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2014.01.30

【芝居】「No Regret No Life」文月堂

2014.1.25 19:00 [CoRich]

後悔を巡る短編オムニバス3本を番外公演として。土曜夜にキャンセル待ちで何とか潜り込みました。26日までRAFT。105分。

スーパーのバックヤード。誕生日を迎えた主任は早めに帰宅しようとするが、豪雨によって電車が止まっていて帰るに帰れない。アルバイトの女は無理を押して豪雨の中徒歩で出勤してくるが、彼女の目的は不倫の仲となっている主任と今晩一緒に居ることだった。パートの女はその二人を目撃してしまう。「低気圧ガール」
保育園。男の子が女の子を転ばせたといって両方の親が呼ばれている。それぞれが片親でそれぞれのポリシーで子供を育てているが、その意見は平行線のままかみ合わない。 二人の子供は元々は仲良しで、朝顔の栽培を一緒にしようと考えていたが、育て方の差が溝になって鉢が枯れてしまったようだ。「朝顔」
人気シリーズの絵本の作家。物語の主人公は船にのり荒波乗り越えて進む冒険家の少女で、主人公と話をするように物語を紡いでいる。作家のもとを久しぶりに訪れた元編集者は妊娠している。元の恋人は作家の今の恋人となっているが、プロポーズを断ったと聞き、それは妹をなくした作家が自分を責めているからなのではないかと話をしにくる。作品の主人公のモデルは妹で、いつも目的地にたどり着く前に優しい姉のもとに戻ってきてふつうの女の子として目覚める、という結末になっている。シリーズの人気も頭打ちになり、シリーズを終わらせる話もでていて。「NO REGRET NO LIFE」

椅子と机、ハンガーぐらいのごくミニマムな空間での三本の物語。

「低気圧ガール」は主任である男と不倫の仲にある若いアルバイト。大雨の中濡れ鼠になっても誕生日の今日を過ごしたいと思う気持ち。いっぽうで、主任を信頼しているパートの女は主任には家族と一緒の誕生日を過ごして欲しいと純粋に思うし、居なくなった息子と家族としての暮らしが再び始められるかも知れないという気持ちも透けて見えます。人手不足の期末にパートやアルバイトが不足しててんてこ舞い、ましてや辞められちゃ困るというドタバタな雰囲気の上に物語を重ね合わせて濃密にしつつもコンパクトに。家族をといいながら目の前で泣いた若い女をなぐさめたいという気持ちのパートの定まらない感じもちょっとリアル。
「低気圧ガール」ことアルバイトの女を演じた松下知世が一途に想い続ける恋心を好演。切羽詰まったあげくのバックヤードで脱ぎ始めたり(眼福だと感じるアタシですが)とクセはあるけれど、想いのピュアさが印象的。主任を演じた熊野善啓は優柔不断とシチュエーションに翻弄される感じと男の瞬間とが複雑に混じり合って二つの女たちの物語の「つなぎ」のようにぴったりとひとつに。パートの女を演じた辻川幸代は主任へ信頼。それが恋心じゃなくて人として母としてというあたりの微妙なバランスをきっちり。

「朝顔」はそれぞれが片親で、女の子の父親と男の子の母親という性別のたすき掛けのシチュエーションに、それぞれが考える子育ての理想の姿をめぐる対立があぶり出されるアングル。理想の女性を育てるべく向き合う時間を長く取って二人で暮らしているというある種閉塞した中での子育てをしている父親。母親の方は女優という仕事柄もあって家族やマネージャーの協力も受けて開いた社会の中での子育てという二つのスタイルを並べて見せます。
子供の喧嘩の原因が朝顔の育て方の方針の相違というのは、子供の育て方の違いと相似形になっていて、朝顔は枯れ、子供は突き飛ばすことはしないけれど親の思い通りばかりとはいかない、というある種のほころびも相似であって。それでも子供の仲直りは早くて、子育てだって思い通りにいかなくても手直しして進めばいい、という優しい視点でもあって。
その枠組みに、女とか男とかということを崩すように保育士の想いを乗せるのは、この物語の先に唐突に現れて破壊力抜群で笑いも起こるけれど、それがあっさりうっちゃられて笑いのままになっちゃうのは短編だから仕方ないけれど勿体ないといえばもったいない気も。 子供は登場しないけれど無対象で演じるのは巧い。
父親を演じた平岩久資は生真面目さ一徹でぶれない感じの説得力。ある種女性蔑視になりかねない危ういバランスのセリフばかりだけれど、背景をちゃんと背負います。母親を演じた椿真由美はコミカルなまでに大仰に「女優」を造形するけれど、こちらも真面目に子供に向き合う親をしっかり。保育士を演じた石塚義高は、美形を逆手にとった終盤が効果抜群。その一つ前のシーンで優しく母親を抱きしめるというのもその安心感の説得力。

「NO REGRET〜」は全編のタイトルとなってる一編。絵本作家が自分の描いている主人公と対話しながら物語を進めている体裁。現実の世界には元の担当編集が家に来て話をする。妹の出しているサインに気づけなくておそらくは亡くなっているので、それを物語の主人公にして出した絵本がヒットしてシリーズ化したけれど、そろそろ先が見えてきていて、シリーズを集結させよう、という構図。それまでの構図を離れて、姉の待つ家には戻らずに冒険を続けるという風に主人公自身が作家の意図を超えて先に進む、ということはきっと妹のことだけを考えていた生活からゆっくりと離れてもいいと考えた、ということなのです。
それを補強するかのように、作家に対してプロポーズしてきた男の存在や、元の編集者が妊娠していて先に進むということを丁寧に添えていることで、この短い物語に説得力が増すのです。
作家を演じた勝平ともこは真っ直ぐに想いを持ち続けている造形を好演。主人公を演じた志水衿子は決して器用な役者ではありませんが、やや舌足らずな台詞回しは絵本の主人公の説得力。3本全ての作・演出を兼ねる元編集の三谷智子この座組においては、おばちゃんぽさが物語を緩める効果。

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