【芝居】「40 Minutes」TABACCHI(チョコレートケーキ×JACROW×電動夏子安置システム)
2014.3.22 19:00 [CoRich] [CoRich] [因幡屋ぶろぐ]
サムライを統一テーマに三劇団が40分ずつ公演、観客の投票によって優勝者に賞金という企画。23日まで、 スクエア荏原・ひらつかホール。
太平洋戦争末期に海軍が開発した特攻人間魚雷・回天の開発中、開発者の一人を含む二名が回天に閉じこめられたまま、海底につきささって身動きがとれなくなっている。狭い艦内で迫り来る死を前にしながらも、この事故で開発が止まらず、この兵器での特攻が始まるように
冷静な日誌を残した。「◯六◯◯猶二人生存ス」(劇団チョコレートケーキ)
電力会社の管理職にもかかわらず、ホテル街に立ち男に声をかける毎日、しかも毎日四人というノルマまで課して。殺されてしまうが、劇作家はその被害者の女に興味を持つ。「刀と天秤(はかり)」(JACROW)
5人の議員でやっとこさもっているが、政権にすりより与党となり、大臣も一人出しているものの、失言続きで危うくなっている。その党の事務所。大臣が別の大臣の公用車と衝突事故を起こすが、溝の深い相手だったことから、故意につっこんだのではないかという疑惑も起きている。
目撃したという男が現れて。「召シマセ腹ヲ」(電動夏子安置システム)
チョコレートケーキは史実を多少の想像力で補いながら緊張感一本槍で濃厚に描ききる一本。戦争末期を生きた軍人のまっすぐな気持ちをそのままに描き、終戦を知るもう一人を配することで作家の視座をきちんと提示する一本。史実だけに絶望の結末を知るものには、40分はあまりに長く苦しいのも事実なのですが、観客の息苦しさを意にも介さず濃密なまま描ききる力なのです。
JACROWも実際の事件を描きます。いわゆる「東電OL殺人事件」の被害者をサムライになぞるのはさすがに少々無理があるのと、作家の興味や疑問という以上の何も提示しないままです。しかも法廷ですら真実が確定していない事件の被害者である彼女への冒涜にすぎるのではないか、というアタシの友人の言葉に賛成します。これでは週刊誌と何も変わらないし、生身の人間を扱う演劇としては少なくとも少々配慮がなさすぎるのではないか、と思うのです。被害者を演じた蒻崎今日子は着替えも舞台上ですることで、セックスにまつわる題材と生きていた人のこと、という説得力。高嶋みありは若い役者だと思いますが冷徹(に見せている)母親の怖さが滲みます。
重苦しい話が二つ続いたあとなので、電夏は得をした感じではあります。こちらもサムライ、という題材は手榴弾を持った彼か、あるいは公用車をつっこませた大臣かあたりに投影したのでしょうか。コメディだし、確かに客席は沸くし、三本の中でみると、どうしても重い気持ちよりは楽しい話に票を投じたくなる気持ちは、わざわざチケット代を払って観ている以上よくわかります。 嘘を一つだけ、というロジックめいた感じはわくわくするのにそれをあっさりうっちゃるのはどうなんだろとか、いろいろアラはあるのですが。
劇場の大きさがこのラインナップでは少々厳しい感じもします。共通で使われる装置をそれぞれに工夫したりするのはいい感じですが。
正直テイストも向き合い方も違う芝居で、しかもなにを評価すべきかのガイドラインを明示しないままの順位付けには意味がないどころが害にすらなるのではないかと思い、投票はしませんでした。笑えればいいのか視点の鋭さなのか、史実を淡々と描くことをよしとするのか。評価軸は何であれ、一位をととったところはいいでしょうが、そのほかの団体はたまったものではありません。まあ、劇王とかでも感じることですから、ここだけの問題でもありませんが。そういう意味ではショーケースに徹する15minutes madeの見識はたいしたものです。
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