【芝居】「帰還の虹」タカハ劇団
2014.7.27 18:00 [CoRich]
28日まで駅前劇場。135分。
パリから帰国し、戦争画を多く描き、妻とともに特権的な扱いを受けている画家。友人の教師に依頼され徴兵を逃れるための画学生を書生としてあずかることになる。妻はパリの裕福な生活が忘れられず、我が侭を云っている。時節柄難しい女中が居て弟とともに近くに住んでいる。 家には広報担当の軍人が出入りしていて、画家と懇意にしていて、実はおおっぴらに云えない戦地の悲惨な絵を伝え描いてもらっている。 ある日、書生はそれまで逃れていた徴兵検査、女中の弟には二度目の赤紙が届く。
藤田嗣治(wikipedia)をモチーフにしたと思われる画家を中心に、戦時中に戦争画を描く、というアーティストの性を描いている、と感じます。 戦争というかなり特殊な状況になっても、絵を描くということを業とする人々。生きるためならば自分の信条とは異なったとしても戦争画を描いて生きていくということなのだけれど、それは生きる術かもしれないし、あるいはそんなことは意に介さず、そこに表現せずにはいられない何かが存在しているのだから、それを表現することに全力を注ぐ、ということかもしれない。昼に観た芝居で戦争に向かう国は嫌だなと無邪気に思ったアタシだけれど、あたしが通い詰める芝居を作り出す作家や役者などアーティストにはもしかしたらこういうある意味狂った側面があるんじゃないか、ということも感じる一本なのです。
今作はアート(アーティスト)と社会の関わり方の極端な例だけれど、それはたとえば暮らせないと判っていても芝居から離れられないという役者だったり、稚拙だとしても表現せずには居られない作家の熱い気持ちのような、今、ワタシが好んで観ている芝居を作る人々のある種の狂気を観たいからアタシは通うんだよなぁとおもったりするのです。 もちろん、そういうアーティストばかりではありません。生徒の命と才能を守るために全力を傾ける教師役が明快ですが、社会と繋がることを優先するという在り方もあると思うのです。なるほど、当日パンフに書いてある「一生涯分の経験を積むよりさきに、戦争がリアリティをもって私の眼前に迫ってきたから 〜 そんな世界でどう生きていけばいいか」なる作家の言葉がこの物語を端的に著していると言うことにいまさら気付くのです。
人物の配置が巧いなと思うのです。軍服と女中という二点をちゃんとピン留めしておくことで、この人々がどういう位置付けでどう「社会」から思われているのか、が頑丈な土台を持って立ち上がります。正直に云えば、中盤までは台風の目のように暴れてた妻、あそこまで頑張って作ったキャラクタがやや放りっぱなしになって終盤は普通の人になっちゃうのが、ちょっと勿体ない。演じた内田亜希子はきりりと美しい。軍人を演じた有馬自由の戦場を語る圧の強さ、徴兵される弟を演じた伊藤俊輔、教師を演じた鈴木利典、もう一人画家を演じた山口森広はいずれも「普通の人」であり続けるキャラクタで結果的にややかぶってしまう役割なのだけれど、それぞれのキャラクタがきっちり。
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