【芝居】「アリはフリスクを食べない」青年団若手自主企画(伊藤企画)
2014.10.5 14:00 [CoRIch]
青年団の役者・伊藤毅の初戯曲は笑いを生みつつも、解決出来ない問題を静かに語る110分。5日まで春風舎。
工場に通いながら法律家の道を目指していた弟は、両親を亡くし障がい者をである兄を引き取って同居し始めた。結果法律家の道は諦めるざるをえなくなっている。恋人と結婚の話がでているが、兄との同居について恋人の両親が反対していて婚約に至らない。近所の幼なじみの女は兄が一人で居るときは面倒を見に来てくれている。兄は弟がつとめる工場で働くことになり、工場の若い社長もこの兄弟のことは気にかけている。同じアパートに住む男は時々勝手に上がり込んで、兄に薬を飲むのを止めさせて、弟と恋人の内緒話を聴いてみるようにすすめている。 兄の誕生日を迎え、家で人を集めてパーティをすることになるが、弟を施設に預けようとしていることが明るみになってしまう。
序盤の二人の会話は兄と近所の女。恋人のように見えて実はそうじゃない静かな始まり。身体を触ろうとすると女がやんわり断るリアリティ。女は実は弟のことが好きで、恋人が居るのはわかっているから告白は出来ない。終盤に至り、弟への告白を諦めて兄と結婚するか、と半分冗談めかして話す女の気持ちの動きが本当に切ないのです。
誰も悪くない物語を丁寧に描くというのはアタシの友人の言ですが、まったくそのとおりなのです。それぞれの正義をそれぞれに優先して、ずれてしまうことの哀しさ。障がい者を可哀想だと思うのは偽善かもしれないし、結婚を考えた時に兄を邪魔だと思うことだって正直な気持ち。両親を説得できないけれど互いに諦めきれないこと、じゃあ、施設に預けるしか無いということだって正直なことなののです。恋人は近所の女がよく家を訪れることを快く思わないし、親分肌の社長だって、兄の給料は正直安くしてるけれど、心配してるのも偽らざる気持ちだと思うのです。
誕生日、サプライズのケーキのぐだぐたな感じが楽しい。その気持ちの高揚感から言葉が巧くない男が実は介護施設の職員だという落差も巧いと思うのです。
近所の女を演じた舘そらみの微妙な笑顔が切ない。恋人を演じた長野海は結果的にヒールな役回りだけれど説得力。兄を演じた石松太一はわりと出ずっぱりのままちゃんとリアルな感じに居続けます。職員を演じた朝比奈竜生は何を云ってるか判らない登場が凄い。板挟みになる弟を演じた海老根理は主役をきっちり。
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