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2014.08.23

【芝居】「インザマッド(ただし太陽の下)」範宙遊泳

2014.8.17 13:00 [CoRich]

17日までアゴラ劇場。80分。堕落論(wikipedia)を原案にとっているようです。

日本で世界的なスポーツの大会があった日。大きな期待にもかかわらず、点差は開くばかりでまったく点の取れないままだった。代表選手は退場を命ぜられてそのまま自宅に戻ってきてしまう。関心がなくて無責任な物言いを気楽にしていたカップルは会社からの呼び出しに応じて行ってみれば、代表ユニホームを着せられアイドルに手を取り応援されて競技場に出て行く羽目にはる。が、し合いは一方的なまま、やがて大混乱と成りところどころで爆発まで起こり、カップルの男はアイドルを背負って逃げ、カップルの女は相手国の選手に助け出される。
それで何かが変わってしまった。代表選手の妻は家を出て妻子ある小説家と、カップルの男はアイドルの女が忘れられずに追いかけ、カップルの女は、相手国の代表選手と恋仲になる。

大幅な点差が付いたこの試合がいったい何のスポーツかは明確に語られないけれど、ワールドカップサッカーのような雰囲気をまといます。期待は大きかったけれど、負けるとなると雰囲気がどんどん悪く、しかも無関係・無関心な人々さえも巻き込んでしまう気持ち悪さを描く序盤。そこから何か生活が大きく替わり、やがて戦争に向かう国、という流れ。スポーツイベントであまりに一色になる気持ち悪さと戦争に向かう雰囲気が似ている、ということ自体はそう珍しい視点ではありません。スポーツ観戦は好きだけれどどこか引っかかる気持ちがあるという点で アタシ自身もそっちの側の人間ではあるのだけれど、今作の端々に、どうにもスポーツをやる人々に対して敬意がない雰囲気を感じるのですが、どうだろう。

堕ちていく人々、妻であった女はさまざまなものを捨てたけれど、女であることだけは捨てられなかったということだったり、アイドルだった女はさまざまを捨ててもどこかアイドルだったりと、女たちがずっと一本通った描き方なのに対して、カップルだった男はアイドルに翻弄されたりと男の描き方が悪く云えば薄っぺらな造型に感じるのは気のせいでしょうか。

収縮性のある素材で作られたスクリーンを舞台奥に置き、最初は高輝度のプロジェクターで高いコントラストで文字などを表示、他人のセリフを表示し、役者のセリフとあわせて会話を成立させたりしています。コントラストや色使いなどスライドのセンスもとてもいいのです。何より秀逸なのは、収縮性のあるスクリーンをゆがませたりひっぱたりしながら自在に変化させて物を映すということで、これってピントを合わせるのは相当大変なのだけれどあまり違和感なく空間を作り出します。

妻を演じた中林舞は物静かにあっても心の奥底に「たぎる」もの、どこまでも女であるという色っぽさが印象的。アイドルを演じた名児耶ゆりは可愛らしさよりは、何があっても自分である芯の強さが印象的。

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