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2013.12.09

【芝居】「ウルトラマリンブルー・クリスマス」キャラメルボックス

2013.12.7 13:00 [CoRich]

キャラメルボックスの新作クリスマスツアーは、映画「素晴らしき哉人生!」を翻案。一部ダブルキャストで二通りのエンディングと謳われています。アタシが観た7日昼はシリウスストーリーの125分。神戸・新潟のあと、サンシャイン劇場では25日まで。

橋の上から身を投げようとした男より早く天使が川に落ちる。それを助けようとして命を落とす男。ほかの天使たちもやってきて、男を地上に戻すというが、男はもう生きていたくないと拒む。
地方の小さな工務店の長男として生まれ野球に夢中だった男がロケット技師になりたい、そのために東京の大学に行きたいと願った男。喫茶店のバイトで学費を貯め、二浪してまで大学に合格し、東京に旅立つ直前に父親が倒れる。弟が経営を学ぶ間と思って地元に残り会社を支えるが、弟は大学で大会社の社長の娘と恋仲になり結婚してしまう。それでも父親の意志を継ぎ、地元の人々のためにいつもかつかつの値段しかつけずに、会社の経営状態は安定しないし、災害が起きれば私財をつぎ込んでも人々を助けようとする。人々の信頼を勝ち取りながらも、会社は大きくならず、忙しいばかりでやっと結婚した妻を旅行に連れていっていない。
ある日、客から受け取った大金を銀行の返済に入金しにいくときに、その金が無くなってしまう。

映画は未見です。映画では男の人生を描いた末に登場する天使のようですが、今作では冒頭に「二級天使」を登場させてその後の人生を早送りで描きます。全体の枠組みが先に見える今作のやり方の方が、舞台には合っている感じがします。 映画ではアメリカ・大恐慌の時代を背景にしていますが、今作はガガーリン、アポロ11、万博という時代を背景に、高度経済成長だったり、個人というよりは小さな会社を背負う男というのも、たぶん、映画とはちょっと違う味付けで。

映画に原作をとりながらも、小さな挫折の積み重ねの人生は、ときおり成井豊が描く題材の一つ。それよりも悪い人生があるということに思いを馳せて気持ちを前向きに持とう、というのはオジサンたちに向けたクリスマスの奇跡。天使が出てきて奇跡が起こるわけですから、ファンタジーなのは間違いないし、 解決があまりに急速なハッピーエンドに向かうことに戸惑う気持ちがなくはないのですが、そういうことがあってもいいよね、という天使のウインクを感じて観るというのが正しい見方なのだと思うのです。 タイトルは知っていても、名作と謳われる映画を観てみようかな、と思わせるタッチポイントの広がりは原作モノの良さ。年末年始も近いし、どこかで探してみますか。

翻弄される男を演じた阿部丈二は明るく前向きから落ち込んださままでの振れ幅がいままでになく広く。妻を演じた実川貴美子は本当に可憐で美しくしかし力強い造型で印象に。不動産会社の秘書を演じた林貴子はキャピキャピの女子高生から仕事に苛つくキャリアウーマン、こういう振れ幅をキャラメルボックスで女優が演じることは少ないのでこれも印象的。老いの領域まで踏み込んだ役を演じたベテラン組、西川浩幸、坂口理恵、前田綾はしっかりと舞台を支えます。

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