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2014.01.13

【芝居】「人魚の夜」青組

2013.1.11 15:00 [CoRich]

青組の新作。20日までアゴラ劇場。105分。

東は砂と岩ばかりで晴天が続くようになっているが、西の方はまだ雨がおおい。 海の人魚を娶っていたので雨が多いのだという伝説がある土地。 台風で行方不明になった女。女の父親と夫は二年ほど同居を続けている。海岸で靴が見つかったため死亡と見なして葬儀をすることになる。父親は元教師で引退していて、自分が小学生だった頃、人魚の噂があった美しく思いを寄せていた女の先生のことを思い出す。夫は雨の日の匂いに妻の姿を感じる。葬儀が間近になって、家を出たきりだった女の兄が戻ってくる。近くに嫁いでいた妹が呼んだのだ。 いくつかの戦争、砂漠化の進行や雨が多い土地、娶られた女たちは人魚だったという不思議な伝承というSF風味の背景に、行方不明の女を諦められないまま、夫と義父という関係のまま同居してる二人の男という実に人間くさい物語。海の近く、台風で何度も多くの命が失われながらもその土地を離れず暮らしている人々がいるという現実。それを伝承と、行方不明の女を待っている人々という物語の厚みを伴って説得力を持たせるというのはちょっと不思議な感じもするけれど、不思議と納得してしまうのです。

行方不明から二年が経ち、靴が見つかるというきっかけで死亡と見なすことを始点として、この「妻」の葬儀・四十九日への流れを舞台の時間軸の幹に据えています。これがあるおかげで、女先生へのほのかな恋心と、まだ幼いながらも異性への意識、潔癖に育った背景となる女癖の悪かった祖父といった義父の物語だったり、家を出て行くに至った長男とその教え子の関係だったり、あるいは行方不明の女と夫の新婚の時の姿など、いくつもの時間軸をややルーズに混ぜ合わせて提示しながらも、あまり混乱せずに、最初はよくわからない登場人物たちの奥行きがどんどん重なり合っていくよう。

酒癖も女癖もわるかった父親のことば「女は釣るか、買うか、拾うものだ」というのはひどく男目線なことば。一歩間違えば女性差別、と声高に言われかねない微妙な価値観。意識的に古くさく、受動的にバイアスをかけて女性を描くのは、作家の芸風ともいえるけれど、人魚という存在を間に挟むことが不思議な緩衝帯になる描き方が面白い。

ワタシが好きなのは回想かどうかすらやや曖昧に描かれる冬子と夫の初めての朝食のシーン。が実にいいのです。おいしいとか云ってよという台詞。こういう経験が無いあたしの憧れかとも思いつつ。(行方不明の)妻を演じた小瀧万梨子、時に風のように通り過ぎるだけ、ときに朝食だったりと存在感を自在にコントロール。かわいらしい造形が意外に珍しい気もします。夫を演じた荒井志郎は優しさを前面にする造形。このまえ拝見した役とのギャップかとおもうけれど、ホームならこういう感じの安心感。大西玲子は物語を回す力、 藤川修二は小学生から初老まで、広すぎるダイナミックレンジが魅力。女教師を演じた渋谷はるかは、物語の要請からか、昭和な映画の口調が実にいいのです。

祖父母のシーンで4人束ねて出てくる女優たち、メインとなるそれぞれの役とはかけ離れた 「女たち」の色っぽさ強調は眼福だし、「女」を(ズベ公として)描いて華やかで楽しい。

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