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2014.02.21

【芝居】「緑ノハネボキン」MACCA

2014.2.16 14:00 [CoRich]

わりと高い頻度で公演していてわりと気になっていましたが、アタシは初見です。大雪に見舞われた週末ゆえに東京に出られず、自分の予定に無かった松本での公演を。16日までピカデリーホール。90分。

あんまり良くなってない国。自動車産業と酪農、募金ぐらいでしかまともに暮らせなくなっている。
モーターショーで展示されていた高価な最新型を盗んだキャンギャルの女。盗まれてクビになった管理職。
田舎の高校生、グラビアでみた女に会いたいという親友のため、酪農で儲けている男からだまし取ってでもその夢を叶えたいと奔走する。
海外から日本のスターを楽しみに来た女、しかし持ってきた金はあっという間にだまし取られてしまう。

コントかと思えばがっつりエンゲキ。経済としても駄目な感じになっている筈なのに、カネのあるところにはあるという格差を社会派として描くかと思えばさにあらず。なんだろ、カネは無いし、夢はわりとしょぼいし、だまし取ったり取られたりはしてるけれど、登場人物たちがやたらに明るいのです。 経済的にあまり良くないけれど、わりと陽気なラテンな感じすらする国の人々を巡る物語。やることの定まらない先行きのわからないけれどささやかな夢はある高校生、芸能人に会いたくて来日したけどカネを失い路頭に迷うカタコト外国人、超高級車なのにオヤジというOYG3000を盗んで金儲けを企むやさぐれたキャンギャル、盗まれて路頭に迷う管理職と理不尽にクビを宣告する女部長、この国の経済を支える数少ない産業となった酪農で国を変えようと考える純朴な酪農家。決していい環境じゃないのに、未来に希望だって持てないのに、少々小ずるくしてでも前向きに生きている、という感じの人々。

ショートコントのような細かな断片が組み上がっていって人々を点描する感じで、大きな物語をくみ上げるという感じではありませんが、断片が収束している感じなには楽しい。細かく組み込まれた会話や笑いが客席の大きな笑いに繋がればいい味になると思うのだけど、劇場が大きすぎるせいか、今ひとつ伝わらない感じもあってどこかもどかしいのです。 終幕、 人工知能と外国人のカタコトな日本語が爆弾を爆発、少しばかりの余韻を見せつつも 物語をすぱんと切り落とす感じなのは潔い感じすらして、わたしわりと好きだったりするのです。

キャンギャルを演じた野中毬菜がやさぐれた感じといい、ウシの一芸といい、(アタシがオヤジだから)眼福な感じといい、目を引くだけでなく、きっちり物語を運びます。 主宰、おちやいたかしの、シャイなオヤジ造形が楽しい。 篠原主任が演じた中学生ぽい造形の高校生は関西弁もうまく機能していて、序盤で雑誌を読みふけったあとに中途半端な方言ギャグをした親友に突っ込むあたりが好きです。もう独りの高校生を演じた川居たかしのはじける感じはこの二人の友情の物語をドライブする感じ。 酪農家を演じた本沢誠はしっかりと安定感。クビになった管理職を演じた大久保げんてんは不安に溢れる感じも、キャンギャルに手を出しそうなオヤジな造形もちょっといい。首にした上司を演じた大澤祐子は上から目線がいい感じ。海外から来た女を演じた落合陽子はキャラクタの設定に苦労する感じはあるけれど純粋さも垣間見える造形で好演。

松本のエンゲキ事情として、ピカデリーホールが少々大きすぎて、その下の信濃ギャラリーとの間を埋めるちょうどいい劇場がないのですが、この公演だとその間が欲しい感じがします。東京だったら駅前、王子、アゴラといった規模感。声量はあってもこのテンポが必要なセリフをどう伝えるかが懸念という感じがします。たとえば同じ物語をラジオドラマ風に聴いてみたい感じはします。もっとも高級車OYG3000な出落ち感はそれではわからないわけですが。

終演後は客出しを兼ねて劇場前で役者たちのダンス、というのはちょっと面白い。もっともこの大雪、人通りもクルマすら少なくてやや空回り感はありますが、劇場の中から外にアウトリーチする心意気は楽しい。

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