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2013.12.16

【芝居】「Life Shot」さるしげろっく

2013.12.12 19:00 [CoRich]

東京の劇団の松本ツアー。東京のあと、15日まで信濃ギャラリー。

父親のギャラリーに集う息子と同級生たち。卒業式の日。じゃあ呑むか、といって盛り上がって買い出しに行ったり、第二ボタンを貰いに女子が来たりする。
成人式の日。それぞれの道。地方の大学、演劇、ギャラリーを継いでたり。
仲間の一人の結婚式の前日、余興の相談。
同窓会を抜け出してきたあのときの仲間。離婚を経験した仲間に恋人が出来ていて、身体を心配してるが、その直後に亡くなってしまう。
演劇を続けるために金を無心する男。小説を諦めた男はおもしろくない。
ギャラリー最後の日。最初にして最後の写真展。卒業式から50年経っている。そこに、あの子の娘が現れる。

東京・松本ともギャラリーと名の付いた演劇スペースでの公演。フラットな場所を囲むように客席というのもおそらく同じような感じでしょう。写真の画廊という場所に集う人々の高校卒業からの50年を描きます。恋心、親友、久しぶりに会ったりという、ゆるやかに、しかしつながりあう人々が紡ぐ物語。

写真が上手かった父親から引き継いだ画廊だけれど、自分ではほとんど写真を撮らずに過ごしてきた日々。オープニングでおそらくは父親が嬉しい気持ちで掲げる写真は妹の足の裏を撮った写真、明確には語られないけれど、これはおそらく兄が初めて撮った写真なのでしょう。写真は好きじゃない、とはいいながらも卒業式とか独身最後とか、節目の写真を撮るということは普通のこと。写ルンですとか、写メとか、コンパクトデジカメの気楽な写真とか。50年も経った初めての写真展、撮りためたそれぞれの写真を並べることで、早回しでよみがえる記憶はどこまでも美しくなるのです。

男子高校生の腐れ縁、馬鹿話も、恋バナっぽいことも、醸されてきたことの時間軸の長さ。あからさまにコスプレのように子供から老人に至るまできちんとしたダイナミックレンジ。しっかりとした役者たちによる物語は時に少々イタい感じにもなるけれど、それに笑いを依存することなく、どこまでも真面目にこの50年を描こうという姿勢。若い頃よりも年齢を重ねてからのシーンに向かってどんどんコミカルを減らすというのはこの時間軸の醸し出した重みを感じさせるつくり。

正直に言えば、物語のバランスとしてやけに長いところ、短いところに違和感。これがリズムになりきれない感じが少しばかり残るのはやや残念。たとえばゲストのシーンが大爆笑になるのだったらこれが真ん中あたりに欲しいな、という気もしますが、ゲスト次第とも思うので難しいところ。

ギャラリーの主を演じた賢茂エイジはやや籠もり気味な造形だけれど親友を思うきもちの圧倒的な強さ。第二ボタンを貰われて、そのひとつの想いでをずっとずっと大事にするナイーブさもきちんと。友人を演じた天晴一之丞は声が大きくて大人という落ち着きと存在感が圧巻。それゆえに亡くしてしまった時の喪失感の大きさに説得力。もう一人の友人を演じた竹中孝明は小説を諦め、きちんと働くというクリエイターを離れた立場をしっかり。さらに一人の友人を演じた永野和宏はエンゲキに進んだ人生という説得力な声と熱さ。ずっと一緒にいる同級生を演じた飛田さやかはかわいらしく愛される存在という説得力。第二ボタンを貰いアメリカに留学した同級生を演じた柳里実のあけっぴろげな造形が楽しい。妹を演じた斎藤なぎはかわいらしく飛び跳ねる感じから、空間デザイナーという大人な卒業までをしっかり、たばこをやめさせたかった恋人を演じた舞華はまっすぐな気持ちをしっかり。 日替わりゲストを演じた中村まゆみはきっちりコミカルに。

東京でやっているフルサイズの公演を松本に自主公演として持ってくる劇団はほとんどありません。信州大学の劇団・山脈(やまなみ)出身ということから企画されている公演のようですが、東京の公演にはなかなかコマ不足で伺えなくても、平日の松本公演ならほいほいと通ってしまうあたしなのです(笑)。

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