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2014.08.06

【芝居】「 す き と お り 」miel

2014.8.2 15:00 [CoRich]

100分。6人の作家の短編とダンスで構成する100分。5日まで、スタジオ空洞。

※セットリストを書きますが、終演後まで配布されません。
表情、拭く、リズム「opening」※
東京に出て10年になる聾者の女、年下の恋人とくらしていくうち、妊娠に気がつく。「 」(米内山陽子)
檻に入れた「化け物」と暮らす男。どうもそうなる前から一緒に暮らしていたよう「「好き」と檻」(末原拓馬)
ワタシはこの通りが好きでした。海の近くの家の幼い頃、小学校の登下校、部活帰り、大学時代のバイト先、公園通り池の近くで同棲していたところ、産婦人科への道、焼き鳥とピンサロの二択の分かれ道「Favorite Street2 」(糸井幸之介)
会社のたばこ部屋の男たちの馬鹿話。一人が実は恋しているといい盛り上がる。相手は会社のあの女。この部室のような部屋にハケンOLが紛れ込み、その一人を当ててしまう。「好き通り」(ハセガワアユム、『その好きは通らない』に改題予定とか)
パーカッション、男たち「regs」※
オフィスのOL。仕事はできるが、男っ気がない。若い女は簡単にそれを手に入れているというのに。「隙のない女」(登米裕一)
あわれなのは〜な女「いろんな女」※
失踪して8年も経ったのに、ある日女は発見されてしまう。調査していた男は依頼主である女の兄が来るまでの間、依頼通りどうして失踪したのかを訊ねる。「透き通り、」(瀬戸山美咲)
「Favorite Street 2」
ending ※

終演後に配布される構成表に記載があるダンスだけ※をつけて記載しましたが、それぞれの芝居を繋ぐような形でダンスがある部分もあります。スタジオ空洞を斜め使い、白い布を数枚天井から垂らし、白い箱、白い衣装の役者たち。あるものは真剣な生き方、あるものは爆笑編、あるものは、どこか素敵な過去の点描、など芝居もダンスもさまざまなバリエーションで見やすく楽しめるのです。

「opening」は立っている役者たちが表情、手の動きと徐々にうごいていく感じ。運び、日々の動きを描き。やがて、スマホをもって。スマホそれぞれに効果音を入れて、動いたりしながら音を出すのはちょっといい。

「 」は遺伝と思われる聾者の女が恋人と暮らし、子供を産むまでの一人語り。ワタシは十分幸せだけれど、産むことが幸せだろうかと逡巡するけれど、出産が迫ればもう、それは無条件に、という語り口。出産の経験者でもあり、手話を芝居に添えることも多い作家らしい切り口の題材で。まっすぐな物語ではあって奇想天外な感じではないけれど、丁寧に描きます。

「「好き」〜」は、おそらくはかつて恋人として一緒に暮らしていた女がある日見るもおぞましい怪物となり、確かに檻には閉じこめたけれど、離れがたい男。言葉すら通じなくなっているけれど、きっと互いには想いがあって暮らしていけるはずなのに、女はもう「透き通って」しまう。それがどういう意味かは語られないけれど、どこか別離を感じさせるような幕切れ。カフカっぽいし、やや放りっぱなしではある気はしつつ、想いを圧力で描く手法をきっちり。

「Favarite〜」はこのストリートが好きだという人々の語りを点描。語られる物語の年齢順に並べ、最初のパートではそれぞれの物語に割り当てられた役者一人の語りで構成。同一人物というわけでも同じ場所というわけでもなく、ごく小さい頃、小学生、部活、キャバクラ、同棲、妊婦、風俗と飲み屋での二択というもしかしたらあるかもしれないごく小さい構成で。後半のパートでは同じ話を同じ役者がしつつも、周りの人々を他の役者が演じるという構成に。「しかし、もう今は何もない」でそれぞれを締めくくるというだけの共通点で、人も場所のバラバラというのは惜しくて、それぞれの想いがある、ということだけで広がらないのが勿体ない。

「好き通り」はたばこの銘柄を胸につけた男たちの「ポジションづけられトーク」が巧い爆笑編。飲み屋の馬鹿話風情だけれど、吸う銘柄で人間のキャラクタが色づけできるという決めつけがうまく効いていて、男たちのマンガのようなキャラクタが楽しい。奥手な男の恋人は誰だという部室っぽい話題もいいし、姉御肌な女(古市海見子)のぶっとびかたもいい。そこでは満足せずに、不思議ちゃんキャラのハケンOL(石井舞)で銘柄占いという新しい軸をもってくるのも実に巧い。 作風を知っていれば100%誰でも正解しちゃうハセガワアユム節の王道。

続く「隙のない〜」もわりと結婚できない女(金崎敬江)ネタな話が大好きなワタシもどうなんだと思うけれど、ここまで突き詰めれば客席が沸き返る爆笑編。すげええ。また、彼女も、結婚出来るOLも実に魅力的なんだ。つづく「いろんな女」とうまく構成されている。昭和歌謡っぽい選曲もいい。これが瀬戸山美咲節な芸風だと思ってしまって申し訳ない。

「透き通り」は、ごく小さなきっかけで失踪してしまった女、どうしよう、と悩んだって、またかくれんぼのように消えてしまえばいい、という軽さもいい。なるほど、おにごっこ。迎えに来た兄を「鬼ごっこのオニ」とする幕切れも好きです。

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