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2014.04.30

【ライブ】「38mmなぐりーず 卒業メンバーお見送り&新メンバーいらっしゃ~いライブ 「♪芽が出て膨らんで♪花が咲いて枯れちゃっ…!? べっ別に、さみしくなんかないんだってばぁぁぁぁ!!!!(;_;)」」38mmなぐりーず

2014.4.26 19:30 [CoRich]

小劇場女優によるアイドルユニット、38mmなぐりーずの3rdミニアルバム発売のタイミングで、短編の芝居と歌のステージという二部構成、事前のアナウンスを大きく超える130分。27日までLEFKADA。

卒業する先輩たちとのステージ「送り出しライブ」の練習をしている軽音楽部の女子高生たち。タメがいたずらに長すぎる後輩のボーカルに切れ気味なメンバーたち。顧問の男性教師は部員たちの嫌いなモノを食べてあげる、と誰にでも云うが部員たちは気持ち悪がっている。 が、皆には云ってないけれどつきあってる部員も居て、それなのに、別の部員が好意を持ってしまっていて。そんな支配からは「卒業」
演劇の第一部に対して、ライブの第二部。
[ライブセットリスト](1,2,3は収録のアルバム)

  1. 掟破りの♥I love you (3)
  2. 38mmなぐりーずのタコ紹介 (3)
  3. 親FU-KOOOOO!! (2) [日替わり曲]
  4. 脚立の上の牛若丸 (2)
  5. 恋するミニPAR36N (2)
  6. UIROURI 2014 (1の改訂)
  7. すまいるだいなそー (3)
  8. 制服ByeBye (3)
  9. KANGEKI☆おじさん (1)[アンコール]

芝居の方は、キャピキャピする女子高生たちにキモい男性教諭、それでも好意をもっちゃう女子高生というちょっと捻れた感じと、卒業を前にしたからかどこか高揚していって大騒ぎしてしまうような台風クラブな雰囲気。女子高生たちのぶっとび壊れ具合と、ハセガワアユム節が全開なのだけれど、ぎゅっと圧縮、さまざまに彩られたキャラクタにアテ書きしているようでもあって、気楽にというより軽快にすら楽しめてしまうようなリズムがあるのです。

高校生のけいおん!(バンド)という設定のキャッチーさに、ちょっとした異質なモノ(男性教諭)をまぜて、その間の高揚する気持ちというよりは、争う気持ちをみせる、という場面を作り込むのが巧いな、と思うのです。卒業メンバーにそれぞれのポジション。切れキャラ・ギターの石井舞のイラッとする表情が絶品、のんびりな・バイオリンの若林えりの上品のんびりな感じはこの座組の中では逆のバイアスで目立つ感じ。出てこないな、と思っていたら登場する真嶋一歌は、今作の中ではヤンキーな造型で楽しい。そうか、ライブとは違うキャラが混じるのも楽しいんだ、というのは「8時だよ!全員集合!」の感じか。

ライブを見るのはずいぶん久しぶりな気がします。フォーマットがちゃんとあって、人数がどうであってもちゃんとフォーメーションが組めるというのはAKB的ですが、確かにそのおかげでどこでもできる(ポータビリティの高い)ステージのやりかたを作り上げてきたのだな、ということがきちんと見えるいいステージなのです。

新メンバーとして紹介されたのは楓朋美、桜庭ゆさ、水野以津美。 小劇場の女優たちによるアイドルユニット、という元々のコンセプトに対して、ネットで検索した印象では少なくとも実績では女優と云うよりそもそもアイドル寄りという印象のメンバーも居るようです。 これからの予定に舞台がちゃんと入っているのは頼もしい。卒業メンバーがわりとがっつり女優という3人だけに、このユニットの立ち位置が変わっていくのかもしれないな、と思ったりもします。これで観客も入れ替わったりするのは常なのですが、許可されてるとはいえ、一眼レフを真ん中で構えてという客ばかりを呼ぶのが正しいかどうか、どういう観客を選ぶかということは 今後の重要な要素だと思うのです。ええ、もちろん、キッチリ売れる方向を目指すべきですが。

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2014.04.28

【芝居】「リーガルハイハイ」PeachBoys

2014.4.26 14:30 [CoRich]

いい歳した童貞三人を描く下ネタコメディの三回目。90分。27日までシアター711。

有名なアーティストの絵を描いていたのは別の男だったが、その絵に対する思い入れゆえにゴーストを演じていた男は裁判に訴えることにする。アーティストが雇った敏腕弁護士はゴーストの性癖に目を付け常連の風俗店に出入りしていることをつかむ。
あの童貞三人組の一人は大学の柔道部で煩悩を断ち切ろうとするが、部員にはぽわんとした断れない女が居たりして、煩悩は消えない。OGは弁護士として活躍していてゴーストの弁護をしている。三人組の二人目はゴーストの息子だが親子の関係は冷え切ってる。三人目はゴーストの若い再婚相手に惚れてしまう。

