【芝居】「スズナリで、中野の処女がイクッ 」月刊根本宗子
2014.5.24 14:30 [CoRich]
ゴールデン街劇場初演からわずか半年でのスズナリでの再演。100分。25日まで。
メイド喫茶のバックヤード、表面的には平静でも女たちの好きと嫌いをベースに。さらにはオーナーの元カノと今の恋人、人の痛みの分からない女という具合にこれでもかと詰め込んだ人間模様を、終盤でくるりと鮮やかにひっくり返す濃密さは初演と変わらず、見応えがあります。
もっとも初演の感想と同じく、このひっくり返しに私たちの特別な体験である東北(震源こそ変えているようだけれど)地震というシチュエーションでなければならないのか ということの疑問は相変わらず残る気がします。もっと汎用な何かでひっくり返せれば、物語も長持ちするし、私たちそれぞれが震災に対して持っている特別な感情によって物語を素直に観られないということもなくなると思うのです。
もっとも、何かをきっかけに「状況が替わ」ってしまいそれまでの価値観に拘泥すること(父親の形見であるとかの理由は十分にあっても)が滑稽に見えるというのは再演ではむしろ強化されているというふうに感じます。この部分で客席が笑いに沸くのは初演とは違う印象。
冷酷で自分勝手な振る舞い。まさにサイコパスな女が地震で連絡の取れなくなった両親の心配さになきじゃくり一転か弱い存在になります。この一点を突かれれて脆くも崩れるというのは、どこか昨今の事件を思い起こさせます。もちろん初演時には全然アタシは意識していなかったのですが。 彼女をここまで豹変させた、いわば弱点は地震という自分にふりかかる恐怖なのか両親なのか、その複合技なのかという点で豹変の理由がややボケてしまう印象は初演とかわりません。
ゴールデン街劇場に比べると、舞台はやや高め。チケットの安さとスケベ根性でとった前列の桟敷席からではかなり視点が低く、ミニスカートのメイド服や背中を向けての着替えが多いこの芝居ではやけに太股の後ろ側が視線に飛び込んでくるような高さで、初演よりもずいぶんもやっとスケベ心が頭をもたげて、下手端でパソコン卓に人が座ると結構みえない表情も多くて、実は初演よりももっと感覚的な、嫌な気持ちだったりスケベ心といった感情とか雰囲気に流されるような感想がより頭の多くを占めるような感じに。 メイド長を演じた大竹沙絵子は初演と変わらない、巻き込まれる中間管理職な悲哀まで細やかに。対抗心を燃やす女を演じたのは初演とは変わったあやかもまたいい。背格好がちょっと似た感じの二人というのも、一人の男の元カレ・今の恋人という説得力も。財布を取られた女を演じたのも再演では変わり根本宗子となり、静かに含めるように説得を試みるというところもより細やかになった印象だけれどそれが徒労に終わるという絶望感。揺れの後の拘泥はコミカルが強い印象か。サイコパスっぽい女を演じた尾崎桃子は初演に続き強烈な破壊力。社員の女を演じた梨木智香はどうかどうかはうまくいえないけれど、数段良くなってる感じがします。オーナーを演じた野田慈伸はよりオーバーアクションに空回りするようにパワーアップ。客を演じた市川大貴も初演に続き安定。
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