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2014.09.15

【芝居】「無意味な花園」空想組曲

2014.9.7 16:00 [CoRich]

7日までサンモールスタジオ。105分。

地味に目立たないように暮らしていた高校の女教師は、近所のスーパーで男子生徒に声をかけられ、突然の大雨でずぶ濡れになった生徒を自分の家に上げてしまう。男子生徒は思わせぶりなそぶりで誘いつつも帰宅するが、携帯電話を忘れていく。翌日、男子生徒は再び家を訪れ、付き合っている女子高生は居るが自分が楽しいと思うことを理解して貰えないのだという。無意味だけれどやったらたのしそうなことをやる、というのが楽しいのだという。教師と付き合うのも、それを周囲にみせつけるような乱痴気騒ぎも意味なんかない。 戸惑いながらも、それまで「選ばれたことのなかった」女教師は、 男子生徒の思うツボにはまっていく。

婚期を逃し、静かに地味に目立たないように暮らしていた女の日常に踏み込んできた若い男。教師と生徒という関係を軽々と越えるばかりか、インモラルなことすらそれがおもしろければどんどん踏み込んでしまいます。若い男をまぶしく感じ、翻弄されることに最初は戸惑いながらも、どんどんのめり込んでいく感じ。美しくないわけではない女がなぜここまで拗らせてしまったのか、ということは終盤で明かされて、 それがどんなに忌み嫌われることだったとしても「選ばれなかった」という事実が彼女の中で醸されるうちに「選ばれるのは自分と違う人間なのだ」とまで凝り固まっていく に落とした影の根深さ。

男を家に上げる直前にあわてて片づける序幕はその理由が明かされないまま始まるけれど、まるで犯罪でも犯すかのような切迫感は並々ならぬ感じで、とても印象的なのです。時に無邪気そうに、その実計算高く女を仕留めようとさまざまなトラップをしかけ、はてはケイタイを忘れて帰るなんざ、作家の鬼畜な感覚 (失礼)がかいま見得るようで、おもしろい。

かとおもえば若い男も、その女を必要とはしていて、互いが互いを求めていくことはどんどん蛸壺にハマるように落ちていきます。それは常識という束縛からの自由なのだと男はいい、女にとっての新しい人生の誕生日なのだという甘いささやき。が、男はまたもう特別なことなんかなく、これから先おもしろいことなどなくて、明日からの余生を生きるという終盤もちょっとほろ苦くて好きです。それはほんとうなら思春期特有の万能感がはげ落ちていくような感覚でもあって、男の成長を予期させる幕切れなのです。 若くはない女を演じた松本紀保は出ずっぱりのまま、時に下着姿にまでなり、でも微妙に若いはじけるような体型でもなく、翻弄されまさに「よろめく」色っぽさにやけにひかれてしまうアタシです。若い男を演じた西井幸人ははじけるように飛び回り、ほんとうにきらきらしているのです。女子高生を演じた趣里が 女教師に向き合う時に対抗するために背伸びする感じが可愛らしい。男性教師を演じた瀧川英次は オジサン感と真面目さが目一杯で客席を沸かせます。

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