基本的には下ネタで何も残らない話だ、という前説からスタート。今時のゴーストにまつわる物語を物語の骨格に、童貞3人組のヤリたいパワーに加えて女性たちはほぼ美しく色っぽくセックスが好き、というバカバカしさをエンジンにまわる舞台は、どんなにバカバカしくても、突き詰めて作り込めば圧巻のエンタメになるということの見本のよう。もちろん、新感線やナイロンなどの前例はあるから独創的かというとそうでもないわけですが、この小さな劇場でほぼ素舞台で演じることで、マンガのような雰囲気すら纏うのです。ゴーストをめぐる人々の濃さに負けないようにするためか、テレビドラマやアニメ、ゲームに至る濃いキャラクタをこれでもかと詰め込んでいくというのも成功しています。

女性たちも眼福だけではなくて、誇張していろんなタイプの女性キャラクタを用意して物語に組み込んでいます。美大志望の男口調だったり、童顔ないい歳とか、色っぽい年上女性、押しに弱い女、煽る女、美人じゃないけど男がハマってしまう女、有能だけどセックス至上主義とか。 とはいえほぼ全員がセックスが好きだというのはいまどきエロゲーがエロマンガにしかなさそうな感じなのはすごいっちゃあすごいのだけれど、まあこういう作品なのでそこをツッコむのは意味がないわけですが。

正直に云えば童貞三人のうち、友人の母親に恋してしまう男だけが物語のバランスの上ではほとんどほかの登場人物とのリンクが少なすぎるというきらいはあるのですが、意外なほど印象が薄くならないというのはたいしたもの。

童顔の美大志望を演じた森口美樹はたしかに年齢不詳さがぴったりな雰囲気で。押しに弱い女を演じた堂本佳世はぽわんとしてやけにエロいという造型にやけに説得力。助手を演じた杉村こずえは実は男役、かとも思うけれどそれでも納得なニュートラルな造型。前説に続き風俗の帝王を演じた三宅法仁はちょっと凄みもあったりしていい、敏腕弁護士を演じた園田シンジはキャラクタのばかばかしさで引っ張る印象。主役となる童貞男の一人を演じたKYOKYOは地味なへなちょこさから生まれる暴走する力が楽しい。柔道部に入って煩悩を断ち切ろうとした男を演じたGOも、戯画的な性的反応がおかしくて楽しい。

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2014.04.27

【芝居】「ラブストーリー」浮間ベースプロジェクト

2014.4.25 19:30 [CoRich]

クリエイターとともに育つ、と題した企画公園。 27日まで浮間ベース。1F/2Fの移動を含めて170分。

さえないオジサンはロックスターになりたかったのに悲惨な世界の前に平凡になってしまった。子供の頃からの女たちとのラブストーリーを振り返る。小学生の時は好きな子とからかってしまうけれど、女の子だって桜の下でキスしてくれた。高校生の頃は互いに想ってる女の子とずいぶん一緒に帰ったりもしたけれど、結局告白することはなくて、大学生になったら海でナンパした可愛い娘にはフラれてイキオイで冴えない女の子とつきあってみたりするけど結局別れてしまう。小学生の時の女の子と再会して同棲するようになったけど、些細なことや些細でないことのすれ違いは大きくて。家族ができた未来にはテレビのヒーローを演じてしまったがために家族がバラバラになってしまっていて。「単純明快なラブストーリー」
カレーが売りの喫茶店、店舗兼住宅に住む女。結婚もせず仕事に没頭してきた。ある日、常連客から味が変わったと指摘されたがそれに気づけなかったことにショックを受けて店を休むことにする。 若い時の恋人には彼への愛より仕事を優先してしまった。20歳で微妙な告白された男は友達だ。年上の彼氏にはいろんなことを教えてもらったし、行きずりの男と一夜を伴にしたり、自分を好きだと言ってくれる男を受け入れることができない「東京の空」。

駅からはぐるっと遠回りして、住宅地と倉庫が混在する町の小さな建物の一階二階を使っての芝居の二本立て。クリエイターのための場所、ということなのでしょう。

「単純明快な〜」は冴えない男だけどいくつかの恋と将来の愛がある、という体裁の物語。路面で大きな出入り可能な窓を持つ建物という立地を生かして、借景というか、ゴミ捨て場のような窓の外や施設前の道路を存分に使ってみたり、自転車を持ち込んでみたり花吹雪を散らしてみたりと、ライブ故の珍しさというかワクワクを軸にして見せていきます。

見せ方の企みに比べると、物語のパンチはやや物足りなさを感じるかもしれません。地味な男のラブストーリーを、というわりには途中ではその恋人となる高校生女子の大人の姿を結婚式の前日という場面を切り取って見せてみたり、ナンパの時の友達の描き方など、役者の人数と語りたい物語が必要としている登場人物の人数の差が見えてしまうのは散漫に感じられて惜しい。結婚式前日にしても、冴えない女の恋物語にしても部分部分としてはおもしろいだけにもったいない感じでもあります。

