【芝居】「社長吸血記」ナイロン100℃
2014.10.18 14:00 [CoRich]
東京の千穐楽前の昼公演はキャンセル待ちでなんとか立ち見(割引して¥5,000)で潜り込みました。 19日まで本多劇場。そのあと福岡、大阪、新潟。休憩無し150分。
会社のビルの屋上、屋上より高いマンションやビルが間近に迫っている。昔は綺麗だったらしい屋上は、半分ゴミ捨て場のようになっている。 社長の行方がわからなくなって3ヶ月、金庫のあけかたすらわからず、会社の綻びがあちこちに。 実はその会社、老人を騙したり色仕掛けで会員を募るような会社だけれど、久しぶりにOB/OG達が集まったりもしている。
予告通り、屋上の昼休み、昭和のサラリーマン喜劇の枠組みで始まる物語は、わりと早い段階で雲行きが怪しくなり、(当日パンフの参考文献にある)豊田商事風の顔が見えることが明かされます。さらには刑事はその会社が怪しいことは重々承知の上で、ズブズブの関係だったり、色仕掛けを働く女たちは男性社員の妹だったり彼女だったり。解約を求める客をどうあしらうかなどをロールプレイしたり、あるいは男性社員を殴る室長が居たり。警備員すら自分の職務に忠実というよりは、会社についての何かのニュースがあるというと、自分のことではないかと心配するばかりだったり。
という枠組みの上に、もう一組(二役の役者が多いのですが)の社員たち、が登場します。年齢を重ねておだやかで、昔話に花を咲かせるような、笑顔が多い人物たち。社長は昏睡状態に陥っているけれど、その状態で頭の中で見えている風景。それは今は酷いことになってるこの会社の社長の自分だけれど、まだ若い頃先代の社長の頃の会社も社員も幸せだった時代の走馬燈だと思うのです。二つの時代を同じ場面で対比することで、時間の流れ、さらには(はっきりとは語られないけれど)時代が悪くなっている感じを昭和生まれのワタシには実感できるような時間軸の取り方なのです。
もう一つの魅力は、不条理溢れる会話の緻密さ。毎度のことながら具体的には覚えてないアタシですが、確かな力の役者が2,3人で語る不条理は、12月に控えた青山円形の別役実作品(だけどSillywalk.comのリンクが切れてる..)への期待も膨らもうというものだけれど、うあ、平日しか残ってない(無念)。
ナイロンのプロジェクションマッピングを初めて見たのは何時のことだったか。世間で評判になるよりずっと前から使っている気がします。今作においてはもちろんオープニングの精度の高さもさることながら、我慢ならない兄が犯行に及ぶ大雨のシーンの雨の美しさ、闇の怖さ、そこにスローモーで重なる訓練された役者たちがあいまって、恐ろしく、しかも強い印象を残すシーンをプロジェクションマッピングをきっちり使って創り出すのです。
大倉孝二の兄は物静かな役、二役で演じる老人は優しさととぼけ具合が印象的。妹を演じた鈴木杏は、可愛らしく色っぽくだけれど本当のことは話せず秘めるニュアンスもいいのです。大きな目が印象的な妹を演じた小園茉奈も可愛らしい。犬山イヌコ、峯村リエの二人のからむ不条理なセリフは圧巻の安定。探偵を演じた山内圭哉は、そのとぼけ具合だったり、あるシーンではパシリな造型もなぜか印象に残ってしまいます。
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