【芝居】「少年の日の思い出」こゆび侍
2014.1.18 16:00 [CoRich]
多くの教科書に取り上げられているというヘッセの原作に忠実に舞台化。65分。19日まで新宿眼科画廊。
学校では昆虫採集が流行っていた。少年は昆虫と標本のことばかり考えて勉強が手に着かないほどで親も先生もそれを苦々しく思っている。近所には教師の子供で裕福で昆虫にも詳しくて標本づくりもその手入れも完璧な同級生が居る。
その同級生が、ある日珍しい蛾の羽化に成功する。それをひと目見せて貰おうと家を訪ねるが留守で、好奇心には勝てず展翅台の蛾を目にし、触って壊してしまう。
昆虫をモチーフにした芝居が多い作家。今作はヘッセの原作で人間の物語だけれど、昆虫に夢中となった小学生の切ない物語を丁寧に描きます。友情だったり信頼ということだったりを描くのはさすがに教科書にも多く取り上げられているというジュブナイルな感じ。
昆虫というもので対等に盛り上がれる二人。優等生は何にでも優れていて昆虫の扱いだって。裕福で機材だってたくさんもっていて。しかし、昆虫に対する熱意や知識は抜きんでている二人はそれぞれに敬意を持っているところもあって。もしかしたら親友にだってなれたかもしれないのに、好奇心とわずかな不注意とで一瞬にして軽蔑に変わりもう決して許してもらえないのです。たかが昆虫だけれど、友人から軽蔑されたという想いはおそらく一生消えないほどの重み。
蝶などの昆虫を黒板に見立てた大きな黒い板や、黒い立方体にチョークで描くという演出。大量に並べてある感じや、手にとって持ち歩く感じなど小道具を使うことなく、虫を物語の中に出現させます。台詞では色の美しさの賛辞で表現される昆虫だけれど、この黒板にチョークというシンプルな描き方はあえて色を封じ、観客の想像力に委ねる手法。変幻自在な感じも楽しいし、壊れてしまった標本にだけ色を使うというのも洒落ていてステキです。
ややふぬけた感じに少年を演じた島口綾が実にいいのです。序盤の子供らしいい夢中さや抜けてる感じから、後半の緊張感までダイナミックレンジが伸びやかで、印象に残ります。 背乃じゅんはややヒールに描かれる人物で、あくまでもフラットな役にやや苦戦する感じも受けますが、新たな魅力の手がかり。廣瀬友美はこの座組だとどうしても母親という役になってしまうところだけれど、いままでよりもずっとシュッとして、より大人の印象に。
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