なによりよくわからないのは、高校生を卒業して女の子は東京に自分は地元に残ったはずなのに大学生のシーンではその自分がフった地味な女は田舎に戻ったことになっていてちょっとよくわからないアタシです。

「東京の〜」は30歳の女性、仕事そのものも、部下(バイト)がいるという立場で自立しているけれど、頼りたい甘えたいというひとりの女性の姿を、それまでの女性の生き方を重ね合わせてみせていくことで重厚な物語に仕上げていきます。休んだ店は再開にこぎつける、という点できっちり成長の物語になっているのも構造としてシンプルだけど美しいなぁと思うのです。

きっちりとした仕事をしているけれど、年下にだって甘えたくなることもある、昔の男に想いを馳せてみることもある、腐れ縁のような男友達はいるけれど恋にはならなかったり、行きずりの男と一夜を伴にすることはあっても、想いを寄せてくれる男に対して自分が寂しくても決してなびかなったりと、女がきちんと自分の意志で恋を選んでいるということの力強さが私の気持ちを動かすのです。

この物語の説得力は箱庭のようにさまざまに詰め込まれた一人の女のそれぞれのエピソードのありそう感はもとより、この一人の女を演じた浅野千鶴という女優の確かな力ゆえなのは間違いなくて、彼女にとってもマスターピースだと思うのだけどどうだろう。

や、なにより結婚できない人の話、というのはついつい自分に重ね合わせてしまって大好きなアタシです。劇中の彼女のようにモテるわけではないから重ね合わせるというのはちょっと違うもしれませんが。

正直にいえば、二つのフロアを移動させてという二本の構成にするべきだったのかは迷いどころという気はします。借景という1Fと、カレーを作るキッチンという2Fの場所の魅力は移動させたがゆえに両立できているわけですし、集客の効率という点ではプラスですが、移動させるだけで時間をくって結局全体の終演時刻が遅くなるというのは痛し痒しだと思うのです。

客入れ誘導を行っていた男性はこの場所の責任者かオーナーのようですが、実に細やかな配慮が行き届きしかも言葉の一つ一つに至るまでホスピタリティに溢れていて、環境のよくない客席だけれど、こういう案内されるなら我慢できちゃう、という不思議な力が印象的でした。

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【芝居】「ぺんぺん草」浮世企画

2014.4.19 19:00 [CoRich]

浮世企画の新作、芸達者を集めて20日までOFFOFFシアター。 115分。

東京の小さなアパートで暮らしていた夫婦。司法試験を目指す夫だったが、諦めて、起業するという。それは人の悩みに答えを出す、という仕事だった。
その仕事は当たったが、夫の生まれ故郷の小さな町に戻ってオフィスを作る家族の子供はずいぶん 増えた。ニートな男に発電士なる仕事を紹介して喜ばれたりしている。妻の弟はテレビのカメラマンでその様子を撮影したりしている。
部屋でチャットガールをする女、適当にあしらいながらも固定客がついていて、徐々に人気が出ている。あるいは大地主の老人は何をするでもなく、出かけたりして日々を過ごしている。この町の人々だ。
この町の町長は代々世襲で、今の町長はゆるキャラを作り町を売り出したいと発表するが、起業した男が、その税金の無駄遣いを糾弾し、町長選に出馬し、当選する。それには発電士の仕事を紹介して感謝していた男が現職の弟なのに寝返ったことも大きく作用している。 どこかの首長をモデルにしたような町長を物語の骨格に。頭の回転が早くて話がおもしろくて人気があって、しかも夫婦とともに、強烈な上昇志向があって、選挙で勝ったから好き放題で、格差からのし上がってきたけれど、それは敵をたとえば変化を怖がっていると攻撃してけ落とし、敵にならない他人は踏み台にして格差を残したままその階段を自分だけがあがっていく、という構図。そこには矜持が全くない。作家が感じた嫌悪感があからさまに見えて、わりと同じ意見を持つアタシとしては喝采を送ってしまうのです。

この嫌悪感を軸に据えつつも、それにとどまらず、いろんな人々を群像劇として描くのが実に見事です。 世襲を続けてきた旧体制の現職町長は見事に敗れ去り、あきらめきった日々を送る、弟の裏切りは忘れないけれど、たとえば寄り添い続けてくれた妻のことをはっきりと認識するという再起の物語だったり、あるいは小さな町でもネットでチャットガールとしての人気から新町長のイメージキャラクタの戦略に乗って芸能界というものがちらついて見えてくる若い女だったり、格差の中に押し込まれた人々だったり。

何よりすごいのは、大地主で昼間からぷらぷらしている元小説家の男、落語でいえばご隠居のようなポジションだけれど、もっともっと全体が見えているようないわば仙人のような描かれ方で、物語世界のリズムをつくります。「ネットがある現代は作家が嘘をつきづらい」という台詞がアタシは好きで、作家の実感なのだろうなと感じてその台詞が実に愛おしい。

