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2014.03.30

【芝居】「緑子の部屋」鳥公園

2014.3.30 14:00 [CoRich]

秋葉原にほど近い小学校を改装した施設、3331 Arts Chiyodaでの上演。3月31日まで。65分。

亡くなった女の兄に呼ばれ、女の昔の恋人と、女の学生時代の友達が呼ばれて酒をのんでいる。そういえば女は、学生の頃は虫を飼っていて、ほかの女性たちとつるむということをしなかった。 恋人の家に引っ越してきた時に、ミシンを持っていて、それが実家の食肉工場ににているということをいっていた。女は虫の観察日記をつけていた、餃子をたくさんつくっていた。 アヤが屋上を半狂乱で走っていたのをみたが、これはやばいと思った。

男2,女1の三人の俳優、白く塗られた長方形の空間にL字の客席、短辺側にスクリーン、長辺側にテーブルなどからスタート。絵本の中の二人の女の姿、を語る男から、(登場しない)緑子の兄の部屋へ。亡くなったらしい緑子が出せなかった年賀状の二人の友達を兄が部屋に招いたらしいシーン。どこか美大生っぽさを感じさせる、虫を飼って観察日記書いて我が道を行く感じだったり、ミシンを使わなくてもその動くのを面白がったりする感じだったり、どこか虚言癖だったりとどれが嘘なのか、どれが過去なのか始終境界をあいまいにしたまま進みます。虚言には子供のころの強烈な体験という理由があることもちゃんと語られますが、正直にいえば、全体がうっすらしていて、ちょっとわかりにくい。

3章めにあたる部分は緑子が書いた、虫の観察日記の体裁だけれど、虫に自分を模して俯瞰で書いたような日記だと読みました。その外側にある自分の噂話を混ぜた場面を挟んで、あきらかにイジメられているという描写の怖い感じ。 女子的な文化を否定する感じとか。興味なくても同調圧力に屈しないままに一人で居続けること、 それがつまりイジメにつながるわけですが、イジメる側にしても、自分にも当てはまる単語が 悪口のレパートリーに加わると、笑えなくなる、というのイジメの恐怖の現場の肌感覚なのでしょう。 それは中国人であること、すでに三世で日本人の気持ちだけれど、 そこからつながる食肉工場の家ということ、差別的なこと、それを意識させること。 あるいは、男が別れる理由に挙げたときの容赦なくムカつく瞬間、 殴る側の論理も展開させるのは淡々とした語り口だけに怖いのです

作家の頭の中の問題意識の発露、それは(少なくとも私にとっては)整理されないままお店を広げるように 世の中一般で考えられているタブーに近い部分を切り取って並べているように感じられて、 観ている最中は作家の切実さがもう少し感じられたらと思っていたアタシです。 が、こうやって書き連ねてみると、何も外国人とか食肉工場とか、あるいはイジメといった一見 極端な話題ばかりでは無くて、たとえば女性が男性を怖いと感じる瞬間を追体験させたり、 男が正論を述べても女は納得できなかったり、あるいは触れられなくなった女が苛ついて男の 浮気を疑ったりと、どこにでもありそうなシーンにこそ切れ味がいいシーンがあるように感じます。

餃子を作る、ということによって匂いの体験や、舞台奥の角からあっというまに洗濯物っぽいものが飛び出してくるという演出は舞台ならではですが、正直にいえば、アタシの観た日曜昼は、雨ゆえに湿度が高いからか、匂いはそれほどでもなくやや残念。つきあったことになった体裁もちょと幸せな感じに着地するのがいい。

正直に云うと、こういう施設で上演される、どこかT/PAMに出てきそうな感じの上品な というか、税金使ってる感じの上演があまり得意でないアタシです。まあ、それは好みの問題なのですが。

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