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2014.03.19

【芝居】「ヒトミ」キャラメルボックス

2014.3.14 19:00 [CoRich]

約十年ぶりの三演( 1, 2)。 23日まで、サンシャイン劇場。「あなたがここにいればよかったのに」との交互上演。120分。 (1) 事故で全身不随になった女。恋人には一方的に別れを告げて自棄になっていた。入院している大学病院で開発されたハーネスという装置のテストに参加することになる。切れた神経をバイパスし脳からの指令を筋肉に伝える装置で、懸命のリハビリの甲斐あって、体が動くようになるが、目標だったはずのピアノには向き合わない。ある日ハーネスの欠陥が発見されると、女は親友の経営するホテルに向かう。

まだ芝居見始めの頃に観たキャラメルボックス、確か二本目がこれの初演、坂口理恵主演でした。 その前のスケッチブックボイジャーとの振り幅の広さに驚いた、というのは初演の時に書いた感想を もう一度読んで思い出したわけですが。あの時のダー泣きな気持ち、それは小川江利子の再演でも 変わりませんでした。

が、三演めとなる今作、物語の流れをわかっているからか、泣くというのとはちょっと違う、もうちょっと違う遠さから芝居を観ている自分に気がつきます。劇団の強力なホスピタリティも、物語の強さも 役者の確かな力量だっていつものとおり、 アタシにとってのマスターピースだということは変わりません。

どちらかというと、あんなに若手だった役者たちが こんなにも、というまるで親のようなアタシの視点。記憶力のないアタシは、 初演再演と比べてどう、ということにいちいち気づけないのですが、 劇団を観続けていて、物語も役者たちにも気持ちが近く なってしまうと、こういう感情が起こるのだということに初めて気がつきます。 宝塚にハマる人が云っていたのは、こういうことかと。それだけの劇団の厚みもちつつも、 あくまでも劇団としてはポップでアリ続けると云うこともまた安心感なのです。

フィードバックがなく指令を片方向で伝えるだけで感覚が脳には伝わらないというハーネスや、 寝たきりという設定をあえてベッドを使わずに椅子でシンプルに表現することなど、 設定や演出の面白さというのは何度観てもいいなと思います。

実川貴美子は今までのヒロインとは違う造型に。身体が動かない、リハビリしていることの説得力はそのままなのに、軽やかさを感じさせる仕上がり。初めて立ち上がり、バランスを崩しそうになる時の慌てる 感じから、足の上に腰が乗り、背骨が立ち上がり、胸を張ったときの美しいかたちは二回目の同じシーンを 観ても惚れ惚れします。初演のヒロイン、坂口理恵の出番が少なめなのは悲しいけれど、短い時間の 中で心配すること、母親、でも仕事を持っている、ということの距離の作り方の解像度が高い。 親友を演じた渡邊安理は天真爛漫さのキャラクタが巧く機能。スーツがほんとにカッコイイ。 初演では親友を演じた岡田さつきは、コメディーパートを一手に背負う掃除のおばちゃん役。 元々の役がそう書かれているのだけれど、ちゃんと安定して笑いを取るということは誰にでもできることではありません。恋人を演じた多田直人は得意なやんちゃな造型を封じられている役だけれど誠実さだってきちんと伝わることを再発見するのです。

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