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2014.09.10

【芝居】「こわくないこわくない」クロムモリブデン

2014.9.5 20:00 [CoRich]

ワタシが見るようになってからは出演者が最大の18名という公演。105分。15日までRED/THEATER。そのあとHEP HALL。

警察にやってきたヤンキー風の夫婦は子供が居なくなったと警察に届け出るが、いなくなってから10年も経っている。警官のひとりは自分が好きな児童ポルノで同じ顔をみかけたといい、さがしてみることにする。
近所の空き家に忍び込んだ若い夫婦は地下で女と暮らす子供たちを発見する。満足に教育も受けていないが、自分たちに子供ができないので一人をなんとか子供に向かい入れようと金を払う。夫には不倫の恋人が居て、彼女とドライブしている時に子供をひき殺してしまっている。
その女は現場で聞き取りを進めるうち、子供をひき殺された母親の家の使用人と知り合う。母親は犯人を殺そうと憎しみの矛先ダンスという鍛錬の日々を暮らしていた。犯人を見つけて差し出せば自分は救われるし報奨金も期待できる。 不倫相手の男の妻と知り合いになり、乗り込んでみれば、かなり成長している娘が家にいる。その娘を犯人の娘として差し出せば、子供を殺された母親から金が取れると画策して連れて行くが、憎しみより子供を自分の子としてくらすといいだす。
児童ポルノの餌食となる少女たちは、大人になる時期になるとお払い箱になり、「殺処分」の専門業者に引き渡す。地下室の少女たちももう引き渡される時期だ。 若い夫婦に引き取られた少女は、死を意識するようになり、離れているのに、殺処分業者に引き取られた少女と感応する。

コミカルな語り口ではあるけれど、物語の枠組みとしては児童ポルノにネグレクト、子供にたかる親といった具合に子供を巡って絶望的にひどいこの世を描きます。それなのに不思議と乾いた感じではあって、露悪的とも違うし何かの告発というのともちがう、子供たちに向けた作家の優しい視線すら感じる全体なのです。 早々に今の最悪な人生を見切って、未来に向けて生きていこう、いや、生きてるだけでまるもうけ なのだから、子供たちには未来があるという視点だなと感じるのです。 もっとも、終幕は先にある希望を描くようにも見えるけれど、どこか今作でのリアリティラインからも離れて夢想のよう。必ずしもハッピーエンドかは怪しいとも思ってるのだけれど。 あまりに酷い現実にはむしろそれが幸せというのはあまりに救いがない解釈か。

犬猫に対して使われる「殺処分」はつまり、ペットとして可愛がられることがなくなった動物がそうされるということで、「大人になって児童ポルノの対象でなくなった」こどもがそうされるという相似形として描かれます。もっとも、大人の都合で子供たちを欲しいと思ったり、何かの穴埋めにしよう、というのはペットのそれの相似形でもあって、 そう思って当日パンフの作家の言葉は、猫づくし。そうか、もしかしたら子供の酷い話を描きつつ、実はこれ猫のことを描いているんじゃないか、とも思ったりします。 猫だって変わらないじゃん、なんで猫は殺していいのかというような。ギリギリの危ない描き方だと思うけれど、そう考えるとチラシだって猫だし。

幸田尚子は美しく、しかしやや狂い気味、を戯画的に。ダンスも楽しい。葛木英のやや不幸な女っていう造型は珍しくて喜んで見てしまうアタシです。若い妻を演じた渡邉とかげの真っ直ぐさ、(野良猫的な子供なら)連れ帰っちゃおうというというのも猫の相似形。あからさまにキチガイな男を演じた久保貫太郎はぶれること無くフラットでキチガイで居続けるのが凄い。殺処分の男を演じた花戸祐介は中盤、女の子に翻弄される感じもいい。三人の子供のセンターを演じた川村紗也はイノセントな子供は確かに得意技で安定。

ネタバレかも。

児童ポルノはまあ写真をみるだけの変態という描き方。嫌悪すべきモノという位置づけにされがちな幼女趣味だけれど、好きでそうなったわけではない、犯罪に結びつかないものも含めて暮らしていけないことの息苦しさな前半。ネグレクトされた子供たち、殺処分という言葉の怖さと裏腹に、男が連れていった少女たちは、冷凍保存で、幸福が期待できる100年後に少女たちを送ろうという話なのは、終盤でそれをくるりとひっくり返す感じでSF小説のような小気味よさなのです。パリパリと人々を凍らせるという表現に巨大虫取り網のようなポリ袋をかぶせていくと言うアイディアは面白いし、そのあと空間が凍っていくように筒状のポリ袋が舞台を覆うのも巧い。その凍ってる世界で交わされる終盤の会話は、あるかもしれない未来かもしれないし、凍らされた人々の夢かもなぁ、と思ったりします。

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コメント

とても面白く拝見しました。
そしてほぼほぼ感想が同じだったのが驚きです。

ただ。一点。モノローグの捉え方。
気がつきました?きららの声、げんたには聞こえて無いんですが、やすよには聞こえてたんですよ。(きららの声に反応していた)
もしかして。きららはこれから産まれてくる、げんやす夫婦の子供なのではないか。産まれてきただけで丸儲け!産まれても、お母さんとならこわくないよ。そんなメッセージにとらえました。

なんか。青木さんのモノローグにしては珍しいですよね。もっと斜に構えた最後が多かった気がする。穿った見方ですが。新生クロムに対する愛ある言葉なのかも。「こわくないこわくない」だから僕についておいで…と。

投稿: 通りすがりのぬこ | 2014.09.12 23:13

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