【芝居】「御ゑん祭」バンダ・ラ・コンチャン
2014.10.12 13:00 [CoRich]
近藤芳正が若い劇団や歌い手、美術家とコラボする130分。 13日まで青山円形劇場、そのあと水戸。
男はそういえばちゃんとサヨナラを云ったことがないと思い出す。団地に引っ越すときに持っていけない犬を山に捨てに行くように云われたのに防空壕跡にたてこもった時も、ストリップ小屋にバイトした夏に楽屋で再会した同級生の女の子にも、あるいはあの別れの日にも「お月様で逢いましょう」(青☆組、作・演出 吉田小夏) まだ童貞の後輩を連れて森にやってきた会社の先輩。取り締まりが厳しくなり売春婦たちは森に隠れているのだという。果たして現れた女たちは口にマスクをした口裂け女で、先輩は彼女たちの餌食となり生首になってしまう。後輩は一人立ち向かう。「森」(ナカゴー、作・演出 鎌田順也) 詰め襟の中学生男子と同級生の女子、夕暮れの教室。幼なじみに別の同級生への告白の練習につきあって貰っている。その同級生女子は明日引っ越す。学校の上にはUFOが出現している「甘じょっぱいのぱい」(ぬいぐるみハンター、作・演出 池上三太) 夫は妻を六本木の素敵なレストランに誘う。が、もう夕食は食べているし、その店はバブルの時代にとうに潰れていて、大きくなった娘だっているのだ「お父さんは若年性健忘症」(Mrs.fictions、作・演出 中嶋康太) 近藤芳正の楽屋見舞いに訪れた二人の男、もう歳を取って人の名前や台詞を忘れちゃうどころか、どうして舞台に立っているかだって。「オールド」
上演順は秘密にしろというのが当日パンフやらCoRichやらでしつこく謳われています。どこに拘りがあるのかせっかくオムニバス形式の流れの面白さのようなものがあるとも思うけれど、それは忘れろという指示と理解しました。各々がどうだったかだけを当パン順に書くことにします。
青組は、さようならを言えなかったという男の走馬燈。団地という響きが憧れを感じさせた時代、となれば吉田小夏の得意な方向。短編オムニバスという形では笑いを志向しない方法は埋もれがちだけれどなんとか流れには乗っていると思います。この作家の笑いが多い軽い語り口のものも結構好きなんだけれど。犬を匿い防空壕跡に立てこもって出てこない、というのは遊◎機械/全自動シアターでいくつか出てくる胎内に立てこもって出てこない子供の話にどこか重なって見えた気がしたのは、青山円形劇場繋がりで、というのは考えすぎか。久々に再会した同級生の女の子(大西玲子)がストリップ嬢になっていた、という男の気まずさと、まだ開き直るには若すぎる女のぎこちない会話のシーンが好きです。短編の中ではどうしても犬の部分の比重が大きくなってこのシーンが短めなのは残念といえば残念。
ナカゴーは、物語を語ると云うよりも、役者の激しい動きだったり延々と続く繰り返しを見せるというこの劇団の最近の傾向のままに新作を。娼婦がゾンビ化した口裂け女と童貞男の死闘という一点突破という設定の面白さはあるのに、短編ゆえに結果的に物語としての動きはほとんどなく体力という点では敬服しますが、物語としてどこを見たいか戸惑うのです。
ただ、Mrs.fictionsの演目で出演を果たせなかった二人の役者(後述)を端役とはいえ組み込んだのは男気か、そこは応援したい。
ぬいはんは、夕暮れの教室、中学生という設定の甘酸っぱい気持ちを目一杯に組み込んだ一本。転校しちゃう女子に告白したい男子とその男子を想い続けてるのに言い出せない幼なじみの女子という、まあ少女漫画か(少年漫画にもありそうだけど)と思うぐらいに王道な設定を舞台にしつらえつつ、じつは転校する少女(片桐はづき)はかぐや姫よろしくUFOに乗り天に戻っていくのだというひとひねりがけっこう好き。もっと破壊力を持って作れそうな気もするけれど意識的に抑えて作ったんじゃないかという気もします。近藤芳正と対等に渡り合う神戸アキコのパワフルさと女心の細やかさ、わりと久しぶりな感じもしますが、確かなちから。
Mrs.fictionsは唯一の再演。 (1) もともと新作で構成されるはずだったのだけれど事情 があって、再演という形になったようです。そもそも短編に強い劇団の、しかも評価の定まった一本ですから、もちろん完成度も高く安心な一本。テレビタレントという印象の強い小川菜摘だけれど、ちまちましたコントっぽさよりもバブルな時代の雰囲気のある種の馬鹿馬鹿しさをちゃんとゴージャスに。失礼なことですが、役者の経験があるとはつゆ知らず。たいしたもんです。正直に云えば、近藤芳正にあんまり若い頃にバブルで浮ついていた感じが薄くて、少々勿体ない感じではあります。
オールドは、楽屋を尋ねる二人という体裁で。作り込んだのか即興なのかいまひとつわからないけれど、これぐらいなら枠組みだけで自然にやっちゃう役者たちですからそれを眺めて楽しむのが吉。
公演の成り立ちとしては、若い役者を年上の近藤芳正が支えるという形ではあるのだけれど、どちらかというと外部の大きな力に巻き込まれまくって大汗かいて乗り切るというのがこの役者の強み。という意味では物語として個人的に興味はもてないけれど、近藤芳正という役者を生かし切った、という意味ではナカゴーに軍配があがります。もっとも意図的に生かそうとした、というわけじゃないんじゃないか、とわたしは思っていますが、どうなんだろう。
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