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2014.01.31

【芝居】「母乳とブランデー」トローチ

2014.1.26 17:00 [CoRich]

東地宏樹が立ち上げたユニットの旗揚げ公演初日。太田善也の作・演出で135分。2月2日までRED/THEATER。

ハワイ・ノースショアを望む家を訪れた新婚の夫婦。昨年亡くなった母親の遺品の中から見つけたメモで、妻と子を捨てた父親がここでコーヒー農園を営んでいると知り、会いに来たのだ。捨てた父親のことを母親は愚痴ってばかりいたのでどうしても許せない息子だが、もしかしたらそう悪くはないのではないか、と一縷の望みを胸にして訪れたのだが、いろいろめちゃくちゃで。 海を望むテラスデッキに、英語の混じる台詞の数々なのだけれど、長く会わなかった親子の再会の確執に、子供をつくり家族となるかの選択だったり、それが必ずしも世間的には誉められたものではない形態もある、ということを、日本のホームドラマのようにややウエットに描く太田節。

長く会わなかったゆえに真面目な息子は拘泥して、どうしても許せないのに、対する父親のほうは懲りるでもなく、ちゃらんぽらん(に見える)な緩すぎる生き様。しかし台詞はこの二人を似ていると指摘します。 アタシの口の悪い友人は、父親が話すのを渋ってるけれど、真相もそうでもない、といいます。同感です。

片言の日本語を話す日系人たちだったりもするけれど、日系人同士の会話は自然な(ゆえに、私には完全には聞き取れない(笑))英語の台詞。いちいち訳さなくたってちゃんと何をどんな感情で話しているかということが伝わるおもしろさもあります。

父親を演じた辻親八はちゃらんぽらんな感じの安定。主宰の東地宏樹は真面目を前面に押し出す造形。瓜生和成の内気な感じ、三鴨絵里子のおおらかに誰もをだきしめるような大らかさ。郷志郎演じる盗んだりする男の切羽詰まった感じ。
我らが(笑)さーやこと、小林さやかの可愛らしい新婚の妻、みてると幸せな感じがいいのです。

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【芝居】「かなわない夢ガール」タイマン

2014.1.26 14:00 [CoRich]

アタシは初見の劇団。105分。26日までスタジオ空洞(も、初めて伺いました)。

少女は作文には医者になりたいと書き勉強熱心だったが、恋心抱いた幼なじみに彼女が出来たのをきっかけに成績が落ちて、新たに一位となった同級生の女子が好きなアニメにはまりそのコスプレをするうち服飾専門学校にすすむが、卒業と同時に家を出てガールズバーで働くようになる。客の男がストーカーとなり恐怖を感じて逃げ込んだ先は落語家の家で住み込みで働き師匠に稽古をつけてもらうが古典ではなく勝手に新作を話して破門となる。兄弟子立った男に処女を奪われると、次々に男を変えて枕を共にするが、実家に戻る。 アクティングエリアを広めにとって、四人の役者が、主人公の一人を軸に、他の三人が成長につれて出会う人々などを演じていきます。最初広々としていた舞台は、たとえばティーソーサーやクルマの形を模した皿に載ったアイスクリーム、木馬や繋がったコンドームなどで徐々に埋まっていきます。主人公の女が勉強、コスプレ、服飾、ガールズバー、落語家、女になって、という脈略のない人生を重ねていきます。最後に実家に戻って母親に告白。「遊園地になりたい」というのです。

前半のさまざまに職を移っていくのはめまぐるしく楽しい感じ。が、実家に戻って「遊園地」になりたい、というのはその後の理由を聞けば「人を楽しませたい」ということはわかりますが、あまりに唐突に過ぎる感じはあります。さらに、幕開けから続くように(遊園地となった親に)婚約者に会わせるために遊園地にやってきた、という荒唐無稽。正直にいえば、ブレークポイントというか、どこかに破壊力が欲しいのです。

主人公を演じた笠井里美はこの多彩な役をきっちり。引っ込んでいる時間もあまりないので、着替えの工夫のおかげもあって、リズムが崩れないのは凄い。母親(他)を演じた齋藤陽介はこの静かなシーンに確かな力。娘の婚約者を演じた森田祐吏は噺家の兄弟子のチンピラ風情の造形はどこから出てきたんだろうとおもいつつ、きっちり。娘を演じた陣内ユウコは背丈もあって、可愛らしく、この座組の振り幅を感じます。

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2014.01.30

【芝居】「No Regret No Life」文月堂

2014.1.25 19:00 [CoRich]

後悔を巡る短編オムニバス3本を番外公演として。土曜夜にキャンセル待ちで何とか潜り込みました。26日までRAFT。105分。

スーパーのバックヤード。誕生日を迎えた主任は早めに帰宅しようとするが、豪雨によって電車が止まっていて帰るに帰れない。アルバイトの女は無理を押して豪雨の中徒歩で出勤してくるが、彼女の目的は不倫の仲となっている主任と今晩一緒に居ることだった。パートの女はその二人を目撃してしまう。「低気圧ガール」
保育園。男の子が女の子を転ばせたといって両方の親が呼ばれている。それぞれが片親でそれぞれのポリシーで子供を育てているが、その意見は平行線のままかみ合わない。 二人の子供は元々は仲良しで、朝顔の栽培を一緒にしようと考えていたが、育て方の差が溝になって鉢が枯れてしまったようだ。「朝顔」
人気シリーズの絵本の作家。物語の主人公は船にのり荒波乗り越えて進む冒険家の少女で、主人公と話をするように物語を紡いでいる。作家のもとを久しぶりに訪れた元編集者は妊娠している。元の恋人は作家の今の恋人となっているが、プロポーズを断ったと聞き、それは妹をなくした作家が自分を責めているからなのではないかと話をしにくる。作品の主人公のモデルは妹で、いつも目的地にたどり着く前に優しい姉のもとに戻ってきてふつうの女の子として目覚める、という結末になっている。シリーズの人気も頭打ちになり、シリーズを終わらせる話もでていて。「NO REGRET NO LIFE」

