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2014.05.01

【芝居】「あ・GAIN」シアターTRIBE

2014.4 .27 14:00 [CoRich]

長野県・松本の劇団、シアターTRIBEの新作は最後の夏を暮らす人々の、しかしからっと明るい90分。27日までピカデリーホール。

汚染が広範囲に進み住めなくなり、人々は地下に潜り時を待つ選択をしているが経済的な理由からまだ地上に残っている人々も居る。調査に訪れた警備会社のアルバイトは海の下に沈んでしまった町にかかる高架の高速道路の上に「海の家」が建てられていることを発見する。そこに住む人々に捕らわれてしまうが、ここに住む理由がそれぞれにあって。

原発・放射能で戻れない場所という骨格に、したたかかに住む人々を「海の家」という唐突さのある舞台に描きます。それは原発ばかりではなくて海外派遣で目にした戦争の現実だったり起こしてしまった犯罪だったり、インドに心奪われたり、あるいはこの場所を離れられないという人だったり、それぞれの理由と覚悟をもってこの場所にいるのだけれど、あくまで海の家という場所が持つ軽薄さと浮かれてる感じに乗せているのが巧くて、ここに居られるのは最後かもしれない、という「最後の夏」という決死の覚悟をする人々居る場所をあくまで軽いタッチで描き切るのです。

いま社会で起きていることを織り込んで、しかしエンタメというのが作家の個性だと思います。物語の骨組みとしては、最後が来ると判っている人々の最後の夏のひととき、なので、SFの設定でも作れるような物語なのです。

対して捕らわれ、彼らと合流することを決心した男の台詞がよくて、何をやってもうまくいかない、社会のせいにして引きこもっていて、せっかく出てきたら「社会がなくなっていた」という呆然とした気持ちが見えて好きです。

汚染地域でいつ死んでもという覚悟を持っていたはずの人々が目の前に迫る爆撃という現実を前に怯え逃げようとするあたりに少々違和感を感じなくはないのだけれど、見えないゆるやかな死か、ドカンと爆撃に遭うのとはやっぱり違うかとあとから思い直したりもします。 これだけ広げた大風呂敷を、あっさりと、しかしそういう場所は人々が作るのだ、という台詞一つで集結させるのは巧いなぁと思うのです。

松本の民間劇場の中核であるピカデリーホールは古い映画館を改装した建物で小劇場の劇場としては少々広さもタッパもありすぎる印象の劇場なのですが、客席段まで作り込み、おろした状態のバトンをうまくつかってほどよい狭さの濃密な空間を作り出します。この広さが絶妙によくて、パイプで建て込まれた「海の家」がごちゃっとした感じなのも人が住む空間、という雰囲気を醸し出しますし、その下にちゃんと高速道路っぽいものが作り込まれている、というのもいいのです。客席まで作り込むわけで、組みバラシは相当大変だと想像します。

正直に云えば、終幕近く、この場所に集まる人々はどこから来たんだという気がしないでもないし、序盤のいわゆるドッキリはシーンとしては面白いしそのコミカルさは大好きだし、終幕につながる伏線でもあるのだけれど、なぜドッキリをしかけなければならないのか、という違和感は残ります。

もと自衛隊の男を演じた伊藤利幸、戦争のトラウマを表出する後半もいいけれど、軽い先輩にツッコんでいく前半の軽さがいい。その軽い先輩を演じた瀧口将臣もどこかチンピラっぽいのに人情派がいい雰囲気。この場所に居続ける女を演じた、ちんてんめいは軽薄さと亡くした家族への情のダイナミックレンジも解像度も高くて圧巻で舞台を支えます。

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