【芝居】「妹の歌」ガレキの太鼓
2014.7.18 19:30 [CoRich]
21日まで王子小劇場。125分。当日パンフの特別協力としてチラシを置いてくれた店をちゃんとクレジットする心意気もいい。
高校生になった妹分を連れて、カリフォルニアの知人夫婦を訪ねて集まることにした30歳になった男女。高校生は小説家になりたいと思い始めていて、小説を書いている。かつて自分が小学生の時に一緒に遊んでもらったのはカリフォルニアにあつまった人々をモデルにしている。それは、あまりにも暑い夏の日に友達の家で涼もうと考えたのに入れずに思いついて呼んだ鍵開け業者の話だったり、九州に旅行に行った話だったりをモチーフに、世界に戦いを挑む「大食いファイター」たちの話だった。 その憧れのお姉さんたちとの久々の再会に緊張しまくって挙動不審ですらある「妹」だけれど、30になった人々はあのころのようにキラキラとしているかというと、そうでもない。何より夫婦は離婚を決めているのだが、それを知らないのはその高校生だけなのだ。
作家の年代に近い30歳、 大人になってみれば、高校生のあの時の熱い想いを忘れてた。今更恥ずかしい熱い想い。でもあのとき小学校だった妹分が18歳になって(心は)キラキラしてたりして、それに応えられない今の自分が居たりする、という構造で作られたコントラストにグッときます。妹分が聞き取ってフィクションを加えて書いた自分たちが高校生だった頃のさまざまな出来事を見せる前半。何にでも闘う気持ちに溢れてて、良く笑って、思いついて、ドキドキして。恋人ができたり。そう、あの時の私たちはそうだったのだ、ということを丁寧に、しかもわりと爆笑編で描きます。
それに応えられない今の自分たち、というのが後半。モデルにはなれなかったし、思い通りになってないこともあるし。離婚を決めた夫婦がホワイトボードに二人で向き合って整理するシーンがけっこう好きです。踏み出す気持ちが起こらない、なぜなら相手を失ったからだ、 ということを繰り返し頭が疲れ切るまで考え抜く、同じ場所をぐるぐると回っているのだけれど、それはきっとスパイラルを描いて進んでいるのだという 物語の圧力もあるし、こういう話をホワイトボードでやる、というのもどこかほのかに青年団な香りがします。もしかしたら御大もこうやって離婚を整理したのかとか勝手に妄想したり。
正直に云えば、人数の配分は巧くないと思います。大人の女5人の高校時代を3人(+大人と共通の1人)で演じるのだけれど、高校生パートは役を兼ねた結果わかりにくくなってしまいます。大人の役者がもっと応援してもいいし、別の役者を加えるという手もあるかもしれません。大人側も見た目には魅力的だけれど(すがやかずみの眼鏡が素敵)、人数が多すぎるし、背景の厚みが足りないのも惜しい。その分、高校生チームが凄いとも云えるけれど、3x5の無理をするよりは、3x3とか4x4に配分した方がという気もします。 大人と子供に共通の一人を演じた工藤さやが狂言回しのポジションで物語を進めます。 夫を演じた酒巻誉洋のどこまでも優しくきっちり向かい合う夫がカッコイイ。駐在員っぽい感じもいい。妻を演じた森岡望のぐるぐるする感じ。 その妻の高校生の頃を演じた前田佳那子は大人っぽくて可愛らしくて素敵。 カリフォルニアの空気というか、角材などの木地をラフにだしたまま、劇場を横使いにして裏側に導線を確保した舞台も素敵です。装置とは関係ないけれど、序盤の飛行機、着陸前にランプを点滅させるのはシンプルなアイディアですが、巧い。
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