【芝居】「ラブストーリー」浮間ベースプロジェクト
2014.4.25 19:30 [CoRich]
クリエイターとともに育つ、と題した企画公園。 27日まで浮間ベース。1F/2Fの移動を含めて170分。
さえないオジサンはロックスターになりたかったのに悲惨な世界の前に平凡になってしまった。子供の頃からの女たちとのラブストーリーを振り返る。小学生の時は好きな子とからかってしまうけれど、女の子だって桜の下でキスしてくれた。高校生の頃は互いに想ってる女の子とずいぶん一緒に帰ったりもしたけれど、結局告白することはなくて、大学生になったら海でナンパした可愛い娘にはフラれてイキオイで冴えない女の子とつきあってみたりするけど結局別れてしまう。小学生の時の女の子と再会して同棲するようになったけど、些細なことや些細でないことのすれ違いは大きくて。家族ができた未来にはテレビのヒーローを演じてしまったがために家族がバラバラになってしまっていて。「単純明快なラブストーリー」
カレーが売りの喫茶店、店舗兼住宅に住む女。結婚もせず仕事に没頭してきた。ある日、常連客から味が変わったと指摘されたがそれに気づけなかったことにショックを受けて店を休むことにする。
若い時の恋人には彼への愛より仕事を優先してしまった。20歳で微妙な告白された男は友達だ。年上の彼氏にはいろんなことを教えてもらったし、行きずりの男と一夜を伴にしたり、自分を好きだと言ってくれる男を受け入れることができない「東京の空」。
駅からはぐるっと遠回りして、住宅地と倉庫が混在する町の小さな建物の一階二階を使っての芝居の二本立て。クリエイターのための場所、ということなのでしょう。
「単純明快な〜」は冴えない男だけどいくつかの恋と将来の愛がある、という体裁の物語。路面で大きな出入り可能な窓を持つ建物という立地を生かして、借景というか、ゴミ捨て場のような窓の外や施設前の道路を存分に使ってみたり、自転車を持ち込んでみたり花吹雪を散らしてみたりと、ライブ故の珍しさというかワクワクを軸にして見せていきます。
見せ方の企みに比べると、物語のパンチはやや物足りなさを感じるかもしれません。地味な男のラブストーリーを、というわりには途中ではその恋人となる高校生女子の大人の姿を結婚式の前日という場面を切り取って見せてみたり、ナンパの時の友達の描き方など、役者の人数と語りたい物語が必要としている登場人物の人数の差が見えてしまうのは散漫に感じられて惜しい。結婚式前日にしても、冴えない女の恋物語にしても部分部分としてはおもしろいだけにもったいない感じでもあります。
なによりよくわからないのは、高校生を卒業して女の子は東京に自分は地元に残ったはずなのに大学生のシーンではその自分がフった地味な女は田舎に戻ったことになっていてちょっとよくわからないアタシです。
「東京の〜」は30歳の女性、仕事そのものも、部下(バイト)がいるという立場で自立しているけれど、頼りたい甘えたいというひとりの女性の姿を、それまでの女性の生き方を重ね合わせてみせていくことで重厚な物語に仕上げていきます。休んだ店は再開にこぎつける、という点できっちり成長の物語になっているのも構造としてシンプルだけど美しいなぁと思うのです。
きっちりとした仕事をしているけれど、年下にだって甘えたくなることもある、昔の男に想いを馳せてみることもある、腐れ縁のような男友達はいるけれど恋にはならなかったり、行きずりの男と一夜を伴にすることはあっても、想いを寄せてくれる男に対して自分が寂しくても決してなびかなったりと、女がきちんと自分の意志で恋を選んでいるということの力強さが私の気持ちを動かすのです。
この物語の説得力は箱庭のようにさまざまに詰め込まれた一人の女のそれぞれのエピソードのありそう感はもとより、この一人の女を演じた浅野千鶴という女優の確かな力ゆえなのは間違いなくて、彼女にとってもマスターピースだと思うのだけどどうだろう。
や、なにより結婚できない人の話、というのはついつい自分に重ね合わせてしまって大好きなアタシです。劇中の彼女のようにモテるわけではないから重ね合わせるというのはちょっと違うもしれませんが。
正直にいえば、二つのフロアを移動させてという二本の構成にするべきだったのかは迷いどころという気はします。借景という1Fと、カレーを作るキッチンという2Fの場所の魅力は移動させたがゆえに両立できているわけですし、集客の効率という点ではプラスですが、移動させるだけで時間をくって結局全体の終演時刻が遅くなるというのは痛し痒しだと思うのです。
客入れ誘導を行っていた男性はこの場所の責任者かオーナーのようですが、実に細やかな配慮が行き届きしかも言葉の一つ一つに至るまでホスピタリティに溢れていて、環境のよくない客席だけれど、こういう案内されるなら我慢できちゃう、という不思議な力が印象的でした。
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