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2014.10.09

【芝居】「不謹慎な家」PANDA JOCKEY

2014.10.4 15:00 [CoRich]

やけに書いたり出演したりが集中して多く感じるMCR・櫻井智也作にシンクロ少女の名嘉友美の演出という、意外に思いつかないタッグの95分はキレッキレの台詞が飛び交う95分。5日までシアター711。

殺人を犯し刑務所に入った男が出てくるまで、待ち続けると決めた恋人。彼女に淡い恋心を抱く幼なじみの男を管理人として同じような境遇の女たちを集めて、一軒家を借りて共同生活をする。待っている女たちの想いは少しずつずれていて。

サイコパスかと思うほどに自分勝手さをデフォルメした女を主役に据えます。徳橋みのりのためのように描かれた(や、実際の彼女がどうかは知らないけれど)物語は、時折お茶の間シーンっぽいものを挟みつつ、彼女の頭の中のある種の狂い具合、あるいは他の女たちとのズレ。 連れ戻しにくる兄との会話も印象的で、家族の想いは理解できるが、自分のことを理解してくれない肉親の元へは戻れないという、彼女なりのルールの理解しがたさも人物を造型します。

あるいは想いを寄せているのに想いの届かなさ具合という登場人物たちの距離感が絶妙なのは作家の確かな力。昨今、若くなくなった男を描いたときのペーソスというか、情けなさを描くという意味で現在の(少なくとも首都圏の)日本人の男の感覚にはすごくあっています。ロシアやあちこちの芝居で繰り返し上演される名作の強さはもちろんあるけれど、今の私たちの腑に落ちる言葉で今の私たちに寄り添うようにかかれた物語の方が、私にとってはとても大切に感じるのです。

そこに女性の演出は新鮮で、かつ奥行きを加えます。 アメリカ映画風味の音楽が、とてもシンクロ(少女)節だったり、脚本の指定か、演出の成果かはわからないけれど、待ち続ける女性たちのそれぞれの事情のリアリティを感じます。 あるいは、あからさまにおかしなシチュエーションなのに、待ってるはずなのに連れ込んだ男(つまり、飼ってる、ということだとおもうのだけれど)とか、あるいは妹を大切に思う兄のポジションの絶妙さなど、いろんな要素がからみあいが楽しい。

スタンス、デリカシー、ルール、モラルを問題にしてるという台詞はあえて日本語にしないことでそれぞれに思う余地から生まれるズレを作り出す装置として巧い。あるいは、刑期が3年か10年かの想いをどちらの立場で語るかによるズレを明確にするために、ラーメン屋の行列で3番目から10番目に頑張ろうというのと、10番目から3番目へ、という方向の違いで説明するというのも絶妙。連れ込んだ男も実は刑務所にいたことがあって、出てきたら待っているはずの女が待っていなかった、というのを語るシーンは、待っている女たちにとってホラーに感じるけれど、それは手紙が月に1枚じゃ少ないじゃん、とひっくり返って着地するとか。アタシが本当に好きだった頃のじてキン・飯島早苗×鈴木裕美にも似た切れ味。

ヒロインを演じた徳橋みのりはキレッキレの高いテンションを始終維持するという役をきっちり演じきります。 想いを寄せる男を演じた有川マコトは、若くない若く見えない男というポジションのおかしみ、哀しみをきっちり体現。アタシにもっとも近い存在に感じるけれど、同居、というのはアタシにとってはファンタジー(泣)。兄を演じた堀靖明はキレキャラではなくてきっちり普通の人だって巧く演じられるのはもちろん当たり前なんだけど、認識を新たにしました。

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