椅子と机、ハンガーぐらいのごくミニマムな空間での三本の物語。

「低気圧ガール」は主任である男と不倫の仲にある若いアルバイト。大雨の中濡れ鼠になっても誕生日の今日を過ごしたいと思う気持ち。いっぽうで、主任を信頼しているパートの女は主任には家族と一緒の誕生日を過ごして欲しいと純粋に思うし、居なくなった息子と家族としての暮らしが再び始められるかも知れないという気持ちも透けて見えます。人手不足の期末にパートやアルバイトが不足しててんてこ舞い、ましてや辞められちゃ困るというドタバタな雰囲気の上に物語を重ね合わせて濃密にしつつもコンパクトに。家族をといいながら目の前で泣いた若い女をなぐさめたいという気持ちのパートの定まらない感じもちょっとリアル。
「低気圧ガール」ことアルバイトの女を演じた松下知世が一途に想い続ける恋心を好演。切羽詰まったあげくのバックヤードで脱ぎ始めたり(眼福だと感じるアタシですが)とクセはあるけれど、想いのピュアさが印象的。主任を演じた熊野善啓は優柔不断とシチュエーションに翻弄される感じと男の瞬間とが複雑に混じり合って二つの女たちの物語の「つなぎ」のようにぴったりとひとつに。パートの女を演じた辻川幸代は主任へ信頼。それが恋心じゃなくて人として母としてというあたりの微妙なバランスをきっちり。

「朝顔」はそれぞれが片親で、女の子の父親と男の子の母親という性別のたすき掛けのシチュエーションに、それぞれが考える子育ての理想の姿をめぐる対立があぶり出されるアングル。理想の女性を育てるべく向き合う時間を長く取って二人で暮らしているというある種閉塞した中での子育てをしている父親。母親の方は女優という仕事柄もあって家族やマネージャーの協力も受けて開いた社会の中での子育てという二つのスタイルを並べて見せます。
子供の喧嘩の原因が朝顔の育て方の方針の相違というのは、子供の育て方の違いと相似形になっていて、朝顔は枯れ、子供は突き飛ばすことはしないけれど親の思い通りばかりとはいかない、というある種のほころびも相似であって。それでも子供の仲直りは早くて、子育てだって思い通りにいかなくても手直しして進めばいい、という優しい視点でもあって。
その枠組みに、女とか男とかということを崩すように保育士の想いを乗せるのは、この物語の先に唐突に現れて破壊力抜群で笑いも起こるけれど、それがあっさりうっちゃられて笑いのままになっちゃうのは短編だから仕方ないけれど勿体ないといえばもったいない気も。 子供は登場しないけれど無対象で演じるのは巧い。
父親を演じた平岩久資は生真面目さ一徹でぶれない感じの説得力。ある種女性蔑視になりかねない危ういバランスのセリフばかりだけれど、背景をちゃんと背負います。母親を演じた椿真由美はコミカルなまでに大仰に「女優」を造形するけれど、こちらも真面目に子供に向き合う親をしっかり。保育士を演じた石塚義高は、美形を逆手にとった終盤が効果抜群。その一つ前のシーンで優しく母親を抱きしめるというのもその安心感の説得力。

「NO REGRET〜」は全編のタイトルとなってる一編。絵本作家が自分の描いている主人公と対話しながら物語を進めている体裁。現実の世界には元の担当編集が家に来て話をする。妹の出しているサインに気づけなくておそらくは亡くなっているので、それを物語の主人公にして出した絵本がヒットしてシリーズ化したけれど、そろそろ先が見えてきていて、シリーズを集結させよう、という構図。それまでの構図を離れて、姉の待つ家には戻らずに冒険を続けるという風に主人公自身が作家の意図を超えて先に進む、ということはきっと妹のことだけを考えていた生活からゆっくりと離れてもいいと考えた、ということなのです。
それを補強するかのように、作家に対してプロポーズしてきた男の存在や、元の編集者が妊娠していて先に進むということを丁寧に添えていることで、この短い物語に説得力が増すのです。
作家を演じた勝平ともこは真っ直ぐに想いを持ち続けている造形を好演。主人公を演じた志水衿子は決して器用な役者ではありませんが、やや舌足らずな台詞回しは絵本の主人公の説得力。3本全ての作・演出を兼ねる元編集の三谷智子この座組においては、おばちゃんぽさが物語を緩める効果。

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【芝居】「レーザービーム!」はらぺこペンギン

2014.1.25 14:00 [CoRich]

135分。26日まで駅前劇場。

老舗の饅頭屋の裏庭には神木があって、この木をかじった兄弟たちはそれぞれ超能力を身につけている。神木を大切にする祖母はずっとこの店を守ってきたが、その息子である父親は町議となっていて神木を切り、祖母を施設に預けてこの店の場所をオリンピックに向けた道路にしようとしている。
祖母の誕生日を祝おうと兄弟たちが集まり、家を出たきりになっていた祖父のものまね芸人にさせようと考えていが、超能力が現れていなかった長男の手から突然レーザービーム発せられて、庭の一角に穴が出現する。その穴に入った長男と長女は時空を越えて戦後すぐの裏庭に出るが、そこで目にしたのは、映画出演に浮かれる若き祖父の姿だった。ホンモノを見せるのが一番と考え、だまして元の時代に長男が連れ帰った。
同じ頃、未来では時空警察が法規違反の時空のゆがみを検出し捜査に乗り出す。 超能力にタイムトンネル、忍者に妖怪風味まで加えてはいるけれど、居なくなった祖父を待ち続ける祖母というちょっとしたラブストーリーを軸にして心優しい孫たちというホームドラマで包んだような仕上がり。結婚出来ない長男やら、夫と別れる気満々な長女やらという孫の世代、それなりの地位にもなって親の介護も考えなければいけない父親たちの世代、人を想い待ち続ける祖父母の世代をデフォルメして描いたベースをしっかりしつつも、荒唐無稽な登場人物たちが暴れ回る物語は、誰でも気楽に楽しめるエンタメなのに、うっかり涙してしまいそうになるような懐の深さがあります。