それぞれの人々がそれぞれの信念に基づいて生きているのを切り取ってみせている、という説得力があるのは、芸達者の役者たちの凄さと、キレのいい台詞を書いた作家が紡いだ世界の両方がきっちりとそろってるからだろうなと思うのです。

発電士なるものの存在の嘘が物語の上ではやや宙ぶらりんな感じは否めません。なんだかんだいっても電力に頼らなきゃ生きていけないということと、原発という単語を使わずに内包してる危険性を描こうとしたのだと想像しますし、格差の下に押し込まれた者たちを描くことや利権の構図をコンパクトに描くことに成功してるのだけれど、全体のリアルの説得力があるがために、逆にこの嘘の異質な感じが際だってしまうというのは痛し痒し。

のしあがった男を演じた森啓一郎は「ひとたらし」そのものという造型が物語に説得力。負けた旧町長を演じた嶋村太一はちょっと惚けた中盤から復活に向かう後半の上がり方良くてそれでも終盤で弟を決して許せないというところの凄みが実にいいのです。 大地主を演じた村上航の飄々としたジジイぶりの破壊力が凄い。何でも知ってて、がつがつしなくて、こんな風に歳をとりたいなんて感じて。 旧町長の妻を演じた今城文恵は若い作家なのに長年連れ添ったやや諦めた雰囲気がいい味わい。対照するかのように新町長の妻を演じた鈴木アメリは上昇志向が強烈な若い女という雰囲気がいい。

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2014.04.22

【芝居】「あのっ、先輩…ちょっとお話が… …ダメ!だってこんなのって…迷惑ですよね?」シベリア少女鉄道

2014.4.19 14:00 [CoRich]

新米教師のクラスの生徒たちはいまひとつ云うことを聞かないため自信をなくしかけている。幼なじみの恋人は優しい時折泊まりにきたりする仲。もうひとりの幼なじみと三人で夢を書いたタイムカプセルを埋めている。高校生たちは、同級生の男の子に憧れたり、行きずりのように父親と同じくらいの歳の男と一夜を伴にしたり、密やかに恋心を抱いたりしている。 序盤の前振りとなる学園モノな恋物語、そのあとにノイズが紛れ込むあたりまでは圧巻に面白い。そのあとは大ネタではあるし、(進撃の巨人よろしく)圧倒的に強い力に立ち向かうか細いチカラの人々、ということを描く長さかもしれないけれど、物語がそれを生かしているとは感じられないので少々終盤が長すぎる感じ。そりゃ、アニメのあの躍動感を求めるのは無茶にしても、時間配分のバランスがあまり佳くない感じで、もっと出来るはず、と思うのです。

とはいえ、この構造を「迷惑」で括るというセンスはいいなと思うのです。終幕でひとこと、先輩たちの自由さは、ほんとに迷惑なのだ。というセリフが結構好きだったりします。

女優陣が実に可愛らしい。新米教師を演じた篠塚茜は、こんなにも大人っぽかったっけと思うぐらいに久しぶり。山のようなシーケンスをきっちりこなすのはシベ少の確かな戦力。 同級生に憬れる内気な女子高生を演じた川田智美はちょっと地味めで巻き込まれる感じが好きです。 その友人を演じた小関えりかはびっくりするほど顔が小さくて印象にのこります。 遅刻してくる大人っぽい女子高生を演じた岸茉莉はeplusの写真をみると可愛らしいのだけれど、ちょっと大人っぽさの造型が素敵。巨人になる三人は見慣れた役者で懐かしくて、それを逆手に取った仕掛けになっています。

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2014.04.20

【芝居】「まえのひ」川上未映子×マームとジプシー

2014.4.15 19:00 [CoRich]

川上未映子のテキストをマームとジプシーの作演が演出、という60分。セットリストは場所によって異なるようです。東京はGWに。

女は戦争花嫁であった、云いたいことが云えない、マッサージもっと強くというと、技術士を傷つける。「戦争花嫁」
何か先端、血とか。「先端で、さすわさされるわそらええわ」
おばあちゃん、明日は死ぬかもな。その「まえのひ」

一人芝居というよりは動きつつ言葉を話す。テキストを読んでいてそれが好きならばきっと楽しい気はするけれど、マームの作家だから、という気持ちで予備知識無しに行くと、手痛い感じがします。そもそものテキストを初めて聴くと音は美しいけれど、物語のとっかかりが掴めず。

川上未映子フォロアーではない人(=アタシ)、そもそも難解に感じる詩をのようなものを、リズムや音響でデコレートすることに意味はあるのかなぁ。地方公演だけれど、ツアーは劇団の強みのあるものを持って行った方がいいんじゃないか、と思うのだけど。

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【芝居】「エ☆パー三姉妹」ボクキエダモノ

2014.13 18:00 [CoRich]

