【芝居】「イタコ探偵工藤よしこの事件簿」渡辺源四郎商店
2013.11.16 15:00 [CoRich]
ナベゲンの新作。青森のあと、17日までアゴラ劇場。
民生委員の工藤美子は担当地区の家を訪ねる。癖のある男が一人住んでいる。この家に居るはずの母親は湯治に行っていると言い張る。テレビドラマでは「イタコ探偵工藤よしこの事件簿」を再放送している。
この家にはもうひとり、若い女が住んでいる。
青森、フォークロアなイタコといえば、「もしイタ」ですが、新たなイタコの物語。サスペンステレビドラマと、現実世界での問題点を並行して描きます。現実の世界では年金の不正受給や失踪、あるいは個人情報への過剰な意識などを語りつつ。今の日本で起きている様々を織り込みつつ、フォークロアを混ぜているのがいいのです。 正直にいえば、わりと速い段階で不正受給という底は判ってしまいます。一筋縄ではいかない作家はもう少しネタを仕込みます。 つまり、拉致してほぼ監禁や、強制わいせつとか。男女が一つ屋根の下にずっと住んでいると共棲するようになる、ということ、男女の仲というか。それでも逃げない女というのが絶妙な距離感。
あるいは、死を認めるかどうかについて。死体が無ければ死んでない、ということはつまり、その人の死を受け入れられないということ。死体が見付かっていない娘のことを死んだと受け入れて(諦めて)その先の一歩を踏み出せるか、死体をないことにして、死を受け入れられないということのコントラスト。
ドラマの中のイタコ探偵がドラマというメタの境を超えて、民生委員の亡くなった子供の降霊というのがひとひねり。それをオカルトに扱わず、「イタコっていうのは、だいたい三つのことしか云わないんですね、 気をつけろ、ごめんなさい、ありがとう。」というのを置くのが理性的でいいのです。それはそれとしても、そういうことを降ろされた霊の言葉として聴きたい、という気持ちをくみ取るのも優しいのです。
アタシがみた16日は山上由美子の出演がなく、かわりに元々二役やっている三上晴佳が更に二役。オーバーアクションのコミカルな感じがショーケースのようで楽しい。イタコ探偵を演じた奥崎愛野は可愛らしく、しかし鬼気迫るような瞬間も見えたり(それゆえか16日昼は数珠がはじけ飛んだりも。こういうハプニングも面白い)。民生委員を演じた工藤由佳子はマドンナにみえる瞬間が美しい。駄目な感じのネタ(NHK, KKK, YKKとか)も合わせて楽しい。
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