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2014.07.27

【芝居】「こんにちわ、さようなら、またあしたけいこちゃん。」なかないで、毒きのこちゃん

2014.7.19 18:00 [CoRich]

稽古風景をみせる、という体裁の220分。休憩25分を含みます。20日まで王子スタジオ1。

4時間の芝居といっていたけれど、40分ぶんしかできませんでした。なので、稽古風景を見せることにしました。アップから通し稽古、駄目だし、返し稽古、衣装付きの通し稽古、駄目だし、迫ってくる退出時間。
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動かない心拍モニタの横で呆然とする女、女手一つで育て上げてくれた母親に、子供のころから、ワガママや酷いことばっかり云ってきた。感謝の気持ちを伝えるチャンスはいくらでもあったのに、感謝の気持ちをまったく伝えていない。小中高大、社会人の時の私を呼び寄せて、あのタイミングで伝えられるはず。
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芝居の外側に演出家(役)、演出助手(役)を加えて、観客の入っているWIP的な場所、というのが大枠になっています。前半は軽いアップから通し、駄目だし。楽しげでバカバカしい演出家の好みだったり、ゆるい空気で構成。休憩を挟んだ後半は衣装をつけて、母親役を交代して同じ芝居をもう一度。 この二点の違いで印象がまた変わる愉しさもあるし、確実に何かが「進化」していること(のレプリカ)を見せているのが楽しい。 その後のダメだしというか、返し稽古は注目点にアンダーラインを引くかのように同じシーンを何度も繰り返す、というのがその熱量を支えます。

劇中劇というか、稽古している芝居は実はきっちり完成しています。母親へ伝えられなかった言葉、という意味では中吊りでよく見かける葬儀社の広告風味だったり、一人の人生をスライスして同時に存在させるという意味ではトープレのIn her twenties (1, 2) の演出に似ているともいえますが、それは大きな問題ではありません。シンプルな一つの想いを 高い熱量で描くこの話自体がよくできていて、 どこか母親への想いに共振して全体の構造とは別に、二回の通しだけで珍しくボロ泣きしてしまうアタシなのです。

この物語を核にしつつ、しかし客席の一部でしか聞こえないようなひそひそ話が6人の女優たちや演出ブースで行われているというのもちょっとギミックになっていますが、アタシはどちらも聞こえる席でなくて無念。二回目の通しの後はダメだしというよりは、注目点を取り出し繰り返し、熱量を更に高める ということが「物語の外側にある稽古場」というメタな構造を取り入れたからこそ可能になったと思うのです。 この構造というか表現方法が、「次元を加えてみせる」という表現の必然として取り入れられている わけだし、稽古場ということ場を作り出すために4時間弱をかけるという必然も納得感があります。何より この長時間、まったく飽きないで観続けられる、ということは実に凄いことだと思うのです。

浅川千絵は小学生を演じるけれど、座組の中では比較的年上という位置付けでどこか距離があったりする感じが巧い。中学生を演じ(る役者を演じ..以下同じ)た長澤ケリー花の暴れっぷりが凄くて目が離せない感じ。高校生を演じた小鹿めめこは眼鏡や衣装による落差がびっくりするほど、なんか見惚れてしまうのです。大学生を演じた大河原恵のどこかとぼけた感じの絶妙さが良くて、宗教にハマっちゃった、という 役のキャラクタと相まって不思議な雰囲気がしっかり。新卒を演じた原田つむぎの、前半にやけに 可愛らしさ押しを支える説得力。26歳を演じた堀内萌は大人しい感じかと思っていると、終幕で 熱量のある芝居を圧巻で繰り返すパワーに驚きます。 母親を演じた富山恵理子がまた、どこかゆったりとしたリズムを感じさせる雰囲気がいい。 休憩時間で、富山恵理子がつれなくするのになんとかして関係を修復しようとする浅川千絵の会話が絶妙。 演出家役を演じた東山拓広はどこまでも軽薄さ で押す前半と、終幕でみせる迫力の落差がちょっとカッコイイ。演出助手役を演じ、一回目の通しで母親役の代役も演じた狐崎崇史の、どことなく憎めない可愛らしさのようなものが、これもまた母親役の造型の バリエーションを見るようで楽しい。

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