【芝居】「ジェラシーいろいろ」(A)桃唄309+リケチカ
2014.9.25 20:00 [CoRich]
小さな空間で飲食自由にして、ゆるりと2畳の空間で30分ほどの芝居を2本ずつ上演するポータビリティの高い人気企画。28日までRAFT。転換込みで60分。初日はこれまた人気の佐藤達による紙芝居企画がセットに。
双子に生まれた長女は、妹が自分のことをブスだといい、せっかく父親に貰った可愛い髪飾りをとられたりする。さすがにキレて何度か殴り、逃げ出すが、まるで妹の分身のような鏡を手に入れる。鏡は可愛いとまでは云わないけれどソコソコ、と云ってくれる。更に、逃げだして初めて出会った男に求婚されるが断り、ライバルを蹴落としまでして自力でのし上がって王妃にま昇りつめるが、鏡が夜な夜な抜け出しているのが気になって 「ラフレター」(作・演出 力武修一) 死んだ男を弔いに来た親戚の女。通夜が終わり、その位牌を持って部屋で一日過ごして結婚したことにする、という風習。階下には従姉妹が居て、止めたいなら止めようと応援してくれている。が、彼女には見えない男が位牌の側にずっといる。 「水の盆」(作・演出 長谷基弘)
「ラフレター」の前半部分は認められたことがなくて自信が無い女の子の成長の物語、と読みました。最初は鏡の中の自分の顔に、それから他の男性に、あるいは社会で力を付けてのしあがり、幸せな結婚をする。が、後半に至り、何もかも手に入れたはずなのに、自分の自信の拠り所たる鏡が自分の知らない一面をもっていることの妬ましさ。総体としてどれだけ持っているかということじゃなくて、その一点がどうしても我慢できないというジェラシーのひとつのかたちをくっきりと描き出します。
のし上がる女を演じた立蔵葉子はどこかぽわんとした印象が勝る役者ですが、秘めたる野心という感じでもあってまたちょっと面白い。 我が侭な妹と、いわば鏡の精を演じた中野架奈は幼さの傍若無人の前半と、どこか醒めたようなのに、コミカルな様子でもあって見やすく物語世界を作り出し、二人の女優が可愛らしく、でもちょっと苦さもあわせてこの絵本のような世界観を体現します。
正直にいえば、楽に座れそうと思って最前列上手端に座ったアタシには、少なくとも初日時点ではかなり役者の背中を観続けざるをえない、という位置。もっとも、この二日後の別ブロックでも同じように感じるところはままあるので、二畳というコンパクトさでは、立った状態の芝居が見づらくなりがちでむしろ座った芝居の方がみやすいという、普通の小劇場の芝居とは逆のことが起きがちだという特性なのかもしれません。
「水の盆」は死者との婚姻、というフォークロアをベースに。それは「家系図を整える」ためだったり「相続をわかりやすくする」ためという理由で現存する風習なのだともいいます。ゆるく親戚ではあっても想いでも想いもほとんど無いはずの女と、死んだ男に恋心を抱いていたのについにそれは果たされることがなかった女。後者の想いが強いのに分家という理由だけで前者の女のものになってしまう、というジレンマの構造。短編ですっとこの「異常事態」にはいり、二人の想いの差と、間に立つ死んだ男のまあ、どうにも鈍感なところがコミカルに、しかし人のシンプルな想いを描き出します。
久しぶりに訪れた女を演じた高木充子は誠実な造型。どこか可愛らしくて芯の強さのようなものを併せ持って、巻き込まれる役割と突っ込むという役割を一役でこなします。恋いこがれる女を演じた山西真帆は序盤こそ地味だけれど、溢れる想いを語りだしてからがいい。家系図も打算も関係なく彼のことを話せる相手を見つけられた、と吹っ切れ、見せる表情の明るさ。
おまけ公演は佐藤達による紙芝居。男の子が鼻の中にモノを詰めてしまうというのは、まあ良くある話というのを何かのラジオで聴いた気もしますが、そのシンプルで情けない話のテンポやはしょり方がよくて、爆笑編に。
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