登場人物たちそれぞれに物語を描き込んだ結果、物語のボリュームはやや大盛りに過ぎる感じがしないでもありませんが、それぞれの登場人物たちが置いていった伏線を余すところなくきっちり執念のように回収していく物語の運びは、見ていて気持ちがいいなともと思うのです。

祖母の想いの物語を決着したところで、作家はこの物語の舞台に流れる、大きな河の流れを提示して見せます。それまで物語の片隅にしか居なかった江戸時代(らしい)女性と男が始めた饅頭屋はその庭にある木とともに、母親たちが繋いでいく様子を見せます。その時間の流れがある場所を舞台にして描いてきた物語なのだ、ということを振り返る感じでちょっと面白い。もっともこれも大盛りの原因の一つではあるので、痛し痒しな感じもあるのですが。

祖母を演じた手塚けだまは「美しくない」という酷い云われようだけれど、老人となってからの表情の無さは重みすら感じさせるので、物語の基点となり印象を残します。前説からレーザラモン風な時空警察を演じた熊坂貢児は正直イタい役柄の造形ですから客席がある程度乗ってくれるかどうかで評価が分かれそうですが、アタシの観た土曜昼はいい雰囲気、戻っていく祖父に人情は無いのか、という一言のシーンが暖かさを感じさせます。母親を演じたヒザイミズキは時間堂ではあまり見せないような川井らしいコメディエンヌぶりをしっかり。こういう軽さに慣れない感じはうけるものの、しっかり。長女を演じた辻沢綾香は強気な平手打ちから、子供が出来る不安に至るまでの振り幅が楽しい。祖父を演じた立浪伸一は、昭和の男の不器用さのリアリティ。 三男を演じた三原一太は、甘えん坊っぷりな雰囲気が微笑ましくて嬉しくなる感じ。

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2014.01.22

【芝居】「夢も希望もなく。」月刊根本宗子

2014.1.19 18:00 [CoRich]

19日まで駅前劇場。125分。(開演10分押し)

小説家志望の男と劇団員の女が半同棲している部屋。男は芸術家肌で何でも出来る自信に満ちあふれている。女は映画のオーディションの一次にも通って夢に向かって少しずつ歩んでいる。看護師を目指している幼なじみは何でも女のことを知っていてそれぞれの夢を実現するのを楽しみにしている。小説家志望が女の劇団を快く思っていないのを知り女は幼なじみが止めるのも聞かず、劇団もオーディションもやめてOLとして働くことを決めてしまう。
あれから10年が経った。小説家志望はまだ何者にもなれないまま夜勤のバイトぐらいしかしていない。女はOLとしてこの二人の生活をずっと支えてきた。

クリエイティブで何でも出来そうに思う万能感あふれる20歳代、それから10年経って自分の才能の限界だったり、あまりに地味な毎日に埋没している30歳代。そんな地味な生活を、10年もの間何とか支えてきた「気持ち」がこと切れる瞬間はあまりに切なく「夢も希望もない」のです。

物語の幹は、云ってしまえばこれだけなのだけれど、その10年を隔てた二点のクリスマス前後を同じ部屋を舞台にピンポイントで描きます。若いときの希望に溢れる感じを下手側に、10年経ってどこかくすんでしまったような感じを上手側において並行して物語を進めますが、最初は下手側で多く物語を語って二人の関係やその未来溢れる感じを描きながら、上手側で地味で不穏な雰囲気を挟んでいく見せ方が見やすいのです。

一人の役者を両方の時代に置くことをせず、カップルの二人、バイト先の同僚、親友の4人をそれぞれの時代に別々に役者を置くのは贅沢な感じ。決して似ているわけじゃないけれど、雰囲気を似せている感じもあって、その取り合わせも面白い。10年経っても冴えないままというカップルをベースに、10年経って諦める男だったり、10年経って成功を掴む男だったり、あるいは子供が生まれたり、もう既に子供が居るだったりと、10年の時間の流れを、この狭い部屋と狭い人間関係の中にこれでもか、と詰め込んだおかげで、同年代の役者で固めている割には奥行きが出てるなと思うのです。

カップルの女を演じたのは、若い頃を福永マリカ、10年後を大竹沙絵子で、髪型のせいかややぽっちゃりな雰囲気を共有。希望に溢れ女優にだってなれたかもしれないのに「愛のために」すっぱりと諦めてという心の強さというか真面目さに繋がりがある感じ。10年経って疲れてしまった、と爆発する大竹沙絵子の切なさがいい。カップルの男の二人はずいぶんと印象が激変するという造形で物語の軸に。繊細で自信に溢れるけれど未だ何者にも慣れない若い頃を演じた水澤賢人は鼻につくぐらいに若さ押しが物語の要請によくあっています。10年後を演じた郷本直也は何も得ないまま漫然と来てしまったのにだらしない造形がまたちょっと凄い。

親友の若い頃を演じた根本宗子は少々うざったいほどにお節介な雰囲気がよくあっています。10年後を演じた片桐はづきはそれとは全く違う、包み込むような雰囲気で物語を柔らかく着地させます。バイト先の同僚を演じたのは10年後を梨木智香で、もう彼女そのものな雰囲気なのだけれど、その若い頃を演じた長井短がそれに寄せるような造形で今までにない魅力。途中で歌われる歌もステキだし、その一瞬は二つのステージが繋がるのも面白い。

どこまでも優しい彼氏を演じた小林和也、冴えなかったのに10年後に成功を収める役者を演じた鈴木智久、ビッチな不思議ちゃんというかなり無茶なキャラクタ演じきった杉岡詩織、10年で唯一何も変わらなかった男を演じた田坂秀樹もそれぞれ面白い。

