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2014.04.18

【芝居】「万獣こわい」パルコ

2014.4.12 18:00 [CoRich]

東京のあとの全国ツアーのスタートは 13日までまつもと市民芸術館から。 そのあと、新潟、名古屋、大阪、札幌、仙台、福岡、那覇。

古い喫茶店を改装してカフェを開こうとする男女は不倫だった。開店の前日、セーラー服の少女が逃げ込んで来た。店の目の前のマンションに監禁されていて、逃げてきたのだという。家族全員が監禁されていたが、毎年ハロウィンの頃になると、一人を互いに殺してきたのだという。
少女は保護され男は逮捕された。それから数年、喫茶店はぎりぎりなんとか営業していたが、二人の間に子供ができず女はノイローゼ気味になっている。そこに、あの少女が現れる。優しそうな養父に引き取られているが、電話に出ると豹変して暴れ回る。やがて、それを操ってるのは監禁虐待を受けたはずの少女ということがわかるが、そのときには少女と養父が家に入り込んでいる。あの監禁のように、少女の気分ひとつで序列がつけられていたが、もう誰にも逆らえなくなっていた。

ネタバレです。

おそらくは実際の事件を物語のモチーフに。それを単に後追いするとか、何かを糾弾するとかということではなく、さまざま(万)な人々の心の中にある残虐なことをしてしまうかもしれない何か(獣)、という物語に仕立てます。事件があって、というのは単に物語のベースにしかすぎなくて、その経験を経た少女がそれを再生産する、ということの恐怖。

とはいえ、それを単に陰鬱一辺倒では描かないというのが作家のちから。もちろんそれは役者陣の力量を前提にしてこそ成立するのです。夫を演じた生瀬勝久と小池栄子のワケアリ感の序盤、そこから数年後の(子供が出来なくて)の力関係のバランスが崩れてるところに説得力ということは年齢を重ねた二人だから成立するという気がします。終盤の小池栄子 が実にいいのです。ジャーナリストを演じる池田成志は喫茶店でデンキ使いまくる常連というのも楽しいし、別の役の悲惨さはあっても、そこにコミカルを交えるちから。養父を演じた古田新太はもちろん安定。チカラを込めてというのとは違うけれど、電話で操られての落差の序盤の振れ幅が好きです。妻の弟を演じた小松和重は序盤で噺家のいでたちで「饅頭怖い」の枠組みを説明してしまうけれど、よく考えたら音は一緒でも、それは何にも関係ないように思ったりもします。が、もちろん安定。カーテンコールでは両親が松本出身、ということが紹介されたりして沸く客席というのもこの劇場の楽しさ。少女を演じた夏帆は、可愛らしさの序盤からそれをフラットに保ちつつ残虐かつ計算された振る舞いの怖さ。他の芸達者な役者陣が支えているのか、物語の構造ゆえかはわからないけれど、可愛らしい女の中にこそある怖さというギャップを作り出すことに成功していて、見劣りしないのです。松本駅までSuicaが来た4月に、ここに彼女がやってきた、ということもなんか嬉しい気持ちになったりします。

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コメント

Very nice site!

投稿: Pharme368 | 2014.05.15 17:18

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