【芝居】「ジェラシーいろいろ」(C)桃唄309+東京オレンジ
2014.9.27 17:30 [CoRich]
桃唄309のカフェ公演企画。28日までRAFT。1時間ちょい。
(観客からお題を募集してシャッフルで決めた被害者像)
43才の主婦にして未婚、バレーボールが趣味、現場は佐賀・西の松原。
刑事たちの聞き込みによって浮かび上がった容疑者たち。
学校に行けない被害者の息子15歳、主婦ハケンなる怪し気な会社の社長、バレーボールのコーチ、若い恋人にしてコンビニ店長。「オレンジ色の憎い奴」(東京オレンジ/構成・演出 横山仁一)
男女四人のドライブ。それまでのさまざま。工場の同僚にやけに懐いた男は叔父が送ってきた木彫りの「守り神」の不思議な出来事を誰かに話したくてしょうがない。その同僚はミステリアスな女の営む店に行くのが楽しみ。不思議な出来事は、木彫りの人形を振ると少女が現れることだった。
「もっともっと噛みしめて」
「オレンジ色〜」はいわゆるインプロ。何かの設定のなかで役者の想像力と瞬発力で物語を紡ぐという意味である種のアドリブ力だったり、大喜利的なものに近い感覚です。 今作では刑事たちと容疑者を兼ねる俳優が4人、被害者役の女優が一人。 最初の設定と、刑事と被害者を兼ねることなどの大枠だけを設定し、そこに人物を当てはめて、容疑者たちがそれぞれ怪しく、うちひとりに絞られるような背後関係を役者たちが役の台詞のなかで肉付けして いきます。未婚の主婦とか、東京在住なのに殺害現場が西の松原など設定に苦しめられたとはいえますが、そういう意味では役者のあくせくした感じの面白さはあるにせよ、物語の面白さは多分に担保 されない可能性があります。そういう意味で役者の訓練とか顔見世という以上にはどうしても足が向けづらいアタシです。そういう意味じゃ、スポーツ観戦に似ていて、奇跡を目撃する可能性は否定できませんが。
ワタシの観た回に関して云えば、被害者像だけを大枠で与える、というのがあんまり巧く機能しなかった気はします。死因をお題で与えるなり、あるいは役者たちの工夫の余地ででも最初に方向を示さないと、殺人事件ものじゃ、何も絞りきれないまま状況証拠だけを積み上げることになって、何回やってもぼんやりしたことになる危惧があります。鉛入りのバレーボールというあからさまな凶器が決め手にならないのもちょっと残念。
被害者を演じた三上奈穂は時に可愛らしく、時に母親、時に色気のある主婦をきっちり。デカ長と怪しげな社長を演じたBOBIは社長の怪しさが印象的。若い恋人を演じた金川周平はやや設定を思いつくのに苦労した感はありますが、誠実な造型。若いコーチを演じた柳田幸則は 爽やかだけれど、ママさんバレーのキャプテンならそりゃ女性だろ、というのが残念。
「もっと〜」はスピーディーな演出が身の上。 守り神を木彫りの人形の話、に実は仲良くなかった工場の同僚、彼が出入りするちょっと怪しげな店のミステリアスな店主を巡る物語。人形を振るとあらわれる、かわいらしい女の子、などなど。 小さな場面に切り刻み、時間軸を完全にシャッフルして目まぐるしくみせる物語はけっして見やすくはありません。が、こまかなパーツが組み上がってひとつのものがたりになるさまは、物語に登場する「クラウドハンドクラフト」っぽくてたのしい。
この作家は、世間で起きていることを多少の虚構を交えて物語に組み込むときに圧倒的な力があるとおもっているのだけれど、「クラウドハンドクラフト」はまさにそうなのです。「クラウド」はつまり相手の顔が見えないけれど大勢の人が何かを成し遂げるということが同時多発するという感じでしょうか。クラウドファンディングが近いかしらん。「ハンドクラフト」は文字通り手仕事とか工芸とか。つまり大勢の人が材料を交換したり渡したりして、それぞれが何かを作り上げていく、というのは3Dプリンタとか女子の手芸電子工作、ひいては「ハルロック」が近い感覚なのです。その中からピース缶爆弾が作られちゃうとか、でもUSB接続で設定したりハイテクで、それを何かのテロに使おうか迷いつつも、木彫りの人形を葬るためにつかう、という終幕も面白い。
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