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【芝居】「しなやかに踊りましょう」東京タンバリン

2014.1.19 15:00 [CoRich]

ずいぶん久しぶりに拝見する気もします。 19日までシアタートラム。75分。

ゴミ出しで顔を合わせる町内会の女たち。当番が守られないことに腹を立てている女が居るが、他はそれを煩わしく思っている。女優とその使用人だったり、居場所がなくなった女だったり、失業中の女だったり、占い師だったりと女たちはそれぞれだ。
ある日、姉が行方不明になったと、妹が探しにくる。部屋の鍵はあいたままで壷が一つ割れていた。近所で挨拶ぐらいはする関係だった面々に聞き回るが、行方も犯人も皆目分からず。

ミステリー風味に始まりますが、実際のその着地点は物語としてはなんだかなという感じではあります。ミステリーを描こうということはそもそも考えてないんじゃないか、と思うのです。それよりも 若くはない女たち。それぞれに生活はあるけれど、日常の中で顔を合わせる「ご近所さん」。行方不明という事件が起こるけれど、わりと無責任に殺されたのではないかと云ったり、真剣に話を聞こうとしている「探している人」に対して脱線ばかりで進む気配のない会話だけがどんどん消費されているという感じ。 女たちの井戸端会議だったり、あちこちに話が飛ぶ感じだったりをひたすらに。

女優やら女中やら占い師やらという突拍子もない感じだったり、どこまでもかみ合わない会話という意味で、あひるなんちゃらや、ワワフラミンゴが頭に思い浮かぶアタシですが(それぞれの劇団での出演経験者が居るから、という可能性も否定できませんが)、そういう笑いという感じでもありません。 後半に至りあからさまにおかしいポジションをとり続ける女優ゆえの笑いはあるけれど、ズレる感じが笑いに結びつかないのはやや残念な感じ。

もっともそれじゃあ面白くなかったかといえばそんなことはなくて、女たちの無駄話というのがこの上なく好きなアタシです。見慣れた、しかし実は同じ舞台で見かけることの無いそれぞれの個性的な役者たちが、時に可笑しく時に可愛らしく会話し動き回るのは楽しいのです。ですが、この豪華な役者たちならば、 もっともっと、という贅沢な気持ちにもなってしまうのです。

広い舞台、 キャスター付きのに役者が座り、テーブルと一緒に文字通り自在に操り滑るように動くさまは、単に楽しい目新しいというばかりではなくて、見ていて美しくフィギアスケートのように優雅でもあります。ダンスでは無いのだけれど、どこかダンスのような動きの美しさ。終盤に至り、それぞれが中央にぎゅっと集まるのは、断片的に撮られた映像がぎゅっと一カ所に凝縮していくCGを見るようでもあります。 「女優」を演じた宮下今日子はかなり無茶振りで現実味の無い役を強引にねじ伏せるようにきっちりと役に着地させてたいしたもの。メイドを演じた佐藤恭子のちょっととぼけた感じも楽しいけれど、入れ替わるという無茶振りもちょっといい。ひたすらにゴミ当番に執着する女を演じたザンヨウコ、居場所がない女を演じた高山玲子、職の無い女を演じた弘中麻紀、占い師を演じた内田淳子と、それぞれの無茶なキャラクタを演じきる役者たちも楽しい。尋ねてきた女を演じた黒岩三佳はその中でフラットで居続ける役をしっかり。

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【芝居】「女王の盲景」空想組曲

2014.1.18 18:30 [CoRich]

19日までシアター風姿花伝。95分。

やることが無くなった男のもとに手紙が届く。遠い島に破格の住み込みで働かないかという誘いだった。不思議に思いながらもその島を訪ねると、老人と使用人が二人で暮らしていた。老人は自分の云ったことは絶対であること、奥の部屋には近づかないことを条件に雇い入れるが、ある日部屋の奥には目隠しをした少女が閉じこめられていることを知る。
この二人はその父親や母親、家臣や使用人たちを演じ分けて少女は小さな国の王女なのだと信じ込ませているのだ。

比較的人数の多い芝居を書く印象の作家ですが、コンパクトにたった4人で濃密に描く作家の世界。 物語とかお話というものの持つ「嘘」を主軸に据え、物語で物語のことを語る、というややメタな視点で描きます。

傷つけないためについた嘘ははじめほんの小さなことだけれど、それがどんどん膨らんでいきます。目の見えない少女に声と物語だけで国を作り、辻褄を合わせるために戦争が起こりという具合に広がる一方の嘘は決して悪意からでたものではないけれど、このままでは破綻することが誰にでも明らかになっている状況。 少女だけが歳をとらない、というひとひねりが(少々卑怯ながら)効果的で、少女自身が「誰も死なない」という嘘を受け入れられるという素地でもあるし、嘘が規模の広がりだけではなくて、時間という抗がえないものを詳らかにするだけに、ずっと付き添ってきた男の絶望的な気持ちを強く印象づけるのです。

目は遠くなるし、髪だって白くなるのに独り身で、老いということをどうしても考えずに居られなくなっているアタシです。この物語で語られる老いや若さのギャップは、 単に若いままの少女と、ある日やってきた男の若さのまぶしさに留まりません。少女が悲鳴を上げるほどに老いてしまったというシーンは、老いを身近に感じるようになっているアタシの心にぐさりとくるのです。

人は老いる、いつかは死ぬ、ということを受け入れることはもしかしたら少女が大人になる、ということの一歩なのかもな、と思ったり思わなかったり。

呼ばれた男を演じた和田琢磨は若さという眩しさをきっちり体現。盲目の娘を演じた青木志穏は純粋さゆえに残酷というコントラスト。医者を演じた鍛治本大樹はこの少々癖のある世界と私たちの視座を繋ぐ序盤をしっかり。年老いた男を演じた大門伍朗は実年齢の厚みが物語に奥行きを与えます。
この「嘘」の世界を支えているのは小玉久仁子の芸達者さ。少々堅物な使用人の役をベースに、少々コミカルに、多くの役をこなすというのは全体に静かに進む物語にテンションを与えて実はとても口当たりをよく。さらに、長年一緒に暮らしてきた年上の男へのほのかな気持ちが見え隠れする造形もいい。

