【芝居】「定や、定」鵺的 (毒婦二景・A)
2014.6.12 19:30 [CoRich]
阿部定を巡る新作を二編交互上演する企画公演の一本。75分。23日まで「楽園」。
世間を騒がせた阿部定、その親戚の男が語る本当の定の姿。子供のころに学生に乱暴され不良となり親が頼んできたのは、腕の傷で立ちゆかなくなって女衒をしていた親戚の男のところだった。あちこちの店を転々とし、接するうちに、定に惚れてしまう男だが、定はつれない。それどころか、惚れるということがどういうことなのかさっぱりわからないのだというが、あるきっかけで出会った男に心底惚れてしまう。が、それは情交中の絞殺、陰部を切り取って逃走したというセンセーショナルな事件となる。世間の好奇の目は容赦がないが、殺した男のことをひどくいうことだけはどうしても許せない。
今企画を含めて、好いた男を殺すばかりか陰部を切り取り逃走するというセンセーショナルさゆえに世間の関心と興味を引きがちなテーマでの企画。当日パンフによれば、作家はそれをあっけらかんと明るい喜劇のように描くことにしたようで、Aバージョンとなる今作は、定と、その親戚の女衒の男というほぼ二人の姿から、定の一生をコンパクトに描きます。
不良ぶってはいたが若い娘は実はまだウブ、女衒の一通りの手ほどきを受けて女郎になり人気に。その娘にぞっこんになってしまったのは客ばかりではなく、当の女衒で、しかも妻と一緒に娘同様にかわいがりながらも女として心底ほしくなってしまっているというのが面白い。
女が身体を重ねることは抵抗がないどころか好きなのに、恋愛とか愛するということがずっとわからなかったのに、恋する相手ができた、と喜ぶシーンが好きです。もういい歳になっているはずなのに、少女のように無邪気に可愛らしくて本当に愛らしい。
こういう内容なのだけれど、基本的に情交のシーンは最後の一つを除いて注意深くそぎ落としています。最後の一つにしても、芝居の一シーンとして棒読みではじめ、迫真の声がでる段階では影絵で表現して、記号として置いているという感じで、抽象度を保ちながらというのが巧い。
定を演じた岡田あがさは、跳ねっ返り、すれっからしから少女のような可憐さ、果ては情欲あふれる熟した女、あるいはコミカルまで振り幅がとにかくすごい。きっちりと和装がきりりと美しく、しかも押し倒されたり馬乗りになったりと大暴れなのに乱れないというのがすごい。役者の演技の技術なのか、着付けの技術(詩森ろば)なのかはわからないけれど。女衒を演じ寺十吾は、 女に対して上手であった序盤の強気な感じから、一方的に惚れ込んでしまったときのちょっと情けないコミカルな造型、声の魅力と相まって喜劇としての下地をしっかり。
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