【芝居】「アクアリウム」DULL-COLORED POP
2013.12.30 19:30 [CoRich]
31日まで風姿花伝。そのあと福岡、大阪、仙台。
少し大きな部屋を借りているOLが家主となってシェアハウスをしている。挨拶ぐらいはするが踏み込まずそれぞれの距離を尊重してくらしていたが、新たに入った若者がパーティを提案してほぼはじめて一同に会してのパーティをしているところに、二人の刑事が踏み込んできて殺人事件の犯人の容疑者がいるという。
動揺する面々。それまでは薄い関係だったが、定職に就いている者も少なく、動揺はどんどん広がる。やがて、一人が出頭すると言い出す。今回の事件はやっていないが、いつかやってしまいそうだから逮捕して欲しい、というのだ。
ネタバレかも
「古い芝居」と前置きして始まるのは部長と刑事の高いテンションの喋り、といえば熱海。対比して、変化が少ない水槽(アクアリウム)の中で静かに暮らしていた人々の物語がそれに続きます。パーティというすこしばかりの日常のゆらぎのあとに、冒頭の明らかに芝居の違う二人の乱入。いわゆる「つか芝居」と「静かな演劇」が同じ舞台の上に併存する面白さの前半。
中盤では、犯人捜しの過程でそのアクアリウムの中に浮かび上がる人々。外資OLで実はカネに煩いシェアハウス主とか、定職にはついているがいつクビになってもおかしくないような派遣で、かといってバイトのような気楽さというわけでもない微妙なバランスとか、実はとてもお坊ちゃんな若者とか、いい歳して引きこもりで働く気も中途半端で生活保護を受けているとか、それぞれの「本性」が観客から見えてきます。気楽で仲良しなシェアハウスという外面の中に渦巻く複雑な想いと、主に経済的な理由でそうするざるを得ないということが入り交じるのは、劇中「掃きだめ」と云う言葉に端的に現れます。
その過程で一人が出頭を言いだしてからの終盤。14歳、サカキバラという言葉とともに、連続児童殺害事件(wikipedia)が語られ、自分もそうなってしまうかもしれない、という恐れ。作家自身も同い年だという視点は、時空を超えてサカキバラの言葉をセリフとして発する役を男女取り混ぜたさまざまなゲストによって演じられるということによって、もしかしたら年代縛りだけではなくて誰にでも可能性が、と読むのはちょっと深読みのしすぎか。 アタシが観た回では広田淳一。迫力たっぷりなのだけれど、実際のところすんなりハマりすぎている感もあって、こうなると、この役をこの役者で観たかったな、と思うけれど後の祭りではあります。
シェアハウス主を演じた中林舞はフラットかつ上品な造形かと思うと、形相を変えた金の亡者っぷりのギャップが楽しく、印象的。DJな派遣社員を演じた東谷英人とともにこのアクアリウムなシェアハウスの骨格を前半でつくります。「つか芝居」パートを演じた二人、大原研一と一色洋平はきっちりパワフルに演じきりました。芝居は古いといわれようが、アタシは結構好きだったりします。着ぐるみを着た二人、ワニとトリが象徴するものがアタシには少々判らないのだけれど、陰鬱か高テンションの両極端になりがちなこの芝居の緩急のクッションになっているようで、気持ちがほっこりするのは嬉しい。演じた中村梨那も若林えりも、その潑剌としたパワーが眩しい。水槽にえさを入れる女を演じた百花亜希は、物語の中では位置付けがよく分からないのだけれど、水槽を眺めている姿がこのシェアハウスの物語の外側にいる何ものか、という雰囲気すら。引きこもる女を演じた堀奈津美の影のある表情、若者を演じた中間統彦のやや滑る感じや怯える感じ、出頭を言い出す男を演じた渡邊亮のどこかとらえどころのない感じもそれぞれの印象。
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