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2014.09.22

【芝居】「ヒヨコマメスープの味」もじゃもじゃ頭とへらへら眼鏡

2014.9.15 14:00 [CoRich]

へらへら眼鏡と名乗る河田唱子と、もじゃもじゃ頭を名乗る笹浦暢大の作演ユニットによる初の長編、120分。11月末で閉館の決まった相鉄本多劇場で15日まで。

飛ぶ鳥を落とす勢いのIT企業、若い女子社員がチームリーダーに抜擢されたのは、業績の思わしくない通販部門だった。初日に連れてこられた地下倉庫で、前任者が粗相をして仲違いしたひよこ豆農家から納入されていた大量の豆はこれまた前任者の粗相により腐り始めていた。一晩でまともな状態のものを選り分けて農家に返すことで損失を少しでも減らすことが最初の仕事だった。
部下はアルバイトのみ。7年勤め続け社員への道を夢見る女は頑張る気満々、詩人を名乗る男は醒めて無理だという。約束があるという女、ぽーっとして見える女、物腰の低い年嵩の男。更にキャピキャピとした派遣社員の女たちも手伝うと言い出す。

作家自身が当日パンフで自覚しているとおり、 いわゆる「会社」の事を描く芝居はそもそも少ない のですが、たいていの場合は「切られる側」のアルバイトとか派遣社員という視点で描く芝居が多い気がします。ちょっと昔なら芝居に限らず映画だってドラマだって全員が正社員で女子は腰掛け前提、みたいなステロタイプなもので普通を描けていたし、「ショムニ」とか「ハケンの品格」あたりまではなんとか描けても、昨今の現実は雇用形態が更にバラバラで、さらに女性でもきっちり働くようになっている現場もある、いわゆる「オフィス」のニュアンスを描くのは、苦労が多い割に地味になりがちですが、(当日パンフによれば)作家自身が見てきたことを、箱庭のようなコンパクトな感じではあるけれど、きっちりと描くのです。

「豆を選り分ける作業」という非日常のイベントではあるけれど、いくつもの雇用形態で働く人々、あるいはパワハラ、セクハラだったり、ちょっとしたブラックを匂わせる会社をぎゅっと背景に描き込みつつ、人々の想いを描き出そうとしています。あからさまに理不尽な選り分け作業だけれど、情けないリーダーはそれでも前向きに仕事を前に転がそうと七転八倒し、アルバイトたちは醒めていたり文化祭よろしく遊び気分だったりはしながらも、リーダーの熱心さにほだされいつしかチームになっていく、という、たった一晩だけれど確実に成長していく成長譚にもなってい いるし、それを支えたアルバイトとたちは一人は社員になるけれど、他はみなサッパリとして去って行くのがどこか西部劇の幕切れのようでカッコイイ。

正直に云えば、 誰もが知る大きな会社の通販の在庫を賃料の高そうなオフィスである自分の会社の中でやってるのだろうかとか、業績が悪いとは云え物量として100kg以上あったとしてもこんな量じゃ少ないんじゃないかとか、いろいろ突っ込みどころはなくはないのです。でも確かに大量の豆とか、こういう無駄っぽいことが芝居の醍醐味で、土手が出現してみたり大量の砂が敷き詰められたりというこの劇場のあれこれを思い出してしまうのです。初めて来たときとかその劇団が解散したときとか、わたしのblogタイトルに繋がる公演の原型とか、この劇場への想いも重なってしまうのです。

延々と続く選り分け作業の地味な絵の中での会話劇のようなものを期待していたアタシにとっては、期待していた物とはちょっと別の物だったのだけれど、若い作家がちゃんとワタシから見える風景に地続きと思える説得力をもった芝居を描いているということが、嬉しく思うのです。もちろん描いてる風景は決していい風景、というわけではないのだけれど。

頑張る女の子を演じた中山泰香はかわいらしく、まっすぐな造型をしっかり。詩人を演じた鈴木利典は斜に構えてるけれど優しい男がかっこいいし、不倫になやむ人妻を演じたannaの色香、腰の低い入れ墨男を演じた織田裕之の振り幅、バイト7年目の真っ直ぐな女を演じた伊藤南咲、ちょっと軽い感じで前任者の動向をfacebookでみて報告しちゃう三枝ゆきの、それぞれのキャラクタ。その前任者を演じた緑慎一郎は結果的に転換の間をつなぐような役割を担う無茶振りだけれど、コーヒーブレークのようで楽しい。


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