【芝居】「日々是闘笑!- 広目屋日記」文月堂
2014.10.4 19:00 [CoRich]
5日までサンモールスタジオ。130分。
昭和8年、チンドン屋を営む一家。妻を亡くして後妻を迎え、その弟のテキ屋が出入りするようになっている。テキ屋に身請けされた女はテキ屋が東京を離れている間に生活のために三味線弾きとして一座に加わるが愛想が東京愛想一座。一座の男は妻とともに土地持ちに強く憧れていて大陸移民への応募を考えている。一家の息子は亡き母や恩師から勧められた教員の道に進むことができなくなっていて、恩師の同人に加わり、絵を描いたり評論文を書くことに喜びを感じている。恩師はその息子を応援するが、元軍人の大家から戦争に反対して居るとして目を付けられる。
東京音頭が流行り、日本が戦争に突入していく時代を背景に、頑固な親や時代との確執を拗らせた青年と親を軸に物語を勧めます。当日パンフで作家が語る、自衛隊、事務員、共産党員、タクシー運転手と生きてきた父親だったり、あるいは生業としてのチンドン屋だったりと語り口にある種のバイアスがかかっていて、作家の想いの強さが出過ぎている感じではあって、語り口には正直、少々癖があります。にぎやかな音楽を何カ所にも入れた祝祭感も、時代の雰囲気を増すことには寄与しているものの、物語を分断してしまったり上演時間を長くしがちで効果としては難しいところではあるのです。
頑固で頭の堅い父親は、ふらふらしている息子のことを叱咤するけれど、終幕に至り、息子が自分の足で歩み始めて選び取った絵の道に対しては応援するし、進歩的な女教師が少々煙たく思うけれど、踏み込んできた刑事からはきっちり匿うという形で、古い人間なりの、しかし筋の通った男の像を丁寧に描きます。
何か良くない方向に時代が動いている感じなのに、東京音頭という明るい曲が流行っていること。あるいは教員赤化事件や不況を脱せられない感じなのに、皇太子生誕と、相反する事象がないまぜになっている時代の空気。ヨーヨーの流行、大陸移民などの時代のキーワードを織り込みつつ、何か起きているかもしれない、ということ。きっと作家が感じているのは、今の私たちが暮らしているこの時代だって、じつはあんまり変わらないんじゃないか、という危機感かなとも思うのです。
父親を演じた有馬自由は頑固オヤジで強い男、という造型をしっかり。女教師を演じた椿真由美は時代に一人抗う闘士、という風情がカッコイイ。後妻を演じた辻川幸代はポジションとしてはヒールだけれど、ちゃんと筋は通って居てそれを徹頭徹尾維持する力。
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