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2013.12.30

【芝居】「なんでわたしばっかり」プリンレディ

2013.12.27 19:30 [CoRich]

120分。29日まで遊空間・がざぴぃ。

友人の結婚パーティから酔って帰宅した妹と喧嘩した翌日、妹は居なくなった。姉である自分は輸入雑貨の店を持ちたくてがんばって貯金も勉強もしているのに、社員として勤めていたカフェもあっさりやめてしまって遊んでばかりの妹に腹立たしい。
大学のサークルの友人、勤務先のカフェ店長に話を訊きに行った姉は、目立って派手なことばかりが好きで地味なことには手をつけず、友達が居そうもない話ばかりが出てくる。何より姉自身、自分の彼氏を寝取られてて。

まじめを絵に描いたような姉を一人の女優が演じ、奔放な妹を四人の女優を演じるという趣向。同級生から、同僚から、男から、姉からという四つの視点から三面図よろしく描き出して、妹の姿を立体的に立ち上げます。衣装はほぼ黒一色だけれど、妹役は他の人物も演じることを、髪型に変化をつけて姉妹の二人は首に飾りをつけるということで明確に示して見やすい感じ。それほどタッパのある劇場ではないけれど、キューブとゲートを動かしながらさまざまな場所をスピーディに作り出すのが楽しい。

聖書にあるマリア・マルタをベースにして、せわしく働く姉と何もしなかったけれど主のそばにずっと居たがために好かれた妹。小劇場では珍しいモチーフという気がしますが、なるほど、それを現代の姉妹にあてはめて、しかもプチ整形を絡めてみたりして、きっちり現代劇に。

些細な、二重瞼のプチ整形だけれど、それが地味で引きこもり気味だった妹に自信をもたせて、あっという間に派手好きな女に変わっていく姿を見ていた姉。妹の外でのひどさも聞き取っていくというのは、実際のところ姉は新しい事実を知りたかったのではなくて、自分の彼氏を寝取った妹を貶める補強材料を探し求めているのだと思うのです。 終盤にちょっと挟まれるシーン。派手好きゆえのややズレた感覚ゆえというのはあるけれど、妹だって真剣に生きているけれど、それが報われないという孤独。顔の美しさは手に入れたから男が寄ってくるようになったけれど、心から愛されることはない、という悲しさ。友人たちはおろか、姉にすら「外側」だけを見られているということの絶望。

終幕では行方不明だった妹が友達の家に転がり込んで、スナックで働いているところに姉が訪ねてくるというシーンがいい雰囲気。友達がひとりは居たということも、姉妹の間にわだかまっていたことも雪解けに至るすてきなシーンです。

姉を演じた石井舞はまじめ故に翻弄される感じ、まじめが実に似合う造形。やけに謝る深々としたお辞儀のキレがいいのは、なぐりーずのフリゆえか。姉から見た妹を演じた栗又萌は四人のなかでは異質で、それは(プチ整形前だから)という説得力だけれど、可愛らしい。残りの三人はみな美形で方向がわりと同じ美形なのがもったいない気も。同級生から見た妹を演じた中村真沙海はキリっとした力強さの説得力。同僚から見た妹を演じた池田嘩百哩は派手好きな感じ。男から見た妹を演じた美吉弘恵はロングヘアーで髪型を変えるという作戦が効奏して違う印象の役を重ねます。女友達を演じた江花実里は男装の麗人かという姉の新しい彼氏やら、やけに足を広げて座るスナックの女なんてのが楽しい。

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