【芝居】「きゅうりの花」ハイリンド
2014.4.6 18:00 [CoRich]
水下きよしの急逝により、扇田拓也の演出で。下北沢に新たにできた本多劇場グループの劇場、「小劇場B1」のオープニングでもあります。110分。出産を経て出演に復帰した、はざまみゆきがが揃い、ハイリンドの役者の久々の揃い踏みもうれしい。MONOの土田英生の名作を(1)。
これといった観光地でもないきゅうりが名産の町。 地区センターの一室。東京にでて結婚したが失業して地元に妻を連れて戻ってきた男、30すぎても独身で近くの市に出かけてはお見合いパーティを続ける男は、離婚して出戻ってきたスーパーの娘に恋心を抱いている。完全無農薬で農業を営む男は農協に入らなかったり小難しい理屈をこねたりする。若い男はこの地区センターで陶芸教室の講師だ。隣の町の町おこしがうまくいってるのを見て、ここでも何かしよう、ということになり、会合を開くが、次期町長になろうと考えている年長の男はこの町に伝わるイエイエ節を現代風にアレンジして振りをつけて、都会で踊ろう、と言い出す。
中央に舞台、二つの辺に客席があるL字の空間は、楽園に似ていますが、それよりはずいぶん広くて舞台に柱があったりもせず、見やすい劇場です。
小さなコミュニティの人々を描くと圧倒的に巧い土田戯曲、過疎や限界集落というほどでもないけれど、ぱっとしない田舎のコミュニティを描く今作も例外ではありません。 田舎を自覚し、町おこしに成功した隣町に焦りつつも、よそものからこの土地のことを悪く云われると結束する感じだったり、家族にふと漏らしたちょっとした不満がばれた時の手のひらを返すかんじとか、あるいはそのよそものとして、この土地に妻としてやってきて、一人で居続ける辛さとか。コミュニティの持つ同調圧力がさまざまな形で濃密に、まるでショーケースのように示されるのに同感したり、どこか思い当たる感じがあっったり、あるいは大笑いしたりと楽しく、時に身につまされたり。★★★
元々は地元の民謡だった「イエイエ節」を現代的にディスコ調にアレンジとするという感覚の古さは、ふた周りする距離感で、この文脈でゆるキャラという単語が出てこないのは戯曲に忠実なのだけれどやや違和感があるのは、現代劇の難しさ。かといってそういう細かい手直しをすべきなのかというのもこの絶妙のバランス感のある戯曲の中では難しい。 初演の振りどうだったかすっかり忘れてしまったけれど、終幕で見せる喪服での踊りは、亡くなった人がいても生きていくということ。今作での踊りはどちらかというとヨサコイな風味で、結果的にはとても今の雰囲気なのです。
変わり者を演じた伊原農は偏屈さなんだけれど、地元で幼なじみの会話で急に人なつっこくなって可愛らしく、Uターンで戻ってきた夫を演じた多根周作は、地元の同調圧力と妻との板挟みのトホホ感がちょっといい。その妻を演じた枝元萌の精一杯に溶け込もうとする感じに同感しちゃう。地元の出戻り女を演じたはざまみゆき、それに恋心を抱く男を演じた山口森広の二人の絶妙の距離感のシーンが好きです。
正直に云えば、あきらかに操作卓のある側の客席が正面という演出になっているのが気になります。最前列とはいえ、反対側の客席の端からでは、役者が一直線に並んで見たりと見えないシーンがいくつもあってややフラストレーションがたまります。もっともカーテンコールから戻る役者たちの表情がみな見えるのはうれしかったりもしますが。
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