ボクキエダモノの再演。13日までミラクル。85分。

旧家の三姉妹。長女と三女だけにはこの家に代々伝わるタマネギを頭に乗せると姿が消える超能力が備わっているが次女にはそれがない。自由奔放で昨日会ったばかりの男と婚約して家に連れ込んだにも関わらず、別れたはずの男装の麗人ともよりを戻そうとしている。自分ばかりが貧乏くじを引いていると思う次女。長女を巡って、婚約者と元恋人との諍いのさなか、能力が暴走して長女は姿を消したきり戻ってこなくなる。 ミラクルによく建て込んだなという和室。廊下はあるけれどその横にドアがあったりとちょっと不思議な空間になっています。

超能力を持っている姉妹の中に一人だけ使えない人が居る、という設定は時々みかけます(たとえば、これ)。物語はあるけれど、むしろ個々の役者の地力に頼って進める感じがします。超能力の発動はタマネギだけれど、そこに意味をつけられないのは惜しい。ヅカ先輩の登場の唐突感はあるけれど、むしろ彼女の場面が舞台のリズムを形成しているなと思ったりもするのです。

奔放にみえる長女の妹たちへの想い、しっかりものの次女がもつ寂しさ、三女はあくまでも可愛らしく。ヅカ先輩や婚約者の存在、本家の男への想いだったり、この不思議現象を語るリケジョだったりとそれぞれのキャラクター物語はあるものの、その先のもう一歩がほしいのは、正直惜しいなぁと思うのです。

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2014.04.19

【芝居】「神奈川県庁本庁舎大会議場短編演劇集」もじゃもじゃ頭とへらへら眼鏡プロデュース

2014.4.13 12:00 [CoRich]

神奈川県庁舎の公開に合わせて、元の本会議場(現在の大会議場)の演劇企画。県立青少年センターのマグカル(マグネットカルチャー)の一環。日曜昼の回は県知事を交えたトークショー付き。トークショーを除いて135分(各団体30分)。13日まで。。

「おっととったかとんぼ」(歌)、 鉛筆はボールペンに憧れ、消しゴムは消しカスの汚い先輩が面倒臭くて、のりはお道具箱から筆箱への移籍を夢見ている「文房具の気持ち」、 河でおぼれているところを河童に助けられた少女は乙姫の力で河で暮らすようになるが、汚染の進んだ河の怖さを感じた少女は人間に戻るといい「河童の太郎」、 ダンス「ちっぽけな勇気」(以上、あつぎ舞台アカデミー「ドリーム・ドリーム・ドリーム 出張版」)
土砂降りの雨で雨宿りのために屋敷に入った男女。この屋敷には吸血鬼が居るという噂があるが、なかなかだれが吸血鬼なのか正体を表さない。「吸血ディベート」(たすいち)
男子校。虫眼鏡は勉強、糸電話には彼女が居て、宇宙人はなかなか馴染めない。自転車は自分が何者かわからないし、小学校の同級生だった女子に久しぶりにあってちょっとトキメいたりもしている。「男子校にはイジメが少ない? Short Version」(趣向)
神奈川県庁舎のデザインコンペで入賞を果たした男。その屋根の突端部、実現はしなかったが元々は観音様を思わせる造形が施されているデザインだった。そのエピソードには若き日の彼の恋があって「黎明の少年」(もじゃもじゃ頭とへらへら眼鏡)

「ドリーム〜」は、厚木の雄、扉座の指揮・演出の一本。大勢の子供たちの出演で、迫力のあるダンスを軸にして、子供たちが思いついた物語の短編の芝居を交えていきます。ダンスは確かにちょっとみものなパワーがあって、それを大人数で統制がとられて、というのはそれだけで嬉しくなっちゃう感覚もわかります。正直にいえばアタシが期待していた小劇場的な芝居、というものとはちょっと違ったわけですが、確かにこれもどこかにはある演劇の形態の一本ではあるわけで、ショーケース公演という意味ではアリだし、行政が関わるイベントとしては小劇場ばかりというよりは、むしろ入ってる方が健全ともいえるかもしれません。

「吸血〜」は古い屋敷の密室にこの場所を見立てます。ディベートというよりはややホラーな感じで笑わせてという体裁。恋心抱くちょっとバカっぽい造型の女子、その相手、隅に座る少女と彼女に迫るロリコンな男、せむしな姿勢の探偵っぽい女、あとから来る男、退治屋の二人、という登場人物。吸血鬼の噂から誰が吸血鬼かを探すようになる中盤のあとに、吸血鬼になってもワクチンの注射で治る、けれど日本人だから十字架もニンニクも効かないというネタで笑いをとったりして進みます。 正直に云えば、隅に座り続けている少女がただ居るだけになっているのでここが本丸だということは早々に判ってしまいますし、囲んでいる客席に対していわゆるミザンスが確保出来ないのも惜しい。

