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2014.10.12

【芝居】「勇気出してよ」小松台東

2014.10.6 15:00 [CoRich]

地方の中年の恋の物語はほろ苦くて、しかし力強い100分。平日のみの公演は正直厳しかったけれど、 なんとか観ることができました。8日までOFF OFFシアター。

宮崎の喫茶店、元スナックのママが営む喫茶店。スナックの方は後輩に託している。元ママは妻子ある男と恋仲にあったが、5年前に亡くなっている。その息子が会社の跡を継いでいて、喫茶店にも顔を出しているが、妻はその関係を許してない。スナックを託した後輩も同じような不倫の泥沼に足を踏み入れているのを諭すが聞き入れない。喫茶店常連の中学からの同級生のなじみ客は何度もママに告白してはフラれている。
店を訪れる男。かつてスナックの時に店を一度訪れた男が、住んでいた川崎を離れ地元・宮崎に戻ってきたが、ママは店を畳んで川崎に帰ろうと思っている。店が開店してから2年、周年のパーティを開こう、ということになる。

ママを中心に、客たちが「星状につながる」の関係。常連同士はまあ顔なじみではあるけれど、直接繋がってる感じとは違う雰囲気で、店主がいるから皆が集うといういい店の雰囲気が味わいがあって、物語を土台を固めます。

端的に云えば、 もう若いとは云えない男女たちの淡かったり、ままならない恋の物語。こういうことから離れて久しいあたしだけれど(泣)、それでもああ、そう、ままならない、ああ、好意を寄せる、というイチイチに納得感があるのです。地元である宮崎に戻ってきた男は店主が居るからこそ戻りたいと思えたわけだし、店主をずっと一途に想い続けている男もまた、何度フラれても諦めきれない気持ち。それなのに当の店主は不倫相手だった男に想いを残していて、でもその男はこの世に居なくて。さらにその外側に、同じ事を繰り返す後輩の女、また想いが届かない若い男、という無限に続く恋のままならなさ、といった風情で、それぞれがその想いに費やした時間軸方向の奥行きが実にいい味になっているのです。

格好悪い中年男女の恋物語というと、たとえばラッパ屋 (1, 2, ) だったりジテキン(1)が頭に浮かびますが、それよりは下の世代の作家は、これらのバブルな浮かれ具合を経験した人々の話よりまもう少し、地味といえば地味な、しかしどこか身につまされるような今のリアリティがあります。もしかしたら、 こういう物語、基本的には男女ならあり得る話しなのだけれど、人の少ない濃いコミュニティという意味で東京よりは地方でこそリアリティだと感じるのはアタシが少しの間地方に居たからかもしれないし、 あるいは渡辺源四郎商店の「A面・B面」( 1, 2) の風味を感じたからかもしれません。

パーティの準備のために常連の男たちがぎこちなく会話を始める終幕。店主ははきっと川崎に向かうのでしょう。彼女が居なくなった後の人々の関係の変化を予兆するようなこのシーンの男たちの心情は切ないけれど、時間がさらに前に進んでいく、という幕切れは巧いなぁと思うのです。 元ママである喫茶店店主を演じた 森谷ふみ、若い役者だと思っていたけれど、年齢を重ねた雰囲気のリアリティの凄さを感じてググってみれば、それなりに実年齢に近い役だと知って、となればその可愛らしさに驚くアタシです。冒頭の殺虫剤に「ふみきらー」とラベルが貼ってあるのもちょっと可愛らしい。瓜生和成のなかなか想いを言い出せずじまいの人見知り感はさすがの安定、想い続ける男を演じた松本哲也はがさつっぽさをみせつつも、フラれても挑戦し続けるのがかっこいい。

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