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2014.11.09

【芝居】「あの部屋が燃えろ」MCR

2014.11.3 19:30 [CoRich]

時々ほんの少し先の未来が見える男には恋人が居るが、どうしてもセックスをすることができない。 部屋の隣にはシナリオライターだけれど仕事が巧くいかない友達が住んでいるが、その彼女は自分の 元カノだ。 二人に憬れる友人、シンガーソングライターを名乗りながらまだ曲を作ってない女、ヤクザ、大家の娘、なぜか三人の漫画家がよく出入りしている。

少し先が見える男と、自分の行く先が見えないまま悶々とする男を軸に物語が進みます。特に後者はどこか作家の姿が重なるような雰囲気の造型。元々劇団立ち上げたりはしたけれど、今となってはクリエーターの道を進んでいるのは自分だけ、友人達は応援してくれるけれど仕事は悉く巧くいかない。そういう意味では未来が見える男だってセックスができないし、その彼女だってセフレにすらなれてないし、自称シンガーソングライターは曲が出来たことがないし、人なつっこいヤクザだって何かを成し遂げてる感じじゃない。大家の娘に至ってはこじらせてAV好きになってる処女、とそれぞれに達成してないばらばらな何かを抱えたままこの部屋に集っているのです。それは若い頃の特権という感じでもあります。

その中でただひとり、ガンで死ぬことになるシナリオライターの彼女だけが特異点のように異質な存在。もう先がないのだという諦観を根底に持ちつつ、今のここがとても良くて、いまは鬱々としているシナリオライターの彼氏の成功の先に自分自身が一緒に居られないことを自覚してこの風景を見ているのです。この部屋の主の男が葬式の後に見たのは、彼女が自分の彼女で居たときの風景か。

小劇場「B1」は、「楽園」あるいはかつてのジアンジアンと同じように、舞台の二辺に面して客席が設定されるという空間です。アタシが座ったのは上手側端の席、玄関があるからそこで見る近さが嬉しいかなと思って座ったのだけれど、正直に云えばこれは失敗でした。ほとんどの芝居が下手側の客席(つまり音響・照明卓のある側)に向かって行われていて、表情や細かい芝居が見えないばかりか、惑星直列よろしく役者がアタシの視線上に一直線に並ぶシーンも多くて、不満がたまります。作家がtwitterで上げている舞台写真 の方向からならいい舞台だということが今だって蘇るのだけれど、自分の見ていた視界からは何も残っていないのです。台所での芝居が皆無ということは死んでいる空間になってしまっていると思うのです。せめてここで芝居してくれたらなぁと思うのです。

役者たちは本当に魅力的。部屋の主を演じた澤唯は滅多にない主役。隣の男を演じた小野ゆたかは時折キチガイのようだし、いらいらもしてる、始終テンションの高い役をキッチリなちから。二人に憬れる友人を演じた堀靖明は二人の前でだけお洒落さんという造型が可愛らしい。大家の娘で処女を拗らせた女を演じた伊達香苗のキチガイっぷりな台詞をにこやかに。ガンで死ぬ女を演じた後藤飛鳥もまた、可愛らしい。

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