【芝居】「優しくして」ドリームダン
2014.9.27 14:30 [CoRich]
解散を発表した 散歩道楽内として出発したユニットの公演。28日までワーサルシアター。110分。
小さなおにぎり販売店の前。近くには劇団アトリエがあり公演を間近に控えて役者たちが朝から稽古の為出入りしている。近所に住む女はフェレットが逃げ出したといい、探し回る。この店の縁結びのジンクスを目当てに訪れる女は、これまで縁遠かったのに、芝居を一緒に見ないかとさそわれたのを皮切りにおおくの男たちから話しかけられ舞い上がる。店長を訪ねてきた男は訳あり風で、たかろうとするが、フェレットに似てるといい意気投合した女の家に泊まる。そして、誘われた芝居の当日、店主も一緒にみることになって。
前半は縁遠かった女が縁結びのジンクスがあるおにぎり販売店での店先でのこれでもか、という出会いの数々だが、その相手の殆どが一癖も二癖もあって生活力無さそうな劇団員たち。それいがいだって芝居に誘ってくれたイケメンにしても凛々しいスーツ姿の男にしても、一皮剥いたらもっと癖のあるやつらで。駄目男カタログが佃煮のよう。後半はその劇団の芝居を店主ともども見ることになるが、そのあまりの長さとわけわからなさのあまり、男が昏睡状態に陥って延々眠り続けるを男に膝を貸す女の話に。眠り続けてしまう男のことを、ワケアリな男にからまれたり店を開いたばかりだったりしてきっと肩肘張って緊張し続けてきたのだろう、ずっと寝てていいんだからね、膝ぐらい貸すし、見守るし、という女の心意気。タイトルの「優しくして」と云うのは女じゃなくて男の側の気持ち、しかしセリフとしては発せられないというのがちょっといい。
そう考えてみると、劇団の二人の女にしても、あるいはフェレットを探し続ける女にしても、何かに追い立てられていたりする男たちに比べると、今作の女たちはそれぞれに自由で自分の行きたい道を進んでいるように見えます。とりわけ、フェレットを探し続ける女は、自分が決してモテないし人付き合いだって巧くなくて、不思議ちゃんというのは年齢を重ねすぎているということを自覚しつつも、しかし自分のありかたを曲げずに居続けるのです。男をフェレットに見立てた冗談に乗っかったホームレス状態の男を自分の家に泊まらせて、軟禁に近い状態で「飼う」のは確かに少々常軌を逸してるかんじはありますが、それにしてもブレがないといえるのです。この二人の描写は確かにコミカルだけれど、中年男女のカップルのゆがんだスタートとある種のかっこ悪さという意味ではやけにリアリティがあるとも感じられます。
劇団の稽古と上演の両方を見せて、上演がいかにハプニングで駄目になったか、ということを見せています。2時間弱の芝居の中で、「本気で作ってる芝居なのにあからさまに面白くなさそう」という芝居をダイジェストとはいえ2回回して見せられる物になってるというのはたいしたものだし、多くの駄目男たちをきっちち登場させる背景を担ってはいますが、正直にいえば、この芝居自体は物語にはあまり寄与してない感じがあって、核の物語の間にインサートされてしまうために少々間延びする感じがするのは勿体ない気がします。
縁結びを信じてやってきた女を演じた菊池美里は、さまざまな男たちに話しかけられ舞い上がり、しかしどこか踏み出せず、それなのにほくそ笑み、勘違いだとわかってもともかく前向きに次に進むという物語全体の推進力を担います。コミカルでどの人物との当たり方というか距離感も絶妙で、コメディエンヌとして圧倒的な力。フェレット女を演じた大見遥はあからさまに出落ちな雰囲気を纏いつつも、そのテンションとありかたを終幕まできっちり維持し続けるのがたいしたもの。ワケアリの男を演じた安東桂吾のムショ帰りの強面風から、あっさりと女に飼われるあたりの変わり身の早さといい、駄目男の造型がいい。
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