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2014.02.12

【芝居】「春の遭難者」B.LET'S

2014.2.9 14:00 [CoRich]

2010年初演、同年に劇作家協会新人戯曲賞の最終候補作の一本。アタシは初見です。 12日まで「劇」小劇場。115分。東京が大雪に見舞われたこの日に雪とか遭難という巡り合わせも印象的だったりします。

田舎の山にある家。都会から移住してきた女4人が暮らしている。女たちは性犯罪の被害者で普通に暮らせる生活を求めて、知り合いの居ないこの土地に越してきている。近くの雑貨屋から配達に来る女は、突然の春の大雪で帰れなくなって泊まることになる。
今日は住人の一人が起こした裁判の判決の日だったが、被告の男に執行猶予がついたうえ、判決のこの日になって裁判員の一人が被害者の女の知り合いだとわかり、控訴する気力も失せていて、激励会となる筈だった家の中の空気は微妙になっている。
春の大雪、吹雪の中、意識朦朧となった男が家に入ってきて、倒れてしまう。配達の女はこの男を救わなければならないと訴えるが、4人の女たちは男を救う気にはなれない。頭では救わなければいけないと思っているが、恐怖が先に立つ。私たちは救われなかったのに、なぜ救わなければならないのかに折り合いがつかない。

性的暴力の被害に遭って、男そのものに恐怖心しか抱けない女たちの目の前に現れ、倒れてしまう男を救うかどうかというある種の「正義について」考えながら進む物語。物語として描くことには相当な配慮が必要な題材だけれど、当日パンフによれば女性である作家は「使命感にも似た気持ちで動かされて」書いたのだといいます。

この重い題材を選び、芝居として成立させるという心意気や書き切った力量という時点でたいしたものです。が、正直に云えば、4人居る女性たちが思ったほどにキャラクタのばらけ方というか幅や奥行きが広がりません。とりわけ、物語の大きなポイントとなる、男を救うか同感会話に対して、配達の女とそれ以外となってしまうのが残念なのです。あるいは、4人対1人の落としどころを論理ではなくて、逃げ出した1人を皆が探す、といううやむやな感じだったり、 それぞれの物語を語らせている割には4人である物語を運ぶの上での意味が感じづらかったり(コミュニティが形成できる人数という必然はもちろん理解した上で)します。結果として上演時間に対して物語が転がらないというか中弛みを感じるところもあるのは残念な感じが残ります。

舞台上手側にも椅子を置いて「劇」小劇場としては珍しいL字型の客席。こちらも正直に云えば、もともとの客席に対しての演技という演出になっているのはやや残念。もっとも、そのおかげでいくつものシーンでオフショットだったり、対峙する会話の一方と同じ視座になったりという楽しみはもちろんあるのですが。

女性が抱えていた恐怖が癒えていったり、それまでは閉じこもり閉鎖的であったところから、一歩踏み出していくという幕切れの雰囲気は好きです。ほぼ倒れてるシーンとなっている男ですが、終盤に至りちょっと可愛らしい感じに描いているのもいいのです。

惜しいところばかり書いてしまった感じはあるのですが、しかしこのテーマだし、作家が誠実に物語に対して向き合っていると感じさせる舞台を観ると、なんかその真摯さに打たれるのです。なので、ついついまた観てしまうコトになるんだろうなぁとおもったりも。

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