「男子校〜」は女優ばかりで男子校の風景と、そのうちの一人の幼なじみの女子という構図。 元々は高校演劇用に書いた60-70分の芝居だと云います。 男子校にはイジメが少ないというのはまことしやかに噂されている定説 のようですが、喧嘩したりはしても引きずらずに仲直り出来る感覚だったり、自殺しようとする同級生が居てもちゃんと止める感じだったり。合間に世間のイジメによる自殺の事実を羅列していきます。 終幕、大学に合格した男と幼なじみの女が出会うシーンがその全体を、女子はその6年でずいぶん変わるけれど男子は小学校卒業からびっくりするほど変わらない、とラッピングが結論、かなと思います。 女子高生(大学生)を演じた原田優理子は髪をばっさりと切ったショートカットが眩しい。恋心を抱くがあっさりフラれる幼なじみの男を演じた大川翔子は中性的な魅力できっちり。宇宙人(エイリアン)と呼ばれる同級生を演じた清水那保は得意なキャラクタの作り方で、こちらもきっちり。

「黎明の〜」は、神奈川本庁舎のデザインコンペで入選した男( pdf)を巡るものがたりを骨格に据え、恋人のキャラクタを想像力で補った作り方。自由の女神よろしく、港に入ってくる船から見えるように塔の上に観音を置いた、というのはおそらく創作でしょうが、説得力があります。横浜生まれとしては、キング(県庁舎)、クイーン(税関)、ジャック(開港記念会館)のいわゆる横浜三塔(wikipediaの物語の一端を重ね合わせて嬉しい感じ。 行政が入って建物を使ったイベント、という意味では、この場所に対する敬意で物語を作るのは巧い作戦で、この場所でその演劇をすることの意味、ということを印象づけます。

終演後のトークショーは作家たちと、県知事、青少年センターの担当という構成。 この場所を使うことになった経緯だったり県知事の感想だったり、あるいは「マグカル構想」の話だったり。ハコモノよりはソフトを作ることが重要だということには同意するけれど、他県から観客を呼べるものを作る、という意味ではこのラインナップでいいのか、という疑問がなくはありません。この場所を使わせて貰ったという敬意は重要だしここに入れて嬉しいとアタシだって思うけれど、じゃあ県知事を持ちあげて、その場で何かを云わせてよっしゃ、ということを公開の場でする必要があるのか、ということは感じたりもします。(それは楽屋でやるべき話じゃないか、と思います。)

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2014.04.18

【芝居】「万獣こわい」パルコ

2014.4.12 18:00 [CoRich]

東京のあとの全国ツアーのスタートは 13日までまつもと市民芸術館から。 そのあと、新潟、名古屋、大阪、札幌、仙台、福岡、那覇。

古い喫茶店を改装してカフェを開こうとする男女は不倫だった。開店の前日、セーラー服の少女が逃げ込んで来た。店の目の前のマンションに監禁されていて、逃げてきたのだという。家族全員が監禁されていたが、毎年ハロウィンの頃になると、一人を互いに殺してきたのだという。
少女は保護され男は逮捕された。それから数年、喫茶店はぎりぎりなんとか営業していたが、二人の間に子供ができず女はノイローゼ気味になっている。そこに、あの少女が現れる。優しそうな養父に引き取られているが、電話に出ると豹変して暴れ回る。やがて、それを操ってるのは監禁虐待を受けたはずの少女ということがわかるが、そのときには少女と養父が家に入り込んでいる。あの監禁のように、少女の気分ひとつで序列がつけられていたが、もう誰にも逆らえなくなっていた。

ネタバレです。

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2014.04.12

【芝居】「きゅうりの花」ハイリンド

2014.4.6 18:00 [CoRich]

水下きよしの急逝により、扇田拓也の演出で。下北沢に新たにできた本多劇場グループの劇場、「小劇場B1」のオープニングでもあります。110分。出産を経て出演に復帰した、はざまみゆきがが揃い、ハイリンドの役者の久々の揃い踏みもうれしい。MONOの土田英生の名作を(1)。

これといった観光地でもないきゅうりが名産の町。 地区センターの一室。東京にでて結婚したが失業して地元に妻を連れて戻ってきた男、30すぎても独身で近くの市に出かけてはお見合いパーティを続ける男は、離婚して出戻ってきたスーパーの娘に恋心を抱いている。完全無農薬で農業を営む男は農協に入らなかったり小難しい理屈をこねたりする。若い男はこの地区センターで陶芸教室の講師だ。隣の町の町おこしがうまくいってるのを見て、ここでも何かしよう、ということになり、会合を開くが、次期町長になろうと考えている年長の男はこの町に伝わるイエイエ節を現代風にアレンジして振りをつけて、都会で踊ろう、と言い出す。