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【芝居】「少年の日の思い出」こゆび侍

2014.1.18 16:00 [CoRich]

多くの教科書に取り上げられているというヘッセの原作に忠実に舞台化。65分。19日まで新宿眼科画廊。

学校では昆虫採集が流行っていた。少年は昆虫と標本のことばかり考えて勉強が手に着かないほどで親も先生もそれを苦々しく思っている。近所には教師の子供で裕福で昆虫にも詳しくて標本づくりもその手入れも完璧な同級生が居る。
その同級生が、ある日珍しい蛾の羽化に成功する。それをひと目見せて貰おうと家を訪ねるが留守で、好奇心には勝てず展翅台の蛾を目にし、触って壊してしまう。

昆虫をモチーフにした芝居が多い作家。今作はヘッセの原作で人間の物語だけれど、昆虫に夢中となった小学生の切ない物語を丁寧に描きます。友情だったり信頼ということだったりを描くのはさすがに教科書にも多く取り上げられているというジュブナイルな感じ。

昆虫というもので対等に盛り上がれる二人。優等生は何にでも優れていて昆虫の扱いだって。裕福で機材だってたくさんもっていて。しかし、昆虫に対する熱意や知識は抜きんでている二人はそれぞれに敬意を持っているところもあって。もしかしたら親友にだってなれたかもしれないのに、好奇心とわずかな不注意とで一瞬にして軽蔑に変わりもう決して許してもらえないのです。たかが昆虫だけれど、友人から軽蔑されたという想いはおそらく一生消えないほどの重み。

蝶などの昆虫を黒板に見立てた大きな黒い板や、黒い立方体にチョークで描くという演出。大量に並べてある感じや、手にとって持ち歩く感じなど小道具を使うことなく、虫を物語の中に出現させます。台詞では色の美しさの賛辞で表現される昆虫だけれど、この黒板にチョークというシンプルな描き方はあえて色を封じ、観客の想像力に委ねる手法。変幻自在な感じも楽しいし、壊れてしまった標本にだけ色を使うというのも洒落ていてステキです。

ややふぬけた感じに少年を演じた島口綾が実にいいのです。序盤の子供らしいい夢中さや抜けてる感じから、後半の緊張感までダイナミックレンジが伸びやかで、印象に残ります。 背乃じゅんはややヒールに描かれる人物で、あくまでもフラットな役にやや苦戦する感じも受けますが、新たな魅力の手がかり。廣瀬友美はこの座組だとどうしても母親という役になってしまうところだけれど、いままでよりもずっとシュッとして、より大人の印象に。

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2014.01.13

【芝居】「曲がるカーブ」クロムモリブデン

2014.1.11 19:00 [CoRich]

クロムモリブデンの新作は高校野球を題材にしてるのいバットもグローブも出てこない95分。大阪のあと、23日まで赤坂・RED/THEATER。

メディアに描かれた暴力が次の暴力を生む連鎖をテーマに、廃病院に不法進入して映画を撮っていた監督と役者。そこに現れた高校生は腹を刺されていた。甲子園の初出場に期待がかかる高校球児だが、心ない挑発を受けたがそれには乗らず刺されたのだった。他にもこの野球部には、同級生の女に悪戯をしたり、家庭の事情をあげつらわれて我慢ならずに暴力を振るったりしていることがわかって。このことが表沙汰になれば甲子園の出場は消えてしまう。野球部監督はなんとか穏便に済ませて甲子園の出場を果たそうと考える。

甲子園に振り回される監督夫妻と娘、甲子園出場のためには相当のことを隠蔽してでもというメンタリティをベースに、暴力の連鎖をテーマにする監督の映画の面白さに巻き込まれていく、という構図。刺された男は身の危険があっても、妹が人質にとられてもなお「暴力はダメだ」という一点で暴力はダメだ思考停止。あるいは酒を呑んだあげくに同級生の女の子を部屋に連れ込んでとか(でもパンツは守ったとかw)。

なぜ我慢できるのかということを丁寧に描いている気がします。たとえばノートに(内なる暴力性の発露として)書き殴ったり、あるいは作品としての写真や映像には暴力的に表現する、というやりかた。これををくくるのに「アート治療(あるいは療法)」という言葉にするのは少々違和感があるアタシです。表現として暴力を描くものが(心はともかく)実際の暴力を振るうわけではない、ということと、映画監督が撮ろうとしていた暴力表現と暴力の実行の負の連鎖をこのノートですら生むという中盤、身体に「感情がドーン」と負の連鎖が生まれるのです。

甲子園という単語にひれ伏す、という後半の序盤はある種の思考停止な単語。象徴的に現れる高野連と電話機の化身のあたり、不祥事を(恋愛はいいけどチューはだめといった)意味のない線引きしていくばかばかしさを描くようで、それはつまり高野連ではなくて、判断を委ねて大騒ぎするばかばかしさという私たちに刃が向くのです。 あるいは作品として映画になって、評判も上々なのに、それを見て暴力を振るったという事件が起きればとたんに上映の自粛に流れてしまうということの、これも思考停止なのです。

正直にいえば、高校野球にしても映画という表現にしても、さまざまに置かれ点描される小さなシーンはおもしろいのにそれをいくら積み上げても物語としての流れにはならない感じなのが今一つ物足りない感じは残ります。もっとも、クロムモリブデンが描く世界はいつも作家の問題意識に端を発した逡巡じゃないか、と云ってしまえばそうなわけで、ここを問題にするのは筋違いだという気もします。

