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2014.11.21

【芝居】「気がつけば、みんな、尾崎」ローカルトークス

2014.11.15 15:00 [CoRich]

6日までシアターミラクル。115分。

40歳になった男。会社では追い出し部屋に飛ばされ研修と称した嫌がらせを受け、セックスレスの妻とは別居状態で離婚を切り出されている。男には尾崎豊と名乗る17歳の自分の姿が見えている。

40歳にもなって何者にもなれなかった男の鬱々とした気持ちと、ままならない妻への想い。それを後押しするのは、心酔していた尾崎豊だけれど、それが実体化して見えるというシンプルな枠組みに、デフォルメした人々でこれでもかと笑いを詰め込んでいて、気楽な喜劇にみせつつ、中年男の悲哀を描き出します。

まあ、ワタシから見ればあれだけ美しい妻を娶ったのだから人生勝ったも同然だろうと思ったりもするけれど、そういうことではなくて、子供に恵まれないことによる夫婦のぎくしゃく、まして追い出し部屋に放り込まれての先の見えなさなど、なやむことはてんこ盛りなのだなと思うのです。

追い出し部屋の他の面々は元営業トップのひねくれた性格だったり、元柔道部の体力バカのAV好き、諦めて社畜で居続けるなど相当な顔ぶれ。それに比べて主人公の男はあまりにまともで、何か隠れた理由があってここに入れられたのかそれとも偶然の理不尽でこうなったのかもやもやしたまま見てしまったせいで、ちょっと落ち着かない感じ。 あるいはセンター長の理不尽な嫌がらせに対しても、主人公が不満をあまり持ってないように思えてセンター長を殴ってしまうのも幻に見えている尾崎をどうにかしようとして、というのはよく考えると違和感を感じなくはないのですが、まあ、そうか、妻への深すぎる愛情の前には些細なこと、ということなのかもしれません。そういう些細なところが気になったりはするのだけれど、馬鹿馬鹿しくパワフルで、コミカルなのに物語の味わいが魅力なのです。

馬鹿馬鹿しいおかしさは、タイトルにもある「全員尾崎」のシーン。登場人物全員がそれぞれ間違った尾崎像になって現れるというシュールな図になるのもおかしく、強い印象をトラウマのように残します。

主役の40男を演じた服部ひろとしは深みのある役を好演。行き止まり感あれど、心の奥底には燃え続けていた気持ちがある男の魅力。妻を演じた秋澤弥里、若くて美人なのにテンションという魅力の役者でしたが、年齢を重ねても魅力がそのままに深みをプラス。オザキだか若いころの男だかを演じた武藤心平はかっこつけてもどこか抜けた感じが、完璧ではない人間の等身大な感じを描きます。研修センター長を演じた板垣雄亮はたんなるイヤミかと思えば、終盤でみせるのは彼もまた会社のヒエラルキーの中での敗者である、というコントラストを丁寧に。バカップル二人、友松栄と加藤美佐江は、見た目の出オチかとおもえばさにあらず、台詞無しの所作だけでどかんと笑いをとるのです。とりわけ、加藤美佐江は少年・オザキも見事。

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