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2013.12.16

【芝居】「ショッキングなほど煮えたぎれ美しく」KAKUTA

2013.12.14 14:00 [CoRich]

KAKUTAの新作、青春群像劇と銘打つ120分。15日まで、すみだパークスタジオ。

稼いでいる父親のもと、父親の金で遊び回り、何不自由ない生活を送っていた高校生。ある日帰宅すると、父親が首をつっていた。命をとりとめたものの、汚職の疑惑もあり周囲は騒がしくなり、預けられた祖父は突然亡くなってしまう。夏休みということもあり、オジさんの元に預けられる。雀荘を営むオジさんはその高校生を近所のサバ加工工場で働かせる。

「渾身のこじらせ力」と評されるらしいバンド・フリサトの音楽を挟みながら、どこか冷めた高校生、あきらめた中年の両方を核に、熱い気持ちという「ロック」な人々を、コミカルに描きます。

地方都市の高校生、東京への距離感を持ちながらも、さしるバイトがあるわけでもなく、サバ加工工場での人々。 金に不自由しなかった高校生、地味でキツいバイトで得た初めての金。それをことさらに喜んだりはしないけれど、じゃあ、いっちょ打ち上げますかという気持ち、高校生が飲み屋、しかもスナックに迷い込んでしまう感じの居心地の悪さ、高校生が飲酒というのを厳しく云う向きもありましょうが、ダメな他人の大人たちのダメな姿を見るという「社会勉強」というのは確かに必要な過程で、それはコミュニティのひとつの姿。 竜史が演じる高校生。どこまでもちゃんと高校生、スレた感じも、それが田舎で洗われたようにエネルギーがめいっぱいという感じの振れ幅もいいのです。

あるいは、地元の「ダメ大人」そのままに、何もかもあきらめて無気力な感じの大人、それが高校生と暮らしたからというわけじゃないのだろうけれど、とりあえずは「働く」という一歩の重さ。私はどちらかというと、こちらの感覚のほうに寄り添われる気持ちがします。 演じた成清正紀は、静かにフラットな諦観の雰囲気がいいし、終盤のちょっと暴れる感じは氷が溶けるようでかっこいい。それに思いを寄せる女を演じた高山奈央子はすらりと美しく、パンツ見せたって下品にならず、威厳すら。でも、その想いのストレートさが切ない。スナックのマスターを演じた若狭勝也はフラットにこの土地の大人の基準を保つポジションを。借金を抱える男を演じた実近順次の、人がいいから謝金を抱えてしまうという人間の造形が実に良くて。

高校生たちの友達という感覚だったり、親や親戚や自分についての不満や将来の不安を抱えた感じ、あるいは実らない恋心だったりと青春群像劇まっさかりの物語が微笑ましく楽しい。片思い、おもいがけない方向からの想いに驚いたりするきもち。無邪気に親友と思うきもちもまた青春。なんか本当にまぶしい。 仁藤萌乃はなるほど、歌を一曲というポジション。恋の行方だってきっちり描かれているサイドストーリーを背負うし、歌ナシできっちり勝負したって大丈夫なのにむしろ勿体ない気持ちもあるけれど、目当てな方もいるだろうから難しいところ。鈴木朝代の丸顔な感じの可愛らしさ。想いはあるけれど伝えられない女子っぽさの造形もいいのです。

あるいは見合いで結婚が決まっているのに、どうにもそういう気持ちになれない女。ここからあきらかに生活レベルがあがるということを嬉しく想っている兄の酔っぱらいのダメさ加減。なんか自分を見るよう(泣)。演じた坪内悟の優しい雰囲気がいい。妹を演じた異儀田夏葉、なかなか普段の役では見られないような、いわゆる婚約者然としたファッションがみな可愛らしくて、なんか娘を観てるような気持ちになってしまう妙。

サバ加工工場の主任を演じた桑原裕子は、出落ちかと思わせる、アイパッチに青づくめ。あからさまにコミカルでもあるけれど、意味深でもあったりしてカッコいい。この無茶な場所を牽引する力を持ちつつ、まあ、オイシい役ではあるけれど。社員を演じた野澤爽子はどこまでも真面目がよくあっています。

ミュージシャンがきっちり歌いつつ、きちんとした演劇というフォーマットは、芝居ばかりにかまけていてライブからは遠くなっちゃってるアタシにはまた楽しい空間。もっとも、これはこれで難しいところで、歌を何曲もきっちり入れて、芝居もちゃんとあってとなるとどうしても時間は長くなりがちです。曲の難しいところは、物語の幕間としての曲の雰囲気は感じ取れても、歌詞の方は(歳のせいか)初めて聴くとなかなか聞き取れず、物語との繋がりを楽しみづらいところ。CD販売買っておけば良かったなとおもいつつも、当日パンフに歌詞が入ってたら嬉しいな、と思ってしまうけれどこれは違うかなぁ。まだ判断に迷います。

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