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2013.12.06

【芝居】「天才高校〜デスペラード〜」ホチキス

2013.12.1 17:00 [CoRich]

ホチキスの新作はスピード感と馬鹿馬鹿しさで押しまくる100分。4日までサンモールスタジオ。

高校で起こるあらゆる事件を解決する高校刑事が訪れたの]は「天才高校」と呼ばれる高校だった。そこでは全員が学校から何か一つの天才になるように命じられていた。生徒会長(の天才)と番長(の天才)の敵対は一触即発の状態になっている。この危機を救うために現れた刑事は、リリーという謎の生徒たちとともに、この学校の危機を回避すべく全力で戦う。 引き戸が三組、華やかな色使いの舞台。

学園モノに特撮ヒーローのような刑事モノを組み合わせ、抗争や策略のドラマを乗せて、萌えまで詰め込んだ盛りだくさん。キャラ立ちするさまざまな登場人物たちと対決してみたり、助け合ったり。きちんとドラマまで用意されていて飽きることがありません。 情景描写と体力勝負な疾走感が惑星ピスタチオ的であったり、短く切ったシーンを繋ぐアイキャッチや終幕のアレが発砲B-ZIN的であったりと、大の大人がエンタメ的なばかばかしい話を圧倒的な熱量で演じるというのは、今の小劇場の現場ではとても少ないと感じてて、中年以上のおっさんにはなんかわくわくしちゃう荒唐無稽が魅力的に作られるのです。たしかにこういう芝居あんまり無い昨今です。

物語もさることながら、「~の天才」という一芸でキャラ立てさせるのはうまい作戦。ことに、「思わせぶりの天才」や「妹の天才」という一種のマンガの中かとつっこみたくなるステロタイプに可愛らしい女子はあからさまにおっさんホイホイの様相に(前説に出てきた)作家のほくそ笑む顔が目に浮かぶよう。

刑事を演じた山﨑雅志は暑苦しく駆け抜けるヒーロー感満載。 謎の女生徒を演じた小玉久仁子はもちろん圧倒的な安定感があって、しかしこういう荒唐無稽な物語ではそれに輪をかけた凄さ。 生徒会長を演じた林修司は、おそらく初めて拝見しましたが、どこか気の弱い優男風なのが役に合っています。声の印象か雰囲気の印象か、どこか升毅な印象。番長を演じた加藤敦は番長という迫力もさることながら、優しい一面もあるという力を抜いた感じも、番長になる前の回想シーンのギャップも楽しい。ライバルの天才を演じた斎藤陽介も今までに見てきたどれよりものびのびとしてる感もあって、なるほど二枚目なんだなと再認識。
副会長かつ「思わせぶりの天才」を演じた斎藤美和子にしても、「妹の天才」を演じた木内文香にしても、めいっぱいの女子力キャラも、(芝居の中の)普段の口調とのギャップも楽しくて、しかもドキドキしてしまいます。これはああそうだ、NHKのSHIBUYA-DEEP Aで女優がなんか囁いてくれる感じだ(いつのまにか番組終わってた..)。

ネタバレかも

さまざまなサプライズをきちんとまぶしておくのも忘れません。引き戸だった舞台奥の三つが、終盤に至りくるりと回転扉になってみるびっくり。終盤に向けてスピード感が増していくのに合わせるのは理にかなっています。あるいはラスボス(松本理史)を倒してからの巨大ロボット。もちろんサンモールスタジオですから巨大ロボットは無理だけど、その10本の指、だけ、上の方に実体、という潔さはむしろかっこよく、しかも40過ぎのおっさんには楽しい。

ラスボスが云う、「理不尽な出来事がこれから先、生徒たちを待っている」というのを今の私たちに重ねるのは深読みしすぎとは思いますが、いろいろ世知辛い昨今、なんか胸に沁みるのです。

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