中央に舞台、二つの辺に客席があるL字の空間は、楽園に似ていますが、それよりはずいぶん広くて舞台に柱があったりもせず、見やすい劇場です。

小さなコミュニティの人々を描くと圧倒的に巧い土田戯曲、過疎や限界集落というほどでもないけれど、ぱっとしない田舎のコミュニティを描く今作も例外ではありません。 田舎を自覚し、町おこしに成功した隣町に焦りつつも、よそものからこの土地のことを悪く云われると結束する感じだったり、家族にふと漏らしたちょっとした不満がばれた時の手のひらを返すかんじとか、あるいはそのよそものとして、この土地に妻としてやってきて、一人で居続ける辛さとか。コミュニティの持つ同調圧力がさまざまな形で濃密に、まるでショーケースのように示されるのに同感したり、どこか思い当たる感じがあっったり、あるいは大笑いしたりと楽しく、時に身につまされたり。★★★

元々は地元の民謡だった「イエイエ節」を現代的にディスコ調にアレンジとするという感覚の古さは、ふた周りする距離感で、この文脈でゆるキャラという単語が出てこないのは戯曲に忠実なのだけれどやや違和感があるのは、現代劇の難しさ。かといってそういう細かい手直しをすべきなのかというのもこの絶妙のバランス感のある戯曲の中では難しい。 初演の振りどうだったかすっかり忘れてしまったけれど、終幕で見せる喪服での踊りは、亡くなった人がいても生きていくということ。今作での踊りはどちらかというとヨサコイな風味で、結果的にはとても今の雰囲気なのです。

変わり者を演じた伊原農は偏屈さなんだけれど、地元で幼なじみの会話で急に人なつっこくなって可愛らしく、Uターンで戻ってきた夫を演じた多根周作は、地元の同調圧力と妻との板挟みのトホホ感がちょっといい。その妻を演じた枝元萌の精一杯に溶け込もうとする感じに同感しちゃう。地元の出戻り女を演じたはざまみゆき、それに恋心を抱く男を演じた山口森広の二人の絶妙の距離感のシーンが好きです。

正直に云えば、あきらかに操作卓のある側の客席が正面という演出になっているのが気になります。最前列とはいえ、反対側の客席の端からでは、役者が一直線に並んで見たりと見えないシーンがいくつもあってややフラストレーションがたまります。もっともカーテンコールから戻る役者たちの表情がみな見えるのはうれしかったりもしますが。

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【芝居】「想稿 銀河鉄道の夜」 Ort-d.d (「ケンゲキ! 宮沢賢治と演劇」

2014.4.6 15:00 [CoRich]

宮沢賢治と演劇、と題して「銀河鉄道の夜」など5演目を交互上演。今作は北村想による高校演劇テッパンな定番の一本。アタシは初見です。90分。13日まで、こまばアゴラ劇場。

理科の授業。銀河についての話から宇宙人は居るかについて、天文学者は居るかもしれないというが、生物学者の立場を取るこの授業の教師は確率的にありえないと言い切る。今日は星祭りの夜、ジョバンニは母親のミルクを受け取りにでたはずだったが、カンパネルラと共に列車の中に居た。信者じゃなくても人は等しく天国にいくという話を尼としたり、必要経費と税金に頭を悩ます考古学者や、鳥捕りに押し葉になった鳥を貰ったり、氷山にぶつかった船で命を落とした少女とその家庭教師の話を聞いたり。 やがてみな切符を持って別の列車に乗り換えるが、ジョバンニはまだだといわれておいていかれる。

基本的には銀河鉄道の夜の物語。ややスノップの匂いしつつ、ビックバンや相対性理論といった最近の知識を織り交ぜながら物語がない交ぜに進みます。宇宙人は居るのか居ないかの話題を天文学者と生物学者の意見の対立、かと思えば節税対策の話とか、生きていることはどういうことだったとか、死ななければならないこととか、さまざまに飛び回る物語は重いものもあるのになぜか軽快でもあって、なによりセリフの言葉が美しくて、心地いいのは、昼に呑んだ酒のせい(笑)ばかりではありません。

舞台には長いテーブル、七つの椅子。テーブルは食卓らしく、瑞々しい果物や野菜が彩られています。よくみると、鉄道模型の線路も載っていて、時折室内灯をつけて闇の中を走るのは物語に対してズームアウトした画になっていて面白い感じがします。

ジョバンニを演じた代田正彦は不器用な造型が得意で若くはない役者ですが心なしか顔も身体もすっきり爽やかな印象が意外(←失礼です)。カンパネルラを演じた八代進一、優しくて凛としている造型が 功奏していて印象に残ります。宮沢賢治を思わせる男を演じた小林至はほどよくオジさん感で頭が痛いと訴える男だったり車掌だったりと楽しい。 教師を演じる舘智子は意外なほど、といっては失礼だけれどご婦人、という造形が新鮮。かとおもえば、鳥捕りだったりとダイナミックレンジがいい。藤谷みきは「アーメンの人」や舟に乗れず沈んだ少女はじめ美しい役もいいのだけれど、六尺の大イタチの話から風呂敷広げる感じからの混乱を抑えようと焦るのがどこか可愛らしくて好きなアタシです。

