしまう。互いの真似をしているうち「アップルパイな人々」 作/黒川陽子
会社勤めの傍ら小説を書いている女。恋人とは8年つきあって同居するようになっているが、経済的にも男の雰囲気も結婚するという感じではない。大学の女友達はあんなに奔放だったのにちゃっかり医者と結婚しようとしているし、弁護士を目指していて憧れの同僚もこっちは向いてくれないし、小説だってものになってない。「女2」 作/坂本鈴
エロゲのシナリオライターの女。結婚していて夫は優しくて何も不満が起こらないのが不安で仕方がない。そんな女の描いたエロゲシナリオは館の主人が毎年若い女を花嫁候補として呼びながらみな殺してしまうというものだったが、愛情を感じさせるエンディングを求められて困惑する「POSHLOST」 作/モスクワカヌ
食器を荷造りすること夫婦。夫の香水に気付き訊ねるとエタニティだという。それはやぎさん郵便だね、と妻は云う。「やぎさんと永遠」 作/オノマリコ

劇作家女子会、と名乗る四人の作家。演出はリーダーだという坂本鈴一人で行っています。恋人の紹介、未婚の状態、結婚して不安、離婚間近という時間軸を想定した構成というわけではないと思いますが、結果的にそういう並びになっています。うっすらつながる同じ女性の話、というわけでもありませんが、一つの仮想的な時間軸に沿って並べる、というだけでもオムニバスの効果はあります。

「アップルパイ〜」は恋人を兄に紹介する妹のミニマムな三人の会話。最初はなかばふざけて口調を真似しているうちに、人物が入れ替わる、というワンアイディアで15分ほど。 それにとどまらず、一人の人物を3人の役者が同時に演じることで内面での対話のようにみえたり、めまぐるしく入れ替わる面白さは最初の着想に満足せずに、その方向を突き詰めてできることを目一杯に詰め込んだ一転突破が気持ちよく。

「女2」は結婚してもらえない、または結婚できる状態にない女の独り言というか夢想を並べた物語、となればワリとワタシの好物な芝居。正直にいえば、この繊細さで押すならば、オムニバスという公演形態の中では少々長すぎる印象が勝ります。行きつ戻りつ、逡巡のせいか、登場人物が多いかわからないけれど、もうすこし絞り込んだものにするか、この一本で勝負するか。 結婚できないのは私はわるくないし、半分趣味のように書いている小説でだれかに誉められもしたいし、誰にでもできるような仕事で雇ってもらえてるのは幸運だけど辞められるなら辞めてもっと何かを認めて貰いたい気持ち。それは仕事かもしれないし、小説かもしれないし、あるいは彼に求婚されてしかも幸せが約束されるということかもしれない。わかりやすくいえば承認欲求の固まり、ということなんだけれど、まあ、この歳のになったアタシだってそう変わるわけでもなく、そういう意味では恥ずかしながら身に沁みてしまったりもするのです。

「POSHLOST」は、もう少しめんどくさい女の話。エロゲが題材だから、ではないと思いますが、サブカル臭全開な作風はちょっと面白い。 誰から見ても幸せな結婚生活のはずなのに、それが続くわけはないと思う女。それは有り余る幸せに自己評価が低いというわけではなくて、ドラマチックな落差を覚悟しちゃうような、期待しちゃうような気持ち、かと思いました。 心の中にもう一人誰かが居る、という一点を共有することで急速にわかりあえる終幕はちょっといい。 正直にいえば、現実の夫婦の話、シナリオとして書いたRPGの話に加えてオープニングタイトル的なものまで詰め込んだ結果、少々長くなりすぎだったり、二重の構造の両方の物語を対等のバランスで描くほどには十分な効果が感じられないのは勿体ない感じ。

「やぎさん〜」はごく短い一本。永遠、という名前の香水を物語の発端に、やぎさん郵便のエンドレス感との類似を感じるといい、でもそれには始まりも終わりもあるのだ、ということをプロットしていきます。二人は食器を荷造りしているけれど、明確にこの二人がどうなっていくのかを台詞で描いたりしないのが巧くて、永遠はありはしない、永遠があるかないかではなくて、そう見えるか見えないか、という台詞など、落ち着いた二人の端々に垣間見える、別れの雰囲気からああ、これは離婚する二人なのだよなぁとおもう語りすぎない魅力。

|

« 【芝居】「トーキョー・スラム・エンジェルス」Théâtre des Annales(テアトル・ド・アナール) | トップページ | 【芝居】「3 youths on the sand」無隣館 »

演劇・芝居」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【芝居】「そのときのはなし」おちないリンゴ:

« 【芝居】「トーキョー・スラム・エンジェルス」Théâtre des Annales(テアトル・ド・アナール) | トップページ | 【芝居】「3 youths on the sand」無隣館 »