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2014.05.28

【芝居】「ザ グレイト ハンティング」HOBO

2014.5.24 18:30 [CoRich]

おかやまはじめ主宰の劇団の新作。ワイルドになりきれないマイルドな話、という120分。25日まで駅前劇場。

ダムに沈む町のカフェ兼ペンション、出て行く人が多く限界集落の様相を呈している。かつてはダム反対で盛り上がり、東京からも多くの若者たちが訪れ中にはここで暮らすようになった者も居たが、そんな若者たちももう中年・初老といってもいい歳になってきた。カフェのオーナー夫婦も東京からやってきた若者だったが結婚してここに住んでいるが、訪れる客は少なく織物や銃やナイフへの彫金で生計を立てている。常連客は地元の農場を営んだり狩りをしている兄妹だが二人とも行き遅れている。もう一人の常連客は元ミュージシャンだがもう何年も曲は作っておらず、怪しい植物の栽培している。
大きなバイクで訪れた女はOLに疲れてここでしばらく働きたいといい、百科事典の訪問販売の仕事に疲れたという男は自殺を考えて近くの吊り橋にやってきた。古本屋を営む男は各地を巡って紀行文を書いたりしていて、ダムに沈むこの町を記録したいと通うようになり、IT業界を辞めて世界中を巡る若者は農場で働きたいとこの町を訪れる。 <-- 工事が始まり、徐々に湖に沈む。道路が付け替わりバスがなくなり、限界集落になっていく。 農場主の妹は世界を巡っていた男と結婚し子供ができ麓の大きな農場で手広く商売を始める。兄は仕方の無いこととおもいながらもどこか納得ができないまま、ここに暮らしている。カフェのオーナーも子供が出来てこの町を出てアメリカで暮らそうとしている。911が起きるが。 OLだった女と農場主はこのカフェを受け継ぐ。実は元のオーナーの娘だった。 自殺を考えていた男はボランティアで地域の老人を見守るが実はここに来るまでも寸借詐欺の常習犯だった。人々は逃がすことに成功する。ミュージシャンだった男はハーブの栽培で逮捕されるが、反省して沖縄で暮らすことにする。 --> チラシの絵柄にあわせるように、銃だったりカフェだったりと部分部分は アメリカ西部/開拓時代の風景のように演出しながら。 ゆるい感じの笑いに包みながら、若くはない人々の物語。 ヒッピーというほどの強烈な主張があるわけではないけれど、 かつては若者で、あまり自覚のないままにいい歳になってしまった人々。 人生はまだまだ長く、このあとどう生きていこうか、という枯れゆく人々のもうひと花、という 語り口が微笑ましく楽しい。

何年か小さなコミュニティで暮らしていればこそ人々を含めた場所がとてもいとおしく重要なものになっていて、そこから離れがたい気持ちが物語の原動力。 結構な長い時間を描いていて、妊娠とか結婚ということは描いているのに、大人の恋愛模様は、 思い描いていた古書店主が告白前に見事に振られるというほんの僅かな一点のみ。 おそらくは得意な恋愛模様を注意深くそぎ落としたのは、ラッパ屋の黄金パターンから抜けようと 考えたのかな、と思ったり思わなかったりもします。

ダムに沈む村という場所や、終幕近くで現れる911という年代は、それぞれの設定ということの他に、コミュニティが大きく変わる衝撃ということなのでしょうか。どこか寂寥感のような空気はあるけれど、 それぞれに対して何かの想いが描かれたり、告発したりという感じでもなく、正直に云えばわざわざ大げさな設定を持ち出さなくてもこの物語はイケるのではないか、と思うのです。

劇団員に加えて常連の役者の安定感はもちろん。オーナーを演じた古川悦史のちゃんと真面目なかんじ、 妻を演じた松本紀保はいい意味でおばちゃんになってきた柔らかなキャラクタが可愛らしく。 農園主を演じた林和義は年齢を重ねたという風格と、妹を心配する気持ち。その妹を演じた小林さやか パワフルに暴れ回るのにどこか可愛らしい。楽日まで無事だったようでなにより。対比するように背が高くてハーレーで現れるOLを演じた、こいけけいこはかつて(大昔)の声の調子に不安な感じが混じることがなくなって、きっちり成長していて嬉しい。背広姿で現れる寸借詐欺の男を演じた有川マコトのキャラクタ造型はあまりに過ぎる、と思っていたけれど後半の詐欺の下りで、ああそうかと納得。元IT企業に勤めていた男を演じた瓜生和成はちゃらちゃらしているようにみえて、前向きな造型がちょっといい。 相談をする女を演じた永井久喜は私の席から実は表情が見えづらかったけれど、きちんと。

当日パンフに名前のない、刑事を演じた本間剛は確かに楽しいけれど、結果当日パンフに名前のある 友澤宗秋に一言のセリフもなくなってしまった、と外野からだってわかってしまうのはいいのか悪いのか、あまりに無防備すぎないかとも思うのです。

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