「ひどい目にあった女生徒」を演じた葛木英は可愛らしい制服姿から和服の姉御姿までな眼福もうれしいけれど、「襲われた女性」という難しいバランスの役をことさらに暗くするでも、意味のない明るさというわけでもない微妙なバランスできっちり。 マネージャーの女生徒を演じた渡邉とかげは、好きな男へと、家族への想いの狭間をきっちり。序盤で(本当に襲われたのは同級生なのに)自分が襲われた、というシーンが実はちょっと好きです。下手な女優を演じた、ゆにばは、化粧も含めてマンガのように造形されているけれど、正面からみると実は美しいと、今さらながら。

映画監督を演じた森下亮は序盤のあからさまにインモラルなポジションを一人で走り続ける力。後半、映画コンテスト事務局への電話のフラットな造形の奥行き。野球監督を演じた久保貫太郎は時にコミカルだけれど、想いが果たせそうなのに、これがダメになるという崖っぷちでの諦め方や諦めの悪さの振り幅が楽しい。妻を演じた奥田ワレタは物語を運ばないという意味で少々損な役回りという気はするけれど、甲子園廃止に拘泥する後半の造形はちょっといいい。高校球児を演じた板倉チヒロ、武子太郎、花戸祐介はそれぞれののびのびした感じ。高校生、という年齢でもないけれど。

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【芝居】「人魚の夜」青組

2013.1.11 15:00 [CoRich]

青組の新作。20日までアゴラ劇場。105分。

東は砂と岩ばかりで晴天が続くようになっているが、西の方はまだ雨がおおい。 海の人魚を娶っていたので雨が多いのだという伝説がある土地。 台風で行方不明になった女。女の父親と夫は二年ほど同居を続けている。海岸で靴が見つかったため死亡と見なして葬儀をすることになる。父親は元教師で引退していて、自分が小学生だった頃、人魚の噂があった美しく思いを寄せていた女の先生のことを思い出す。夫は雨の日の匂いに妻の姿を感じる。葬儀が間近になって、家を出たきりだった女の兄が戻ってくる。近くに嫁いでいた妹が呼んだのだ。 いくつかの戦争、砂漠化の進行や雨が多い土地、娶られた女たちは人魚だったという不思議な伝承というSF風味の背景に、行方不明の女を諦められないまま、夫と義父という関係のまま同居してる二人の男という実に人間くさい物語。海の近く、台風で何度も多くの命が失われながらもその土地を離れず暮らしている人々がいるという現実。それを伝承と、行方不明の女を待っている人々という物語の厚みを伴って説得力を持たせるというのはちょっと不思議な感じもするけれど、不思議と納得してしまうのです。

行方不明から二年が経ち、靴が見つかるというきっかけで死亡と見なすことを始点として、この「妻」の葬儀・四十九日への流れを舞台の時間軸の幹に据えています。これがあるおかげで、女先生へのほのかな恋心と、まだ幼いながらも異性への意識、潔癖に育った背景となる女癖の悪かった祖父といった義父の物語だったり、家を出て行くに至った長男とその教え子の関係だったり、あるいは行方不明の女と夫の新婚の時の姿など、いくつもの時間軸をややルーズに混ぜ合わせて提示しながらも、あまり混乱せずに、最初はよくわからない登場人物たちの奥行きがどんどん重なり合っていくよう。

酒癖も女癖もわるかった父親のことば「女は釣るか、買うか、拾うものだ」というのはひどく男目線なことば。一歩間違えば女性差別、と声高に言われかねない微妙な価値観。意識的に古くさく、受動的にバイアスをかけて女性を描くのは、作家の芸風ともいえるけれど、人魚という存在を間に挟むことが不思議な緩衝帯になる描き方が面白い。

ワタシが好きなのは回想かどうかすらやや曖昧に描かれる冬子と夫の初めての朝食のシーン。が実にいいのです。おいしいとか云ってよという台詞。こういう経験が無いあたしの憧れかとも思いつつ。(行方不明の)妻を演じた小瀧万梨子、時に風のように通り過ぎるだけ、ときに朝食だったりと存在感を自在にコントロール。かわいらしい造形が意外に珍しい気もします。夫を演じた荒井志郎は優しさを前面にする造形。このまえ拝見した役とのギャップかとおもうけれど、ホームならこういう感じの安心感。大西玲子は物語を回す力、 藤川修二は小学生から初老まで、広すぎるダイナミックレンジが魅力。女教師を演じた渋谷はるかは、物語の要請からか、昭和な映画の口調が実にいいのです。

祖父母のシーンで4人束ねて出てくる女優たち、メインとなるそれぞれの役とはかけ離れた 「女たち」の色っぽさ強調は眼福だし、「女」を(ズベ公として)描いて華やかで楽しい。

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2014.01.08

【芝居】「深川ももんが」前進座Next

2014.1.4 15:00 [CoRich]

前進座の若手公演となる前進座Nextのプロデュース公演ふたつめは太田善也を作演に迎えて。アタシは初見です。休憩15分を含む本編130分ですがカーテンコール後にそのままトークが始まりました(次の予定があったのでアタシは退出しちゃいましたが)。6日まで深川江戸資料館小劇場。初日は振る舞い酒もあったりしました。

深川の長屋。何をやっても半人前なのに妖怪話をでっち上げるのが得意なの職人が姉と暮らしている。いたずらに振り回される一方でろくに働かない男を心配する長屋の面々。ある日、朝鮮服の男が現れる。国の使節団の一人として来日しているが、抜け出してきたのだという。庶民の本当の生活が見たいのでここで暮らしたいという。

働かない男に優しく見守る姉やまわりの人々に、二人に対して想いを寄せる人々という構造に、ある日現れた外国人を巡る騒ぎだったり登場人物たちの成長だったりという物語は泣き笑いが詰め込まれた物語。時代劇にあえて外国人を組み込むこと自体はそう珍しいわけではないのですが、朝鮮人という属性を設定し、どちらの国が優れているかという些細なことの小競り合いから始まる序盤の設定が秀逸。 対立をこの構図にすることで、昨今の二つの国の関係の悪い状況を見るようでもあります。 が、人間なのか才能というものゆえなのか、一緒に暮らし技術を学び、働くようになり、国の理解を深めていく、という流れの成長。才能を見いだされてダメだった男が更正していく様。絵を描けば、頭の中だけにあったものを出現させることができる、というのは(工業デザインなど含めた)アーティストというもののある種の特権ではあるのだけれど、誰にでもそれはあって、育てること、ということの重要さも描かれるのです。

