【芝居】「WILCO」ミナモザ
2014.6.27 19:30 [CoRich]
29日まで座・高円寺1。115分。
その男は、自衛隊をたった二年で除隊するという。ここでは戦争ができないので、ある程度スキルと体力をつけたら、フランスの外人部隊に入るのだとういう。が、そこもサラリーマンだと感じた男は米国の民間軍事会社でイラクという戦場に向かう。そこで医療ボランティアの日本人女性を助けるが、戦争は無くならないという男の考えと、なくせると考える女の距離は縮まらない。
作家が何かを世間よりも知っている、世間よりも進んだ考えをもっている、ということに立脚したつくりではありません。おそらくは世間よりはややモノを知らない作家が、新たに知ったことが物語の種になっています。そんなことも知らないのか、もっと考えてから作品にしろと切って捨てるのは簡単だし、 作家が理解出来ないこと、引っかかったことの思索を延々見せられるということに我慢が出来ないという向きがあることも理解できます。 物語というよりは、作家の思索をダダ漏れさせる、という体裁は 効率も悪いし、危なっかしいし、何より頭悪そうに見えてしまうというリスクもあります。
が、知らなかった、ということを開き直るでもなく、あくまで実直にまっすぐ向かい合おうというのは未熟ではあっても、作家の真摯さの現れととらえて、まるで丸裸でしかし立ち向かうような 立ち位置というかスタイルに 魅力を感じてしまうのです。そういう意味では原発事故を物見遊山で見に行く、という無茶苦茶な スタイルで顰蹙を買いがちだった「ホット・パーティクル」(1)と似た匂いを感じます。 作家自身がその名前で登場したホット・パーティクルほどではないにせよ、 ボランティアの女が愚直に諦めることなく「戦争は止められるのではないか」と問い続ける姿にしても、 久々に会った同級生と簡単にホテルに行ってしまうような女の面にしても、どこか作家・瀬戸山美咲 を感じさせます。もっとも後者はそういう性格はどうかはわからなくて、わりと露出の多い服だったり 体型の色っぽさのようなものからアタシが勝手に妄想してるだけなんですが(←怒られます)。
どうやったら戦争はなくせるのか、なくしたいと考えている女と、武器はかっこいいと思う本能なのだから、戦争は決してなくならない、と考える男との二人が対峙するシーンが好きです。いまさら感ハンパないし、きっと言い古され語り尽くされてきたことだけれど、格好悪くても、彼女が自分の脳味噌で汗をかいて考えているという描き方は、頭がよくてスタイリッシュで、結論まで全部正しいコトが見えちゃうという 作家よりもずっと信用してしまうアタシで、それは編集者という立場を挟まず、ドラマターグの支えを借りながらも基本的には作家一人の語り口である小劇場だからこそ観られるものの一つ、だと思うのです。 もっともそれも語り口の好みにあったからそう感じるということの否めませんが。
実戦を求めて外人部隊に入る男を演じた鍛治本大樹は、キャラメルでは見せない、なかなかどうして 逞しく、一途に考える男。軽口を叩くフランス軍兵士を演じた佐藤滋は、目一杯の肉体美と、 軽妙さでコミカルさを。 ボランティアの女を演じた佐藤みゆきは、ホットパーティクルに続き、この思索し迷う一個人という作家の姿をしっかり。コンビニの女を演じた川島佳帆里はずかずかと人の領域に踏み込む感じ、わからないを わからないとはっきり言う、しかに女を見せるキャラクタをしっかり。 自衛隊員を演じた山森大輔は序盤こそ軽いいじられ役でコミカルに徹するけれど、後半、イラクで 民間兵士と自衛隊員という立場での級友との再会のほんのひとときが実に静かでいい。
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