【芝居】「1万円の使いみち」monophonic orchestra
2013.12.15 18:00 [CoRich]
須貝英のユニット、monophonic orchestraの新作。110分。25日まで新宿眼科画廊。
映画学校の卒業制作として、一万円を使いきって貰うことをドキュメンタリーとして描こうと考えた男。街で声をかけたアルバイトの男にその一万円を託す。久しぶりの友人たちに会ってみようと出かける。ほのかに想いを寄せる女、金持ちで金を借りっぱなしの男、先輩のバイト先。ふとしたきっかけで、卒業制作の一万円の入手の顛末を聞いた男は、今やらなければいけないことを思い出す。
ロードムービー風に吉祥寺・渋谷・横浜を結ぶ物語。亡くなってしまった恋人への想い、それを見守る友人、あるいはほのかな恋心のまま長い時間が過ぎすでに恋人ができてしまっているという女への想い。長くつきあっている恋人に一区切りをつけようという気持ちのすれ違いなど、さまざまなカップルたちの物語を描きます。
学校に忘れ物を取りに戻ったあたり、亡くなった恋人に囚われている男と、それを見守る女のシーンが好きです。よくある王道風といえばそうだけれど、それが謎めいた一万円に表出して物語の骨格になるということにワクワクとします。
あるいは、長くつきあっている恋人への別れを告げようと決心する女、それを一万円ムービーに感化されたか、同様にデートで一万円使いきったらというゲームに仕立てる感じ。ライトに過ぎるのではないかという気がしないでもありませんが、別れを切り出すハードルってのはキツいわけで、その後押しをゲームめいたことに託してみるという気持ちもおもしろい。
ロードムービーという軸に対して、それぞれが一万円の使い道を考えるという骨格は面白いけれど、正直に云えば、(すくなくともアタシの観た時点では)たとえばボンボンと役者の卵が物語としては収束しないのが惜しい感じは残ります。
ロードムービーな二人を演じた大石憲と篠崎大悟は旅をしてる感じがたのしいし、それぞれの裏側に見えてくる思いが両輪になって走っているグルーブ感がいい。別れたい女を演じた伊佐千明は決心してでもいいあぐねて、きちんと向き合って切り出す表情がカッコイイ。方々でバイトする女を演じた小笠原結はそれぞれの場所でそれぞれかみ合わない感じが可愛らしく、コメディのリズムを作ります。見守る女を演じた津留崎夏子、思い続ける造形がすき。役者の卵を演じた荒川佳もボンボンを演じた櫻井竜もなんか若いゆえにかみあわない感じも含めて微笑ましく。別れたくない男を演じた加藤岳史は人の良さが前面にでるよう、実直でまっすぐ。
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