最近きな臭い、日本と韓国。相手の国を憎く思う気持ちがあっても、どちらが上とか下とか張り合うのではなく、それぞれなのだと認め合うことで高め合っていけるのだ、というのはファンタジーに過ぎるという向きもありましょうが、そういうことはどんな国の間でも起こりえるのだということを信じる物語を紡ぐ優しい視線はいいな、と思うのです。

優しい作家の視点は続きます。 江戸時代が無駄のない循環型社会だったという話はよく聴くけれど、それを背景にして、人間の社会にだって、無駄なんてものはないのだ、みんな何かの役に立つ、それは主人公の才能だってそうなのだというのもいい物語。

ヤクザ者と姉のなかなかお互いの想いを云えない雰囲気だったり、新たな恋の予感の感じだったりというスパイスも随所にきいていて、下町の長屋の雰囲気ということの安心感。客席には子供も老人も、という満員でしたが、食い入るように舞台を見つめる子供の姿が印象的でもあるし、こういう観客を持っているという劇団の強みも感じるのです。

差配を演じた柳生啓介の得体の知れなさ奥深さの魅力。ある種の特異点で、何でもありというワイルドカードで物語を端折る役割持ちますが、そんな存在の説得力がすごい。 やくざ者を演じた高橋佑一郎の不器用さは時に可愛らしく。 主人公を演じた藤井偉策は、若くてふてくされる感じと実直さ。 語りを兼ね、姉を演じた黒河内雅子も不器用さと実直さ、通る声の印象。 主人公への恋心を持つ女を演じた平澤愛は現代的な造形が見やすさ。 何よりこの舞台を支えたのは朝鮮通信使を演じた金世一で、頑なさ、軽いコミカルな感じの面白さという振れ幅の広さが印象に残るのです。

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2014.01.06

【芝居】「新年工場見学会2014」五反田団

2014.1.3 19:00 [CoRich]

正月恒例のイベント。今年はかなり早い段階で完売してしまったようです。休憩15分を含む190分。4日までアトリエヘリコプター。

アイドルになるといいながら働かない男と暮らしている女は、男に貸していた金を必要に迫られたので返してほしいと訴えるが男は聞く耳を持たない。宇宙人に出会い返信できるコンパクトを受け取る。地味で目立たなかったが、変身するとあっという間に芸能事務所にスカウトされる「クリーミー☆チカ」(五反田団)
父を亡くした子供の獅子は、古くさい獅子舞なんかじゃなくてモダンなダンスを踊りたいと願う「親子舞」(紅午会)
大切な人を幕府に殺された男はやがて江戸の町で無慈悲に人を斬り続けるようになる。町の平安を維持するために男を倒すように命じられた男たちは「大衆演劇のニセモノ」(ハイバイ)
街角マチコが語る「今年の電磁波」(プーチンズ)
「ポリスキル」

実は前田司郎も黒田大輔も喪中だ、という話から、相続税とこの劇場とか、出演者が結婚するとかな話を挟みながら。早々にチケットが売り切れたり、普段劇場で見かけるのとは微妙に違う客層だったりと何かの変化が起きているように感じます。

「クリーミー〜」はアニメネタを下敷きに、ケーブルテレビに出るような感じの売り出し中アイドルな話。魔法の力を得た女の子とダメんずな男を軸にしながら、男性アイドル事務所社長の男色、蹴落としてでも這い上がること、宇宙人設定なアイドルといったぐあいに、「あまちゃん」では語られなかった裏のアイドル物語を山ほど詰め込んで。
クリスマスな電飾と暗幕を使った変身シーンで手間取るのは何度も繰り返すとテンポを殺ぐようでいかにも勿体ないけれどご愛敬。
魔法少女を演じた内田慈はコスチュームも似合ってしまってやけに可愛らしい。変身前を演じた平田ハルカは割を食った感じはありますが、ダメ男に尽くす感じがいじらしく切ない。ダメ男を演じた黒田大輔は逆ギレする感じなど安定。アイドル事務所謝状を演じた師岡広明は美輪明宏風味だけれど、やけに迫力が楽しい。宇宙人キャラアイドルを演じた木引優子もまたきっちりアイドルな雰囲気。宇宙人設定はどうなんだという冷めた一言の台詞が楽しい。売れているアイドルを演じた菊川朝子は安定感。

紅午会は、親子の獅子舞という設定の面白さがちょっといい。もちろんちゃんと縁起物な獅子舞でもあって。去年 9月の五反田団公演での印象も強烈な西田麻耶のパワフルな色っぽさにちょっとやられてしまうアタシです。

「大衆演劇の〜」、ホンモノを観たことがないのでどの部分を差して大衆演劇風としているかはわからないけれど、勧善懲悪風だったり、キメ顔があったり、役者名のアナウンスがあったりというあたりか。なるほど、つかこうへいの芝居で役者名の紹介が挟まったりするのはこの流れかと思ったり。軸となるのは幕府への恨みを募らせる殺人鬼に対峙する人々の物語。よく考えたらそうとうに濃い面子で、胃もたれしそうだけれど、楽しく観られるのです。
本編とは何の関係もないけれど、大学時代のお笑いコンビだった、という(チャゲ&飛鳥風に)二人の応酬のシーンが圧巻でおもしろくて、役者としての岩井秀人の力を堪能。主人公を演じた用松亮は物語を支えるだけではなくて、このベタベタなフォーマットにしっかり乗る力。
エレキの生演奏に乗せてというのも効奏しています。

