【芝居】「ソニックルーレット」サマカト
2013.11.15 19:30 [CoRich]
三年ぶりとなるサマカトの本公演は新作。お笑いコンビとその周辺の人々の80分。17日まで雑遊。
行き詰まり感が否めないお笑いコンビ。コンテストを前にして先輩にだめ出しをされてる。ツッコミとボケが曖昧になってたり。なにが枠組みかわからなくなっている。相方が出られなくなっていて低迷する先輩芸人、ツッコミが切れるけれど実は売れてない先輩芸人。事務所にはバイトの女の子がはいってきて、あからさまにヤクザ風情の男と仲よさげだったりもする。
ルーレットが何度も回転して、それが止まった瞬間という感じで、ちいさなシーンを山ほど積み重ねていきます。最初のコントはあからまさに長いし、大爆笑というわけでもない(芽が出ないコンビ感の説得力)けれど、それ意外はことごとく短い。日常に遍在するちいさな会話をボケ・ツッコミの会話として拾い出します。意識しているかしてないかに関わらず、会話がズレていて、そこに気づいて指摘することがボケ・ツッコミとするならば、雑多ないろいろなパターンをこれでもか、と詰め込んでいて楽しい。それを職業とするから正面から向き合うしかないのだけれど、その妻だったり恋人だったり兄弟だったりという人々は巻き込まれているに過ぎないわけで、お笑い、というものに対しての一般の人々との想いのギャップが物語に奥行きを作ります。
煮え切らない彼氏ことを振り向かせようとする恋人のシーンが好きです。演じた中野架奈、彼と会話をしたいから面白いと思うことをさまざまするのが、いじらしくて、本当に可愛らしく女子っぽさが印象に残ります。
あるいは芸人の夫を持つ妻の会話。妻を演じた松木美路子は少しズレている(天然ともいう)造型が絶品。笑いというよりはペーソスすら感じさせるのです。事務所のライブを支えてるのを自負する夫に対して、「あなたが行ってもどうにもなってないじゃない」と切り込むのはまさにツッコミなのだけれど、これもまた、笑いに対しての冷静と情熱の間。
細々としたネタが好きです。序盤のやや長い(笑)コントはボケやツッコミがずれてるとどんな悲劇が起こるかという実験場のよう。あるいは和風ハンバーグの和風を忘れたのでお詫びとして和風ハンバーグが出てくるとか。めぞん一刻をダブって持っちゃってるからどうしたらいいかという相談に、好きな人にあげたらいいじゃんというアイディアにさらに好きな人はもう持ってるからね、という積み重ね。 先輩芸人を演じた澤唯は、圧巻のツッコミ力が冴えます。もう一生分やったんじゃないかというキレが気持ちいい。もう独りの先輩芸人を演じた力武修一は、声や見た目の雰囲気が芸人っぽく見えて場所の説得力。やくざを演じた江崎穣は物静かに語り続ける説得力、いつハリケーンディスコのように大騒ぎになるのかドキドキしちゃったのはアタシの勝手な想い(笑)。ヤクザと仲良くなるアルバイトを演じた徳元直子は、天真爛漫を地で行くような笑顔がいい役者で、ヤクザに対して何も物怖じしないというキャラクタに説得力。終幕のワンシーンもいい。
コンビを演じた内山清人と櫻井拓也は売れそうで売れないという悶々とした気持ち、だけれど離れるのは怖いという絶妙な距離感もいい味わいなのです。
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