【芝居】「許して欲しいの」(A) 競泳水着
2014.2.22 14:00 [CoRich]
劇団十周年記念第二弾は特別公演として、一つの物語を劇作家・役者という二つの座組で交互上演する80分。アタシが拝見できたのは、劇作家版の(A)です。
少女漫画家。自分の体験に基づく話ししか書けない上に、こもってばかりで完全に煮詰まり、編集者とのセックスやらネットで無駄な時間が過ぎていく。会社員の妹はアシスタントというだけではなく励まし、時にアドバイスもしているばかりでなく、自分でもマンガを描きためている。それに目を付けた編集者は妹をデビューさせてしまい、姉は全く書けなくなり、行方をくらまして原稿を落としてしまう。
姉は仕事のないまま一年が過ぎるが、そんな姉の元に若い男がアシスタントになりたいとやってくる。旅に明け暮れて描く気配のない姉を無理矢理少しでも描かせるが、編集者の評判は芳しくない。ある日送られてきたメールの差出人は、家を出た母親の再婚相手との娘からだった。
どうにも書けないで苦しみ、自信がなくて男とみればすぐ寝てしまう女の作家、色気というよりはセックスを消費して時間を潰している感じだけで押し切るかと思えばさにあらず。
ゲイの男をアシスタントとして同居させるというのは実に巧くて、ここでスパッとセックス依存な香りを断ち切るのです。
セックス至上主義、という感じだったり、 階段を駆け上がるようにあれよあれよと人気が出てしまう書ける作家だったり、 自ら表現することを諦め、表現させるサポートという道を選ぶということだったり、 表現する技術も欲求もあるのに表現することが見つからないということだったり。 あるいは、表現と云うことに対してニュートラルであることだったり。 作家の私生活はもちろん知る由もないし、作家のパブリックイメージがわからなかったりはするけれど、 どこか、この作家たちのアテ書きという風情のある性格付けの登場人物というのが楽しい。
作家を特権的なものとして描くのではなく、同じフィールドで(元、も含めて)表現するものたちの様々な類型をならべ、 表現者でないのは一人だけというのは良く考えればかなり特殊な状況です。 が、人数が少ないこと、この作家としては珍しく漫画家の作業部屋という一カ所での物語に絞り込んだことで、この特殊な状況でも違和感がないのです。それでも、最後に投入される(表現者ではない) 「普通のひと」がいること、それも表現者に囲まれてもファンだとは云いながらも物怖じしないある種の図太さを持ったキャラクタを置くことが巧く機能していて、物語に起伏を与えていると思うのです。
あるいは表現者をめぐる社会的な問題もさまざまに。人の作った物を自分の名義で発表するかどうかという矜恃のこと、あるいは映像化した場合の原作者の思いが伝わらないままに商業ベースに乗ってしまうことに対する忸怩たる思いもきっちり織り込まれているのです。
姉の漫画家を演じた名嘉友美は、セックス至上主義みたいな序盤から、表現者としての矜恃まで、清々しさすら感じさせる造形が美しい。 人気が出る妹の漫画家を演じた根本宗子は、苦しさを見せずに軽々と表現を作り出すにもかかわらず、きちんと作りだした物への想いが込められているから映像に抗議するという誠実さが似合います。 編集者を演じた糸井幸之介はある種上から目線だけれど、浮気もしちゃうし駄目な感じ、さらには過去の挫折だってきっちり織り込むオジサンな感じが実にいい味わい。 表現者でない女を演じた藤吉みわはニュートラルさがぴったり合う感じ。 書けない作家なのにアシスタントをしている男を演じた竜史は、若い男にある種特有な、根拠も内のにどこか妙に自信に溢れている感じが眩しい。
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