プーチンズは完全に恒例だし、わりと聴いたことある曲も多い気がするけれど、ちゃんとネタを挟んでくれるのがうれしい。フラフープを使ったりもいいし、あからさまにテルミンの電磁波をスピリチュアルに結びつけちゃうのもばかばかしく楽しい。

ポリスキルは、演劇人が職務質問を受けると怪しい荷物がみつかって、というおそらくはよくあるシチュエーションに、それに対する演劇人としてのもって行き場の無い怒りが融合してる恒例の一本。でもちゃんと一本の話になってるし、何より女優たちによる女性コーラスが見目麗しくて楽しい。

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2014.01.04

【芝居】「アクアリウム」DULL-COLORED POP

2013.12.30 19:30 [CoRich]

31日まで風姿花伝。そのあと福岡、大阪、仙台。

少し大きな部屋を借りているOLが家主となってシェアハウスをしている。挨拶ぐらいはするが踏み込まずそれぞれの距離を尊重してくらしていたが、新たに入った若者がパーティを提案してほぼはじめて一同に会してのパーティをしているところに、二人の刑事が踏み込んできて殺人事件の犯人の容疑者がいるという。
動揺する面々。それまでは薄い関係だったが、定職に就いている者も少なく、動揺はどんどん広がる。やがて、一人が出頭すると言い出す。今回の事件はやっていないが、いつかやってしまいそうだから逮捕して欲しい、というのだ。

ネタバレかも

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【芝居】「贋作・カグヤヒメの物語」(gaku-GAY-kai2013)フライングステージ

2013.12.30 14:00 [CoRich]

フライングステージが毎年年末に行う企画公演。 30日まで雑遊。ミュージカルとショーの二部構成15分の休憩を挟み180分。

歌人が帝の前で女装する男たちを題材にして物語を披露する。
女装で海女おばあさんが捕ったウニから生まれた女の子に見えた男の子をアキと名付ける。じぇじぇとしか云えないまま育ったアキは仲良しのユイと東京に行ってアイドルになりたいと願うが、まずアキだけが上京する。ユイも後を追うはずだったが、地震にそれを阻まれてしまう。アキは月を見てふさぎ込むようになる。そんなアキに大手・ムーンライトプロダクションが声をかける。男たちはそれを阻もうとするが、大手の力には勝てず。「贋作・カグヤヒメの物語」(85分)

第一部、竹取物語を映画にも気を配る配役をしつつ外枠に。その内側に「あまちゃん」やPerfumeや恋いチュンなどをこれでもかと詰め込んだ一本。女流文学ならぬ女装文学と嘯きながら、あまちゃんはおろか、祖母や母までゲイという無茶ぶりに初恋あたりにはBL要素をで客席を沸かせます。マネージャーにしても 十分にBL要素なわけで、それを散りばめながら、わりと真摯にきっちりあまちゃんの物語をぎゅっと濃縮。たぶん、本編を見てるか見てないかで思い入れも印象も違うでしょうが、相当にオリジナルに入れあげたアタシにとってもこの端折り方ひとつとってもパロディの持つオリジナルに対する敬意が隅々まで行き渡っているようで楽しい。ミュージカルだったりダンスだったりも盛りだくさんで、何かを物語る時間は本当に少ないのだけれども、それでもこの密度が嬉しいし、ダンスならダンスでキッチリとうわけにはいかないけれどもエンタメなショーになってる楽しさ。

第二部は、関根信一をMCに、面白いモノも面白くないモノもあるので出入り自由というアナウンス。
「驚愕!ダイナマイトパワフル歌謡パフォーマンスしょー」(アイハラミホ。)は早替え(というか重ね着を脱いでいきながら)パワフルなダンス。太めだけれどがっつり動きつつ、歌謡曲からパンク、ロック風味だったりとさまざまな音楽をノンストップで楽しい。
「ビアチカコラボ官能小説朗読」 (水月モニカ) は、 『極上のワイン』(夏川まどか)を朗読。色っぽく始まり、ホラーな結末な物語。朗読としては決して出来がいいとはいえませんが、細やかに色っぽい台詞を決して若くはない女性の生声で、という取り合わせの妙。
「女優リーディング」(関根信一)は、江國香織の「デューク」を。愛するものが亡くなって残された自分、それでも生活は続き、愛していたからこそな素敵なファンタジーの世界の堪能。関根信一は女も男もさすがにうまい。
「佐藤達のかみしばい〜僕の話をきいてください〜」(佐藤 達)は8番目にも入る二部構成。名前ネタやら母ちゃんネタ、秋田、数字数え歌、シリコネタやらさまざまに。どぎつくはないのだけれど、このラインナップの中でも埋もれない強度。
「中森夏奈子のスパンコール・チャイナイトvol.6」(中森夏奈子)モノマネは巧いしパワフルなんだけれど、オリジナルにパワーが無い昨今ではやや自虐というか恨み言ばかりが並んでしまう感じなのが惜しいといえば惜しい。
「sayokoなりきりショウ リヴァイタル -ハナツバキ-」(モイラ・ボルデリ)は、山口小夜子な雰囲気のパフォーマンス・ダンス。
「ジオマンのアローンアゲイン」(ジオラマ マンボ ガールズ)はいわゆる「昭和おば歌謡」の三曲に乗せての二人のダンス。二曲目と三曲目は聞き覚えあるけれど、最初の曲がわからず。三曲目にかけたタイトル「アローン・アゲイン」。 MCが更に、酷いと前置きしつつ始まる「今年もアタシ、第二部で何かやろうかねえ」(エスムラルダ)は一曲をアテ振り。下品というよりは原曲のわら人形、釘を刺すという歌詞とで落ち感の楽しさ。後半はテレビの対談番組のコラージュで、子役のインタビューを下品にしまくるという趣向。落としどころが難しいけれど、下品の始動がやや遅くて客席が上がりきるまでに終わっちゃった印象。でも爆笑編。

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