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2014.04.11

【芝居】「はるヲうるひと」ちからわざ

2014.4.5 14:00 [CoRich]

2009年初演(は今は亡き、トップスでした)の再演。 13日までスズナリ。115分

売春を生業とする島。四人の女たちの居る売春宿。この宿の持ち主である男、その腹違いの弟と妹も居るが、妹は売春出来ない身体で奥に引きこもっている。客はまばらだ。腹違いの弟と妹に対しても、四人の女たちに対しても兄の仕打ちは容赦がない。女たちはこの島を出て行きたいとは思っているが、そのアテもない。性病の恐怖、何をしても這い上がれないと女たちは諦めている。 初演と一人を除いて同じキャスティング。いつものとおり、アタシは記憶力がザルなので新鮮に(笑)。 5年たった女優たち、それなりに弛み、それなりに熟して。というカラダの線を見どころ、というのは 少々失礼なことを云ってる気もしますが、単に若くてピチピチ、というばかりが色気じゃないと感じるのは自分も歳を取った証拠ということを再確認したりも。

初演との一番の違いは、主宰・佐藤二朗の知名度が飛躍的にあがったことで、テレビや映画で見かけることも多くなり重要なバイプレイヤーになっています。そのおかげか、客席もわりと豪華だったり、あるいは佐藤二朗目当てとおぼしき客がロビーで嬉しそうに挨拶してたり。なんせ「休むに似たり」の二朗です。小劇場に帰ってきてくれた、という感覚のアタシは素直にうれしく思ったりします。

野口かおるは他の芝居でよく見る暴れん坊の印象の方が強い役者ですが、静かに泣き続けるような役の細やかさが魅力。笹野鈴々音のセックス好きだったり、外国人とのラブラブな感じだったり。子供にみえてこういう奔放さはこの役者の得意とするとこで安定感。得意といえば太田善也のやや空気読めない感じで時折鋭い外国人というのも圧巻の安定感。全体的に重苦しくなりがちな話だけに、オフビートに観客の空気を和ませるこの役によって生まれるリズムは見やすさにたいして重要なのです。 四人の中ではリーダー格の女を演じた兎本有紀は女たちを守る気持ちにみえるけれど、それは女の幸せの最後のチャンスをどんなにみっともなくても掴みたいという気持ちの切実さにアタシの気持ちが動かされます。 何より、今藤洋子なアタシです。アタシが観るような芝居ではなかなか観られなくなってきましたが、彼女を不舞台で観ることがとてもうれしいのです。さまざまな気持ちだったりな細やかさ。他の人々が抱えているような物語が彼女には少ないのだけれど、ツッコんだり、コミカルだったりと物語をドライブする確かなちから。

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2014.04.05

【芝居】「美しいヒポリタ」世田谷シルク

2014.3.30 18:30 [CoRich]

2010年初演の4年ぶり再演。3月31日まで吉祥寺シアター。125分。 ネットと現実を描いた舞台はそこそこありますが、 「夏の夜の夢」(wikipedia)に着想を得ながら、現代の真夜中を、携帯電話の電波が届かないブラックアウト で描き、夜の夢のような不思議な出来事をネットコミュニティだかゲームだかの仮想空間に 置く、着眼点のおもしろさは健在です。 もちろん、世田谷シルクの美点である古典と現代劇とのハイブリッドな感じや、オフィスという場所の説得力ややけにIT業界用語に詳しいということも実は好ましいなと思えるところ。

劇場の規模が格段に大きくなったことにはいいことと悪いことの両方があります。舞台の広さが大きくなって、世田谷シルクが得意なダンスの幅が広がったり、映像が格段に見やすくなったりということ、あるいはある程度の規模がある会社のオフィスという説得力が生まれます。反面、原作故な点はあるにせよ、役による人物の大小があるのはいたしかたないとはいえ、役者が増えたことによってその落差が拡大してしまったのはやや残念。

バイトリーダーとヘレナを演じた前園あかりはあんなにもかわいらしいのに報われず、想い続けることに切ない気持ちを掻き立てられるのはアタシの何がシンクロしたやらですが、役者としての安心感は格段に。社長の弟とディミートリアスを演じた安藤理樹との二人のシーンは格別で、シーンとしては一夜を伴にして尻尾を振ってなついている女を罵倒するというひどいシーンなのだけど、この物語の軸になる説得力。

結婚する女・ハーミアを演じた東澤有香はイヤミだけどモテる説得力、 厳しいお局を演じた武井希未のツンデレっぽさもいいけれど、夏夢としてはこれはどのあたりの役かはいまひとつわからず。 社長を演じた岩田裕耳は優しさが全面に滲むような造形の安心。 パックを演じた荻野祐輔は初演の堀越涼の印象が強すぎるアタシには少々分が悪いけれど、 いたずらっぽさは減って優しさが残る印象。

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