【芝居】「人の気も知らないで」iaku
2014.6.13 12:00 [CoRich]
東京ではやらない、という全国ツアーの幕開けは、劇作家大会2014のプログラムとして。60分。 15日まで、カフェ木もれび(城崎温泉)。そのあと、福岡、熊本、仙台、札幌、京都、三重。
休日、カフェにあつまる三人の女。ミニコミ誌をつくる小さな会社の女三人が、職場結婚を果たす同僚の結婚式の余興を相談するために打ち合わせることにした。うち二人は打ち合わせの前に交通事故で入院した同僚の見舞いに行ったが、予想以上に悪い状況になっていることに動揺している。入院している女は営業でその仕事を肩代わりしているのが、遅れてやってきた三人目の女で、週末もろくに休めないほどの忙しさはついつい、入院している女に対する愚痴になってしまう。
適齢期の女三人の会話劇ときけばアタシの大好物ですが、それを抜きにしても、徐々に示されるそれぞれの関係、という会話劇の王道。実にワクワクするのです。
舞台設定こそ、結婚式の余興の相談をする休日の午後というややのんびりした感じ。入院を見舞った直後のショックの余韻を引きずりつつも、午後のひととき、女性の関西弁のリズムも気持ちよく。無駄に思えることも、あるいは乗りつっこみを交えつつという形でここまで濃密に会話するのは嘘っぽいと感じる向きもありましょうが、アタシの関西育ちの友人は、女性の会話としてこれは自然な感じなのだといいます。なるほど。女性だからなのか、関西だからなのかはわからないけれども、 題材はともかく、こういう会話のリズムや気持ちよさに憬れすら感じるアタシです。
事故に遭い入院した同僚は登場しないけれど、彼女を軸に。その仕事を引き継いで休みもろくにとれない営業職、その同期の事務職、おなじ事務職で入院している女にショックを受けている後輩という三人。忙しさのあまりついつい口を突いて出てしまう悪口めいた愚痴をきかされるこっちの身にもという気持ち、あるいはショックを受けている自分に比べるとやけに薄い反応の相手に突っかかる気持ち、同じ事象に対して感じることのギャップを生み出すということが物語の真骨頂。三人の持っている情報を小出しにみせていく、いわゆる「情報開示のタイミング」が実に緻密で、会話の中での優位不利だったり、あるいは見ているアタシの中での登場人物たちに対して酷いと思うか同情できると感じるかという力関係がくるくると変わる中盤の応酬が圧巻です。
ネタバレかも
たとえば、事故の原因は花見帰りに乗ってた自転車だから同情しづらいというあたりから、それを指示したのは会社の同僚ということだとか、あるいは酷い状況の同僚をできる限りサポートするという若い女に対してそれは自分の出来る限り、という限定でしょと冷ややかに言う女が抱える事情とか。胸が痛まないのか、と云われて挟む一言のタイミングも秀逸。それはアタシがそういう事情を身近に感じることがあった、ということかもしれませんが。 決して明るい話題ではないけれど、この会話の応酬の濃密さにいつしか不謹慎ながらも、楽しくなってしまうアタシのです。芝居をみていてわくわくする感じを味わい、私はこういうのがすきなんだよなぁと再確認するのです。
深刻になりがちな話題の会話をさっと幕切れに持っていくのも巧い。全てが解決したわけではなく、もやもやした気持ちを抱えながらもとりあえず一旦離れて、でもきっと明日以降また話したり遊んだりということもあるだろう、だったり、じゃあ甘い物でも食べに行くか、というのはあからさまに女子的だけれど、前向きにきっちり生きていくという雰囲気でもあって物語の後味が実に爽やかなのです。
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