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2014.08.21

【芝居】「朝日のような夕日をつれて 2014」 Kokami Network/サードステージ

2014.8.14 19:00  [CoRich]

24日まで紀伊國屋ホール、 そのあと、大阪、福岡を経てサンシャイン劇場で凱旋公演が予定されています。115分。

17年ぶりの「朝日」だといいます。私は辛うじて前回の17年前の熱狂の中にはいました。その母体であった第三舞台は解散し、作演およびメインの二人は前回からそのまま、いままでも入れ替わりの激しかった3つの役は若い世代に移して上演された「朝日」。有限の要素を組み合わせることで爆発的に増える中に、もう一度偶然同じ組み合わせが現れる「生まれ変わり」と、それを待ち続ける長い時間を潰すために、延々とさまざまな「遊び」をしている人間という存在ということを骨子に描くことは変わりません。

骨子は変わらないけれど、初演のルービックキューブに端を発しながらも、時代に応じて、「遊び」ということや「他者とかかわること」を軸に、途中からビデオゲーム、コンピュータゲーム、ネットワークゲームという新しいテクノロジーを徹底して取り込んで書き換えることを運命づけられた戯曲は、今回も大幅に手を入れています。この17年の間にずいぶんとテクノロジーは変わりました。97年ではネットワークへの接続は万人のものではないなんて云われてたのに、今となっては手元でワイヤレスに動画だって見られる時代になったし、前回描かれた、傷つけない他者ばかりの現実の世界のようなネットワーク、ヒールライフは荒唐無稽に見えたけれど、この17年でセカンドライフが出来て、沈んだりしています。本当に作家がテクノロジーに詳しいかどうかはよくわからないのだけれど、でも、テクノロジーがこういう風につかわれるかもしれない、ということを嗅ぎ取り造り出す力は今作においてもトップランナーだと思うのです。演出はともかく、テクノロジにたいして何かを書ける作家は一時期の大塩哲史(北京蝶々, 1, 2)ぐらいしか思い浮かばないのです。

今作でのポイントは低レイテンシーと広い画角で復活したVR(Oculus Rift)と、スマートホンとの連携。ゲームという要素は後退して、ネットワークに溶け込んでしまう人間、という雰囲気になってきています。分子配列とかDNAということの「有限の要素を組み合わせていくことで無限にも近い組み合わせがあるけれど、いつか同じ組み合わせができることを信じる」(=リーンカーネーション,生まれ変わり)という物語の核はもちろんそのまま。正直にいえば、初演のルービックキューブはその象徴だし玩具だしといういみで絶妙すぎるわけで、それがどんどん複雑になっていって、難しくなっちゃったんだろうなということは感じるのです。デジタルだってもちろん有限の桁数で表現する限りはいつか同じ組み合わせが、ということはしっかりと語っているわけですが。

前回まではあった「新劇病」とか「ミュージカル病」のくだりがすっかりカットされてるのはちょっと悲しい。でも恋人に対して「難しい話しないでよ」という、若い女の子の台詞はシチュエーションはずいぶん変わったけれどちゃんと残ってるし、ウラヤマとエスカワ、研究員とマーケッター、それぞれが静かに言葉を交わすシーンだってちゃんと健在で、朝日の魅力なのです。

大高洋夫、小須田康人の二人はもう50はとうに過ぎてるはずで、それでもこの舞台をきっちり。この二人の会話が絶妙で他に考えられないというのは痛し痒し。研究員を演じた藤井隆は何の不安もなく。正直にいえば、ミュージカル俳優である伊礼彼方(マーケッター、前回まではモニターという役でした)が居るがために、歌が下手、ぐらいの扱いになっているのが実は凄く不満です。若い俳優が演じる少年を演じた玉置玲央は圧巻の身体能力の楽しさ、いじられる感じの楽しさ。ちゃんと互しているのが頼もしい。

1981
大隈講堂裏劇研テント
1983
シアターグリーン
1985
紀伊國屋ホール
1987
紀伊國屋ホール
フレックスホール
近鉄小劇場
札幌本多劇場
1991
紀伊國屋ホール
1997
紀伊國屋サザンシアター
近鉄小劇場
札幌道新ホール
大野城まどかぴあ
2014
紀伊國屋ホール
森ノ宮ピロティホール
西鉄ホール
サンシャイン劇場
A=ウラヤマ=部長 大高洋夫
B=エスカワ=社長 森下義貴 小須田康人
C=ゴドー1=研究員 岩谷真哉 池田成志 勝村政信 筧利夫 藤井隆
D=ゴドー2=モニター(マーケッター) 名越寿昭 筧利夫 松重豊 伊礼彼方
E=少年=医者 松富哲郎 安田雅弘 伊藤正宏 京晋佑 松田憲侍 玉置玲央

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